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第33話 社長の仕事は”会社にとっての善”を社員に説き続けること。

  プラチナ社員づくり 園田信二 SPECIAL
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社員が”社長ならどうするだろう?”と自問自答し、機動的に判断・行動できるためには、”会社にとって何が善いことなのか”という”信条”が、社員の腹に落とし込まれていることが前提になります。

例えばトヨタでは”前工程は神様。後工程はお客様。”という”信条”が社員に浸透しています。たとえ同じ社内であっても、後工程(を担う社員、職場、企業)をお客様と思って、自分の仕事に対する責任を果たし、最高の品質だけを後工程に送り出す業務姿勢が、”会社にとって善いこと”なのです。

一見、当然のように思える”信条”ですが、社員間、職場間の対立が起こりやすい社内において、常日頃から”前工程は神様。後工程はお客様。”と肝に銘じて、”今、ここで求められる自分の責任を全うすること”は、実はとても難しいものです。

かく言う私も、”神様、お客様”ならぬ、「前工程は”能無し”。後工程は”厄介者”。」という、およそトヨタとは正反対の”信条”がはびこっている職場で、マネジメントの仕事を任された経験があります。

実は、この会社には労働組合があり、その当時、当該労組がストライキを背景に、交渉を進めることが少なくありませんでした。ひとたびストが設定されると、当該労組に所属しない社員が、徹夜で生産体制を組み替え、お客様へお詫びの連絡をしなければなりませんでした。

徹夜を強いられ、お客様からの罵声を浴び続ける社員の間で、”なぜ俺たちが、組合に所属する社員と、不甲斐ない経営者の尻拭いをしなければならないんだ!”という”怒りの声”が広がるのも時間の問題でした。一部の労使不信が、全社的な相互不信へと波紋を広げつつあったのです。

その結果、社員同士のコミュニケーションが無くなり、無意識の内に相互に敵対意識が植え付けられ、仕事の責任を全うせず、業務ミスが多発する(=能無しと言われる所以)という悪循環に陥っていったのです。

私の直接の部下は、この”理不尽な尻拭いに怒り冷めやらぬ、ミスを多発する社員たち”で、前工程を担当していました。組合に所属する社員たちは、後工程を担当していました。この社員たちが、”能無し”の前工程と、”厄介者”の後工程です。

私は、労使紛争が基で信頼関係を損なった職場に、業務品質と働き甲斐を取り戻すために、部下に対して、”自分の仕事に対する責任を果たして欲しい。”というメッセージを発信する必要性に迫られました。その時に出会った言葉が、「前工程は神様。後工程はお客様。」というトヨタの”信条”だったのです。

私は来る日も来る日も、「皆にとっては、後工程は”厄介者の社員”かもしれない。しかし、皆が作り上げたサービスを、最後にお客様にお届けするのは、後工程を担う社員以外の誰でもない。だからまず私たちから”後工程はお客様”という気持ちで仕事に臨もう。」と、様々な機会をとらえて説得し続けました。

「後工程の社員は、”前工程は神様”なんて、ちっとも思ってくれないだろう。でも、想いは必ず伝わる。なぜなら労使紛争ひとつとっても、職場でのちょっとした疎外感や不信感が積み重なって起こるものなのだから。”後工程はお客様”という想いで、私たちが率先して、その疎外感や相互不信を払拭していこう!」・・・と。

それから3年が経ったある日のことです。現場で想定外の事態が発生し大変な苦労をした時に、後工程を担う”厄介者”と呼ばれていた社員たちが、「皆さん残業続きで大丈夫でしたか?私たちに何かできることはありませんか?」と言ってくれたのは。

3年掛かって、”後工程はお客様”という一部の社員の”信条”が、”前工程は神様。後工程はお客様。”という現場全体の”信条”になったのだ・・・と実感した瞬間でした。

と同時に、”信条”とは、なかなか社員の腹に落とし込めない、落とし込めても行動に移すまでには時間がかかるものだということも、痛感したのでした。

中小企業において、諦めず、たゆまず、”会社にとって善いこと”、”信条”を説き続けることができるのは誰でしょうか?

社長をおいて他にいないのです。

 

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