社長が気をつけるべき、「何かを学ぶ」ときの注意点

  キラーサービス(特別対応の標準化) 中川洋一 SPECIAL
中川洋一 SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルティング

株式会社キラーサービス研究所 代表取締役 中川洋一

経営革新コンサルタント。特別対応を標準化することで企業に大きな収益をもたらす専門家として高い支持を得ている。これまで、倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業の成長支援を手掛けた実績を持つ。氏が関わった企業からは、「価格競争から脱却できた!」、「圧倒的に選ばれるようになった」、「顧客に感謝され、社員の士気も上がった!」など、絶大な信頼を獲得している。


「これからしっかり経営に向き合います。経営者として自分でも何か勉強すべきことはありますでしょうか。」 ―――コンサルティング開始後、いまのままではまずいと感じられた、ある社長から出たお言葉です。

私は、「特に勉強というのは何もしなくてもいいですよ。経営の仕組み化にしっかり向き合いましょう。」とお答えしました。

今まで学んでこられたのが、DMの打ち方とか、web広告の手法といった具体的なものが中心とのことで、今後「何を学ぶべきか」についてもそういったノウハウを想定しておられると判断したからです。

世の中には「誰でも3か月で成果が出せる〇〇法!」みたいなものが、溢れかえっています。経営者向けと謳ってはありますが、実際に参加するのは売れていない同業者のコンサルやコーチ、マーケッターがほとんど。そして参加者は学んだことをそのまんま横流しすべく、似たような講座をやり始めます。こういったベタベタな講座やセミナーがねずみ講のように増えるばかりです。

また、本屋にいっても似たようなビジネス本や自己啓発本がずらりと並んでいます。伝え方の本、社員のやる気を出させる本、PDCAの本、生産性の本、、、、、もう実用書祭りです。

結論から言うと、そういったノウハウを教えるセミナーや本からいくら学んでも、どんどん結果から遠ざかるだけです。

本コラムでも何度かお伝えしていますが、結局ビジネスで成功している人はどういう人かというと、人より高い視点を持てている人です。ビジネスで結果をだすためには、社員にしろお客様にしろ「人」を動かしてなんぼですから、人をうごかすためにはこちらが相手の状況を俯瞰して見えていることが必須条件です。

ミスミ勤務時代に、当時社長だった三枝匡氏が自らの著書を使って進める研修に何度も出ましたが、それは本の内容を理解する目的ではありません。参加者である我々が、本に書いてある考え方やフレームワークを自分のビジネスに当てはめ、その経営戦略を論じるというものでした。本の感想など書こうものなら再起不能なまでに酷なフィードバックが帰ってきます。

三枝氏が鍛えろといつもいっていた能力があります。それは「敷衍化(ふえんか)能力」です。それは彼の定義では、「一つの状況から得た教訓や考え方を整理して抽象化し、それを他の状況にも応用できるようにする能力」ということです。

この敷衍化能力がないと、失敗から学ぶことができずまた同じ失敗を繰り返す。もしくは成功したとしてもなぜうまくいったかが理解できず、次もワンパターンで同じことをやってしまって失敗する。そういうことになってしまうと。

つまりは抽象思考を鍛えろということです。

問題は、具体的なノウハウを詰め込むほど、思考も低抽象になっていくということです。「誰でもわかる」「すぐに結果が出る」系のものは役に立たないだけでなく、害悪なのです。

ちなみに私は抽象思考を鍛えるために「現代哲学」を学んでいます。

哲学というと何か気難しいことを考えるばかりの、実践ではよほど役に立たない代物だというイメージを持たれるかと思います。古典哲学は確かにそういった面も強いです。

しかし現代哲学はそうではなく、人と世界の本質を追求した学問で、今流行りの脳科学や心理学の概念すら包括した最上位概念となるものです。 現代哲学を通して人と世界の本質が見えてくると、「セールス」やそれにつながる「商品開発」、さらには人を動かすための「組織マネジメント」についても、その精度が上がってきます。

本稿は忙しい経営者の皆さんに一から哲学を学ぶことをお薦めするものではありませんが、具体的なノウハウを追いかけることは、視点を下げてしまうばかりか、学ぶこと自体を目的化し、現実の問題から目を背ける妄想症にもつながりかねません。

ましてや、「在り方が大事だ」「マインドだ」とひたすら自己の内面に目を向けるばかり、やがてスピリチュアルの方に走り「引き寄せだ」、とか「すべては決まっている」とか、「本当の自分は」などと言い出す方も少なからずいらっしゃいます。

引き寄せで経営がうまくいくなら誰も苦労しません。もし上場会社の株主総会で「わが社は引き寄せの法則で、、、」などと言った日には当然のことながら株を売り浴びせられることでしょう。

具体的な何かに飛びつくことは簡単です。一方、問題を抽象化したり、全体を俯瞰して高い視点から考えることは苦しいですし、すぐには身につきません。それでも、社員の人生を預かり、社会を変えて行く存在として、具体に逃げず抽象と向き合っていきましょう。

 


儲かるキラーサービスを つくる社長の視点
中川洋一

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルティング

株式会社キラーサービス研究所代表取締役

中川洋一

執筆者のWebサイトはこちら http://ksli.co.jp/

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