本物のコンサルティングをより身近に。

新市場開拓を成功させる発想法_Part1

5c1c81e6570946ed5e0fcac6c5386683_s 「当社の従業員は、まったくモノゴトを考えていません。 この商品を他の市場に売り込もうと“営業を設計する技術”を読ませまたのですが……全然よいアイディアが出てこないのです」 先日、新市場開拓プロジェクトが始まったばかりの社長さんと、酒席を共にした際、ふとこぼされた一言です。 これは珍しいことではなく、多くの社長さんが同じように感じている課題です。 「なぜ従業員から優れたアイディアが出てこないのか?」 以前は、個人の資質の問題なのでは?と感じていました。 しかし、人工知能に興味を抱き、関連図書を読みあさっているうちに、ある明快な理由(仮説)が浮かび上がってきました。 そもそも、経営者と従業員とでは、思考回路が全く違います。 能力の差を申し上げているのではありません。 現実を捉える「視点」の問題です。 経営者は、「顧客」「競合」「取引先」などのステイクホルダーや社会情勢などの外部環境を感じ取りながら、自社の立ち位置を掌握しています。 また、従業員の働きや財務状態などを頭に入れた状態で、未来を感じ取り、自社の理想像…つまりビジョンを描いています。 明確な理想像の場合もあるし、なんとなく「こうしなければ…」という漠然とした理想像もあります。 ところが従業員には、そこまでの情報量は掌握できません。 これは仕方のないことです。 従業員に求められていることは、“今の成果”をあげることです。 今の成果をあげるための情報と、新しく市場開拓をするための情報とでは、大きな隔たりがあります。 従って「現状認識」や「問題意識」にギャップが生まれてしまうのは、ある意味当然のことなのです。 ただ、冒頭にも申し上げた通り、「人工知能は人間を超えるのかー人工知能を知ることは、人間を知ることだー」(松尾 豊氏著、KADOKAWA)を拝読し、それだけではない「仮説」が浮かんできました。 あくまでも私がビジネスの視点で同書を読んだときの「整理、分類、体系化」であり、私見が入り込んでいるので、同書の主旨とは異なる事を予めご了承の頂いた上で聞いてください。 例えば、今回のテーマのように「ある既存商品を他市場に横展開して新市場開拓を成功させる!」という計画を企てる必要があったとします。 この時に必要な思考回路は…
  1. 既存商品の特徴を抽出すること
  2. ある特徴を抽象化すること
  3. 抽象化した特徴を無関係な世界に投げ込むこと
  4. 他要素との組み合わせや他分野での成功モデルの抽出
  5. 自社テーマへの具現化
  大きく分けるとこの5つのステップで進められていることが「人工知能」の研究成果を読んでいて、わかったことです。 まず、1の「既存商品の特徴を抽出すること」。 これは「強み」を発見するプロセスと言い換えてもいいでしょう。 一見「特徴」を見つけるのは、カンタンに見えることなのです。 ところが、実はコレが「脳」の働きからみると、物凄く奥深いテーマだそうです。 人工知能の実現も、この「特徴」をつかみ、答えを導き出す…とう課題が浮き彫りになり、その壁を突破するまで50年あまりの歳月を要したようです。 例えば、人間においては、人の顔を識別して「誰々さんでしょ」と答えを導きだすのはカンタンなことです。 「目は2つ、鼻と口は1つ…」と人間の顔の基本構成は全く同じにも関わらず、あの人は鈴木さん、あの人は山田さん、あの人はトムクルーズ…と、微妙な特徴を抽出して、答えを正しく導き出します。 しかし、人工知能では、これがとても難しい課題だったそうです。 画像認識技術を使って、この顔は鈴木さん…この顔は山田さん…と答えをインプットすれば良いだけの話ですが、これでは膨大な作業量が発生します。 膨大な量をインプットしなくても、私達人間は判断できているので、何かしらのアプローチがあるはずです。 細かいことは割愛しますが、特徴を抽出して答えを導きだすプロセスにおいては、膨大な量のノイズを意図的に加えることだったそうです。 つまり、大量に人間の顔をインプットしているから、鈴木さんや山田さんの特徴をつかみ出せるという「脳の機能」に着目できたのです。 別に、大量の顔を名前と一致させる必要はありません。ある特徴をもった人が山田さんだと分かれば良いだけです。 素晴らしい着想です。 これは「強み」を発見するプロセスでも、同じ概念で発想することが出来ます。 既存商品の特徴だけを見ていても、「強み」は発見できず、膨大な量の商品やサービス(ノイズ)をインプットした状態で、改めて自社商品を見つめてみるのです。 これは、理屈で考えればとてもシンプルなのですが、実際のビジネスプロセスに当てはめて想像してみると、非現実的なことがわかります。 例えば、今の成果をあげなくてはいけない従業員が、自社商品とは無関係な情報を収集していたら上司は、どのような指摘をするでしょうか? 恐らく…「仕事と関係のないホームページなんか見ているなよ! 最近、外出しても何の仕事をしているのかも全く理解できない…余計なことをせずにさっさと仕事しろ!」と言われるのがオチです。 この上司の指摘は表面だけを見れば間違ってはいないハズです。 しかし、「ある既存商品を他市場に横展開して新市場開拓を成功させる!」…という目的に向けた第一ステップには、膨大なノイズが必要なのも事実。 となると、ノイズをもった人間を一時的に投入する方は、手っ取り早いことが分かります。 冒頭の社長さんも、これを直感して私に仕事を依頼したのでしょう。 強みを明確にしなければ、新しい市場で勝負ができるのか否かがわかりません。 そもそも、強みとは「相対的な価値観」であり、「絶対的価値観」ではないために、知の海に放り込まないと浮き彫りにはならないものなのです。 こうして「強み」が明確になったら、次は「強み」を抽象化するプロセスが必要です。 と言うのも、抽象化しなければ、他の市場にとって価値が生まれるかいなか…アンテナに引っ掛からないためです。 この抽象化が出来るか否かが、横展開の成否を分けると言っても過言ではありません。 人工知能の研究以外でも、人間の創造力は「抽象化思考」の強弱によって決まることが分かっています。 今回は、ヘビーなテーマのため、この段階で、普段のコラムの原稿量となってしまいました。 2ステップ目以降の「特徴の抽象化」→「抽象化した特徴を無関係な世界に投げ込む」→「他要素との組み合わせや他分野での成功モデルの抽出」→「自社テーマへの具現化」は次回に譲りたいと思います。   乞うご期待ください。