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第41号:「利幅の大きな事業」という魅力に潜む盲点

SPECIAL

高収益・高賃金企業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

中小企業ではハードルが高いとされる社員1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの本気で儲かる組織になるための土台作りを指導。会社の「価値」に注目し、価格ではなく、組織全体で価値を高め・守り・売っていく仕組み作りで注目を集めている。これまで150社以上の様々な業種の中小企業を支援する中で、中小企業の業績・資金繰り・人材確保などの経営問題の背景には、「一見相反する会社と社員の利益双方を引き上げていく経営の仕組み」が欠けていることを発見し、その仕組み作りのノウハウを体系化。

「シライ先生、どの製品が一番儲かっているのでしょうか」製造業を営むA社長のお言葉です。私とA社長は、製品別の利益一覧を見ながらコンサルティングを進めています。

その表には作番、受注価格と製造原価、粗利益が記載されています。作成日が少し古いのか、工場の廃油のようなもので少しシミがついている管理表ですが、A社の1つの管理指標としてきちんと活用されています。

私はA社長にお伝えします。「良い資料ですね。こうやって製品ごとの収益性を可視化するのは、1人粗利3千万円事業を目指すにあたって重要な要素です。ただ、残念ながらこの表だけでは儲けを増やす判断はできません」

社長は少し驚いた表情を浮かべています。私は丁寧にその真意を説明します。その説明を聞き終えた社長は、なにやら思い当たる節があるようで、早速課題に取り掛かり始めます。この行動の速さがA社長の魅力です。

売上や利幅の大きいウリモノを受注していけば当然利益も大きくなりますが、ここに一つ盲点があります。

これは、製造業に限らず「サービス業」や「技術技能」を売っている商売においても当てはまる盲点です。製品の代わりに「案件」や「サービスメニュー」があるだけで、構造は全く同じです。その盲点とは、

「利幅は"人時当たり"で計測されるべき」

ということです。つまり、ある仕事を完了するのに必要な時間と、その時間に対する利幅を明らかにしないと、何が本当に儲かる仕事なのかは判定できない、ということです。

「それはその通りでしょう」という声が聞こえてきそうですが、しかしこれがどれだけ組織の「共通指標」として機能しているかと言えば、甚だその浸透具合は小さいというのが実情だったりします。

例えば利幅が100万円取れる仕事があります。この仕事が、もし2人がかりで2日で終わらせることが出来るものだとすると、1日1人当たり稼ぐ利幅は25万円ということになります。

一方で、1人1日で終わらせられる50万円の仕事は、1日1人あたり50万円の利幅を稼いでいるということになります。このように、受注した仕事の本当の利幅は、時間・人当たりの利幅でもって判定をしないと見えてこないのです。

これは非常に重要な視点です。我々は普通に「今期の業績は~」とか「今月はこれくらい行けそう」といった話をしていますが、成果は常に「時間」という概念がセットになっているということに気が付く必要があります。

今期なら「1年」という時間経過の中で生み出した成果であり、今月なら「1か月」という時間経過が生み出した成果です。細かい話をすれば、1日、1時間、1分という時間に対する成果の積み重ねが、毎月の利益、年間の利益に繋がっているわけです。

大きな粗利を生み出す事業、1人粗利を最大化する事業を目指すには、単なる額面上の粗利の大きさを追求するのではなく、時間当たりの粗利を追求しなければなりません。この1人当たり・時間当たり粗利益を、弊社では「人時付加価値」と呼んでいます。

案件や製品の収益性を計算するときは、人時付加価値を計算することで正確な収益性を判定できます。このようにして判定したところ、意外な案件・仕事・人が意外な収益性をもたらしている事実が判明することがあります。

これはサービス業でもよくある話です。利益の足しになると思って作ったオプションサービスが、人時付加価値計算すると単なる金食い虫だった、というケースなどです。

粗利が大きいビジネスであっても、それを提供するのに無駄に長い時間を掛けたり効率の悪いやり方をしていれば、利益は減ります。実施する社員の人件費や建物の家賃は、刻一刻と日々の時間経過とともに否応なしに積み上がっていきます。

これは、細かい時間管理前提のマイクロマネジメントをしろとか、あくせくしてあれからこれまで馬車馬のようにせっかちな経営をしろ、という意味ではありません。優先順位を付ける必要性を言っているのです。有限の時間の中で高い価値を生み出すには、それに直結する行動に組織を注力させなければなりません。

社長は、注力すべきこと、反対にやってはならないことを、明確に経営方針として示さなければなりません。経営方針を書くということは、社員の時間を何に集中させるかを意思決定するということです。

社長が明確な方針を可視化しなければ、社員は時間の使い方を状況の成行きに任せることになります。そして大抵、成り行き任せの結果は目標未達になります。なぜならそこには意思がないからです。明確な成果を生み出すための能動性がないからです。

社長含め、社員1人1人が、どんな行動にどれくらいの時間を使っているかが問題なのです。人時付加価値の目標は、それを明確に意識させる仕組みの1つです。

月次目標や年間目標を示した程度では、多くの人はそこに「時間」を感じることはありません。それを細分化し、毎日1時間の行動の中で生み出すべき成果が可視化されていて、はじめて組織運営の仕組みが新しいバージョンへと変わっていくのです。

A社長は、製品別の人時付加価値を確認した中で、隠れた儲けの種を見つけます。売上や利益規模こそ小さいものの、人時付加価値が他に比べて2倍以上ある製品も既に受注していたのです。A社長は、そこから新たな経営方針を打ち立てます。それは、この隠れた儲かる製品市場を拡大していくための明確な経営方針です。

貴方は、自社の本当の収益力を把握していますか?そこから得られた示唆を、儲けを生み出すための仕組みとして利用していますか?

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