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海外の不安:実態から安心を得るか、机上の論理で怯えるか

  海外商談 尾身浩 SPECIAL
尾身浩 SPECIAL

海外商談コンサルタント

株式会社源盛グローバル 代表取締役 尾身浩

海外商談に必要な専門スキルとノウハウを伝授する実践派コンサルタント。商社などに頼らずに、独立独歩で海外企業と取引したいと考える中小メーカー企業や個人事業主から高い評価。語学がほとんどダメでもOK 。商談の押さえどころと外国語のココだけ! を押さえることで、 小さな企業でも世界に売り、世界から買い付けられるようになる…と、注目のコンサルタント。

外からの様々な引き合い、問い合わせが入っても、相手がどのような会社なのか、人物なのかよくわからないことも多々あります。今日はそもそもどうすれば海外の知らない会社とより安心して取引できるのか、ということを考えます。

インターネットを利用して不特定多数の顧客から受注、クレジットカード等を利用して決済し、国際郵便で送って終わり、のような形態は別として、よく分からない会社や人物と安心して取引することは出来ません。海外取引に限ったことではありませんが、これが貿易となれば相手は海の向こうですから、なおさら慎重にならざるを得ないわけです。

輸出先として物を売る場合、通常最も気になることの筆頭と言えばやはり相手がきちんとお金を払ってくれるのか、ということでしょう。輸入先であれば、お金を払ったところでまともな商品がきちんと出てくるのか、ということが懸案事項になります。

昔私が勤めていたある会社で、試験的にある商品をドラム入りでインドから輸入したことがありました。1回目まともな商品。2回目もまともな商品。これは今後も付き合って行けるなと思いきや、3回目はドラムの半分に砂が詰まっていました。ちなみにこの会社は単なるブローカーのようでした。

約束と違う商品が入っていたり、汚れていたり、数が足りなかったり、指示と異なる梱包だったり。そして代金が焦げ付いたり。長年やっていればこうしたことは枚挙にいとまがありません。

こうした不安材料をどのように解消したらいいでしょうか。

完全解消するには輸出なら代金を全額現金で前払いしてもらうことです。 輸入なら全額を現金で後払いにしてもらう。完璧に不安を解消するにはこれしかありません。

しかしながら実際は相手側にもリスクがありますから、自分がよほど強いポジションにいない限り、そのような条件での取引は難しい。貿易における決済条件は多々ありますが、限りなくリスクを減らす方法はあっても、実はどれも100%安全を保証するものではあり得ません。

そこで更に安全を強化し、信用・安心感を高めようと思ったらどうするか。

それは現地での人を含めた総合的な実態を見ることにつきます。

極端な話、会社は存在するのか、工場は本当にあるのか、どんな人が経営していて、担当者はどのような人物なのか。こうしたことをメールや電話でのコミュニケーションで把握することはできません。

無料のメールアドレスを使っていたり、社名等の詳細無しの個人名でやり取りしている場合には会社の体をなしていない場合もあります。またメーカーだと言っておきながら実際は明日どこにいるか知れない身軽なブローカーだったりするケースもあります。そんな不安を抱えながら相手に多額の現金の一部でも先払いをするなど、大変勇気がいることです。

基本的には現地に足を運ぶだけの価値がその商売にあるならば、一度訪問してみることで霧を晴らすことが出来ます。実際に会社を訪問したり設備や倉庫を見せてもらったり、経営者や従業員を見れば実際にどんな雰囲気なのかが分かります。

弊社の貿易部門では韓国から現在ある高価な材料の仕入れをしています。この会社は情報源を通じてその存在を5年位前に知りました。結論として良い会社らしい、ということだったので、私はすぐさま一人韓国を訪問し、実態を見に行ったのです。

現場ではある程度確証がもてたので、試験発注の話をその場でしました。その後その商品が出荷される前に再度訪問しました。社長とも食事を共にし、色々な話をするとやがて同じ業界ならあるはずの“共通項”などが出てきて、これまでその会社や個人が何をやってきたか、歴史が感じられるものです。

更に本格的な発注を手土産にもう一度訪問。するとそこまでは話が出なかった外注先の会社の設備なども、今日は全部見せるといって丸一日社長が時間を割いてくれました。その会社のビジネスシステムの実態を見せてくれたのですが、想像以上に良質の設備を組み込んでいたことに感心、そして安心したものです。

「実際の商売の前に2度も3度も来たのはあなたが初めてですよ」、とどこか嬉しそうにしながら、お世辞にも上手とは言えない英語を一生懸命駆使して案内をしてくれました。

こうして人物にも信頼がおけそうだ、とお互いに感じることができるわけです。実はその後何年かしてその会社から輸入した製品にある問題が発生しました。しかし私は“全く”慌てることはありませんでした。その問題に対処できる実態(人や設備)を見ているし、なにより人間関係が出来ていたからです。そしてその通り、相手もきちんと迅速に100%対処してくれたのです。

机上の貿易のやり方、学習も不要ではありません。基礎的知識がなければ価格や条件の一つも出せないからです。しかし、実際には人と人が直接交流し、関係構築することでその後の信用度、安心度も全く変わってきます。それが変わると、その後の条件を決める材料にもなったりします。そして今後付き合う上で、何より相手から引き出せる物が異なってきますし、それが机上の空論ではなし得ない更なる安心感につながります。

何年たっても使うことのない貿易用語や決済条件をせっせと覚えて身構えるよりも、1度訪問して相手の実態を知り、生身の人間に会って、自分の言葉で商談・コミュニケーションしてみてください。

それに勝るものは無い、と実感するはずです。

 

世界に売る、世界から買う! 小さな会社の商談術
尾身浩

海外商談コンサルタント

株式会社源盛グローバル代表取締役

尾身浩

執筆者のWebサイトはこちら http://gglcg.com/

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