組織を進化させる「自責の空気」──透明資産経営が描く責任と信頼の循環５つのアプローチ

 

組織を進化させる「自責の空気」──透明資産経営が描く責任と信頼の循環５つのアプローチ

 

こんにちは。企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

 

私が提唱する「透明資産」とは、業績に影響する“空気感”を意図的に設計・運用する仕組みのこと。これを経営に取り入れることで、お客様との絆は強まり、従業員同士の信頼が深まり、商品やサービスの独自性も際立ちます。そして、その結果として企業は持続的に成長し続けます。

 

そして、経営の現場を見ていると、経営者が共通して悩むテーマがあります。それは「なぜ社員が自分事として仕事をしないのか？」という問いです。会議での意見は少なく、指示されたことしかやらない。失敗すれば、、、他部署のせい、会社の仕組みが悪い、といった声が飛び交う――。この状態を私は他責の空気感と呼んでいます。

 

他責の空気感が蔓延すると、社員は守りに入り、挑戦は止まり、組織は少しずつ活力を失います。逆に、自ら「この状況をよくするために自分にできることは何か？」と考える自責の空気感が浸透すれば、組織は驚くほど前向きで心地よい文化へと変わるのです。

 

今日は、他責の空気感が生まれる背景をひも解き、そこから自責の空気を育てる５つのアプローチを、透明資産経営の視点でお伝えします。

 

＜１＞他責の空気が生まれるメカニズム

 

他責は、社員個人の性格や能力よりも組織の空気感に大きく影響されます。いくつかの典型的な背景を見ていきましょう。

 

①失敗を許さない文化が防衛反応を招く
「一度のミスで評価が下がる」「失敗した人を徹底的に追及する」――こうした環境では、社員は自己防衛のために原因を外に求めます。責任転嫁は生き残り戦略になり、悪意なく他責が広がってしまうのです。

 

②指示待ち体質が責任感を奪う
トップダウンが強く、裁量の余地がない組織では、社員は言われたことだけやればいいと考えます。結果が出なくても指示通りやったと言えてしまうため、自分の成果と行動を結びつけられません。

 

③情報格差が当事者意識を削ぐ
経営層だけが全体像を握り、現場には目的や背景が届かない――この状態では「なぜやるのか？」が分からず、仕事は上の人の決定に変わります。必然的に他責の温床となります。

 

④批判が先行する文化が無責任を助長する
建設的な対話よりも批判や揚げ足取りが目立つ職場では、社員は新しい提案を避け、現状維持を選びます。問題が起きると犯人探しに時間が割かれ、真因の解決は後回しになります。

 

＜２＞自責の空気を育む５つのアプローチ

 

他責の空気を断ち切るには、経営者が意図的に空気感の設計を行うことが欠かせません。以下の５つは、透明資産経営が実際に成果を上げているアプローチです。

 

①「Why」の共有で目的を自分事化する
すべての仕事に「なぜそれをやるのか？」を添える。例えば、売上を10％上げたいではなく、お客様のこの課題を解決するための新サービスだからという背景まで共有する。目的を理解した社員は、結果への責任感を自然に持つようになります。

 

②失敗を学びに変える仕組みをつくる
失敗を咎めるのではなく、全員の学びに変える場を設計します。振り返りは犯人探しではなく次に活かすポイント探しに徹する。これにより、社員は挑戦への心理的安全を確保し、自分の行動に真正面から向き合う姿勢を持ちます

 

③小さな成功体験を積ませる
責任感は自信とセットで育ちます。社員が自分で判断できる小さなプロジェクトを任せ、その成果を全員で称賛する。小さな「やった！」の積み重ねが、自分の行動は結果を生むという実感につながります。

 

④信頼を示して任せる
目標だけ共有し、やり方は任せる――これは信頼の表明です。細かく管理するのではなく、困ったらいつでも相談してほしいというスタンスを示すことで、社員は任された責任を感じ、主体的に動きます。

 

⑤部門を越えた対話を増やす
他責の多くは、相手の事情を知らないことから生まれます。ランチミーティングやカジュアルな交流の場を意図的に設け、感謝や労いの言葉を日常的に交わす文化を育む。これが横の信頼関係を深め、問題解決を一緒にやる空気感に変えます。

 

• 自責の空気がもたらす未来

 

自責の空気が組織に根づくと、以下のような変化が起こります。

• イノベーションが加速する
  失敗を恐れず、挑戦から学び続けるため、新しいアイデアが次々と生まれます。
• 生産性が上がる
  目的を理解し、自律的に動くため、無駄な業務や責任逃れのやり取りが激減します。
• エンゲージメントが高まる
  成果と行動が直結し、承認されることで、社員のやりがいと愛社精神が強くなります。
• 強固なチームワークが築かれる
  「助け合うのが当たり前」という関係性が、部門の壁を越えた協力を生みます。

 

透明資産経営とは、この自責の空気感を意図的にデザインし、運用する哲学です。それは、単なる利益追求の場ではなく、働く人が喜びと成長を感じられる場へと組織を進化させます。

 

―勝田耕司