自立して通訳を使うか、頼り切って脱線するか

  海外商談 尾身浩 SPECIAL
尾身浩 SPECIAL

海外商談コンサルティング

株式会社源盛グローバル 代表取締役 尾身浩

海外商談に必要な専門スキルとノウハウを伝授する実践派コンサルタント。商社などに頼らずに、独立独歩で海外企業と取引したいと考える中小メーカー企業や個人事業主から高い評価。語学がほとんどダメでもOK 。商談の押さえどころと外国語のココだけ! を押さえることで、 小さな企業でも世界に売り、世界から買い付けられるようになる…と、注目のコンサルタント。


伝言ゲームというのがあります。あるメッセージを何人かの人達を介して伝達していき、元々のメッセージと最後に伝わった内容がどこまで一致するか、というものです。これが楽しめるゲームとして成立するのは、メッセージというものが、まず正確には伝わらないものだから、ということ。

人を介することで、本来のメッセージがどこかでネジ曲がるわけです。日本人同士が母国語の日本語で伝えているにもかかわらず曲解したり、言葉が抜け落ちたり、聞き間違いをしたり。

これを海外との商談の場で日本人通訳を介し、自分のメッセージを伝えることになぞらえてみます。日本語でのメッセージを伝え、通訳に理解してもらう。通訳はそれを英語に変換し、更には正しく発音し伝える。感情を入れるのか表情乏しく伝えるのかも最終的にメッセージの印象として影響してくることでしょう。

さて、商談中にこうして伝えられた多くのメッセージはどのように相手の耳に届いたのでしょうか。伝言ゲームでは最後どちらに転んでも楽しめます。しかしビジネスではそうは行きません。

訓練を受けたプロの通訳レベルであればいざ知らず、一般的なレベルにおいてこれをやれば自分の本心はまず伝わらないと思ってかかった方がいいでしょう。そういう前提で臨むことです。

通訳を介しながらの相手との関係の構築は難しく、またその通訳に業界の専門知識が無ければ商談自体も首尾よく行かないものです。

夏木マリさんという女優さんがいます。英語をお話にならかった彼女は海外でのお仕事の際に専属の通訳を雇っていたそうです。そんな彼女がある時、通訳の英語を聞いていて、“なんか違うんだよなあ~”と思われたのだとか。

そしてやはり自分自身の言葉で伝えなければメッセージは伝わらないのだと気づき、一念発起して英語に取り組まれたそうです。ご自分のお仕事の範疇はご自分で伝える。素晴らしいことです。

間違っては元も子もないから余計なことをせず、通訳を使う。こうした考えもあります。しかし私のこれまでの経験からも、基本的に外国の商談の場に通訳を連れてくる海外の担当者はほとんどいません。商談には自分自身の言葉で臨んできます。たとえ英語力が低くとも、です。夏木マリさんの例もそうですが、それが重要だということを認識するからでしょう。それが世界の基本なのです。

ちなみに英語力の低さが商談の内容に誤解や影響を与え、問題になったことはほぼありません。あえて問題といえば商談中に何度も聞き返す必要があったり、単語がさっと出てこなくて少しばかりの時間を取るくらいのものです。

しかしこうしたことはかえって、じっくりと確認しながら商談を煮詰めていくことにもつながるので、逆にミスが減るのです。だからそれを大きな問題として捉える必要はないわけです。

ただ、ご年配の経営者になると英語をお話にならない方がたまにいらっしゃいます。そんな時は商談に通訳をつけて頂くわけですが、ここに知るべき重要なことがあります。

昔私があるイタリアのファミリー企業を初めて訪問した際、同社の社長がそうでした。私との商談では社員にイタリア語と英語の通訳をさせたのです。

しかしこの社長、通訳に頼り切ることはありませんでした。担当者の通訳に、“そうだ、そうだ、”と無言で頷く場面もあれば、時々割って入っては両手を広げ、「違う、違う、いいか、よく聞くんだ!」というようなことをイタリア語で言っては言い直しを命じたのです。

つまり社員の通訳に依存するのではなく、自分が通訳を使える状態になっているのです。いわゆる英語の素養を身に付けているので、商談を自分がコントロールし、微妙なズレを読み取って修正しているわけです。

自分の商談であることを意識した、真剣な態度ではありませんか。

そうなると、話を聞く私のほうも変わります。自然と前のめりになり、通訳からではなく、この社長自身のニュアンスを理解しようとします。自立した体制で通訳を使いこなすことが、そんな副次的な効果も生むわけです。

議題によっては通訳を使わざるを得ない場面もあることでしょう。ただその時には自分が通訳を使うのだ、という意識と準備が重要です。

本末転倒な話ですが、通訳の暴走に気づけないと、通訳が変に主役っぽくなってしまうことがあります。すると小さな会社の商談・海外ビジネスは微妙に逸脱していき、予想外の問題に発展していく可能性も秘めているのです。

自分の商談を自分でコントロールするためにも、自らの商談力を整備しておく必要性がここにあります。

 


世界に売る、世界から買う! 小さな会社の商談術
尾身浩

海外商談コンサルティング

株式会社源盛グローバル代表取締役

尾身浩

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