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ジレンマをどう解決するか

SPECIAL

社内独立店開コンサルタント

株式会社ストアブレインコンサルティング

代表取締役 

経営コンサルタント。アパレル、小売、飲食チェーン指導などに強みを持ち、店長再生から店舗最盛へとつなげていく独自の「社内独立店開」手法を指導する専門家。
自らは店舗を持たない「販売・運営」に特化した経営スタイルに、多くの異業種経営者、店長が注目。路面店から百貨店、都心型SC、郊外型ショッピングモール…など、多様なチャネルで成果を上げ、店舗の強みを引き出す天才と称されている。

皆さんは「トロッコ問題」をご存知でしょうか? 「暴走するトロッコの前方に5人の作業員がいます。トロッコがそのまま進めば5人は助かりません。しかし、分岐点にいるあなたがレバーを操作することで、トロッコの進路を切り替えることができます。ただし、切り替えた先でも1人が作業中で、5人の代わりにその1人が犠牲になってしまいます。さて、あなたはどうしますか?」という倫理学上の問題です。

あなたはレバーを操作するか、あるいは何もしないで傍観するかが選べるだけで他の手段はありません。5人を助けるために1人を犠牲にするのか。あるいは自分は何もせず、ただ黙ってトロッコが通り過ぎるのを傍観するだけなのか。もっと細かく言えば、積極的に行動し、1人を犠牲にする罪悪感に苛まれながらもより人数の多い方を助けるのか。あるいは自分から動かず、5人は犠牲になるが「仕方がない事故」として受け止めるのか。

この問題は1967年、イギリスの哲学者フィリッパ・フットが考案した思考実験です。最初にお伝えしておきますが、この問題に正解はありません。ですが、この問題を考えることで人が「倫理的なジレンマ」に陥った時それをどう解決するのか。考えを巡らせ、議論を深めるプロセスで様々な手掛かりを得ることができるのではないでしょうか。

ちなみに山口県岩国市の小・中学校でトロッコ問題を資料にした授業があり、その後数名の保護者から「授業に不安を感じる」と指摘があったそうです。結局最後は校長が文書にて謝罪をするという事態となりました。良し悪しの判断は置いておきますが、何だか「決断」について考えさせられる1件です。

話を戻しますが、現在ではAIによる完全自動運転車で似たような状況になった際、何を優先し、どう選択するのかを設計者が決める必要もあり、単なる思考実験ではない「現実の問題」としても議論が起ち上がってきています。

あるアンケートでは、8割以上の人が「トロッコの進路変更」は正しいことだと答えているそうです。これは多数を救える方がより大きな善となる「功利主義」の考え方です。とはいえ、実際にその場面に遭遇した場合、アンケートのように簡単には答えが出せない難問であるのは間違いないでしょう。

翻って、現在のコロナ騒動。どの立場に立っていても、難しい決断を下す場面に遭遇すると思います。抽象的に考えればまさに「トロッコ問題」のような状況も多いのではないでしょうか。そこまで単純ではないにしても、倫理的にも、利害的にもジレンマが生じる決断は枚挙に暇がありません。

政治的に見れば「オリンピック開催の是非」や「緊急事態宣言の発出」、「ワクチン接種の優先順位」「既存患者とコロナ患者の対応」など難しい問題は山積しています。経営者にとってみても、「事業継続の可否」「従業員の解雇」「取引先との関係解消」などすぐには答えが出せない問題が次々に襲い掛かってきます。

これらの問題に対し、「これをすればいい」という明確な基準や方法は残念ながらありません。ただし一つだけ、絶対に必要なことがあります。

それは決断者の「覚悟」です。「責任を持つこと」とも言えます。決断する際、どの案を取るにしても必ず賛否は分かれ、批判は起こります。そこに絶対ブレない覚悟があれば一貫した考えの施策となり、少なくとも混乱を招かず、また問題が起こったとしても責任の所在が明確ですぐに次に進めます。

この正反対を行っているのが今の日本だと感じます。誰も責任を持たず、当然覚悟などあるわけもない。結論の先延ばし、声の大きい人の言いなり、前例踏襲、日和見主義… 政治家もそうですが、すべて政治家のせいにし、顔も名前も出さない批判者もそうです。

経営者の皆さん。私たちはすべて自分事として、覚悟を持った決断をするようにしましょう。当たり前のことかと思いますが、昨今のコロナ騒動を見るにつけ、私はかなり危機感を持ちました。改めて「トロッコ問題」を使って考えをお伝えした次第です。

 

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