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「費用」と「投資」は明らかに分けて考えるもの―費用の削減だけを考える経営者は成長しない―

SPECIAL

地方メディアの高度有効活用コンサルタント

株式会社メディアコネクション

代表取締役 

広告分野における地方メディアの高度有効活用を専門とするコンサルタント。東京在住中のマーケティングビジネス経営の経験と地方企業への経営革新支援ノウハウの融合させた、独自の「儲かるための広告戦略」を開発。自らも成功実践事例として、地方メディアを舞台に展開。

少し昔の話になりますが、地方の商工会の青年部から講演を頼まれたことがありました。その青年部の研修担当の若手経営者とたまたま知り合いだったので、研修テーマに困った彼が電話をしてきたのでした。青年部の研修ももう長年続けているために、頼める講師や勉強のテーマのネタが尽きてきて、考えあぐねた末に私のことを思い出したようなのです。そのときはまだコンサルタントとしての看板を立ち上げていませんでしたから、普段専門職としている税理士としての依頼でした。

電話口の彼は、

「突然のことで申し訳ないのですが、お願いしてもよろしいでしょうか。」

と、やや遠慮がちです。私は

「もちろんです。喜んでお引き受けしますよ。ところで、講演のテーマはどうしましょうか。何か決まっているのですか?」

と尋ねました。

「先生にお願いするということでいろいろと考えたのですが、やはり専門分野がいいかと思い、「経費のうまい削り方」とか「経費の上手な使い方」といった内容を考えたのですがどうでしょうか?」

これを聞いて、途端に私の声が曇ります。

「随分とつまらないテーマですね。だって青年部でしょう?若い経営者の集まりじゃないですか。せっかくそこで私がしゃべるんだから、もっと夢のある、未来に向かうようなテーマでやったらどうですか?」

と注文をつけました。

「すいません。そんなテーマで何かありますか?」

と彼。私は

「いくらでもありますよ。マーケティングにしろ販売促進にしろ、これからあなたたちに考えてもらったりチャレンジしてもらいたいテーマというのは、数えきれないくらいあります。」

「そうですか。それではそういった方面のテーマでお願いします。」

といったやりとりをして電話を切りました。

 

私が税理士ということで、「経費削減」みたいなテーマがいいんじゃないか、と研修担当の仲間内で話し合ったりしたのでしょうが、それを聞いた私としては不本意でした。それまでも、どちらかといえば税理士の中でも、マーケティングとか売上アップへの支援などを普段から標榜していたし、そういった私の姿勢を彼も知っていたはずなのに、「経費のうまい削り方」みたいなテーマしか思いつかなかったのかなあ、と少し残念だったのです。

 

さて前置きが長くなってしまいましたが、とはいえ、経営者にとって「経費」がどうでもいいというわけではありません。

「必要経費」という言葉があるくらいですから、企業が事業を推進していく上でどうしても必要な経費というものは存在します。

私はいぜんから、この「経費」の中に、単なる「費消的経費」「投資的経費」があることを意識していました。

「費消的経費」というのは、水道光熱費や交通費のように事業推進上やむを得なく費消されてしまう経費のことです。

一方、「投資的経費」というのは、研修費とか販売促進費のような、今すぐは効果が出ないけれど、事業の将来を考えた場合、あえて投資しておかなければならない経費のことです。

もちろん、これらは明確に分けることができるものではなく、多くの経費には両方の特性が入り混じっているといってもいいでしょう。

 

「投資的経費」を考えるとき、その効果について最も分かりやすい表現に「コスパがいい」とか「コスパが悪い」といった言い方があります。

少ない投資で大きな効果を上げた場合「コスパがいい」ことになり、リターンがいまいちだったときは「コスパが悪かった」ことになるのです。ただ、この「コスパ=コストパフォーマンス」については、日常の軽い私生活の中で、コスパがいいとか悪いとか使う分にはかまいませんが、事業を推進していく中において、これだけをいつも強く意識するという姿勢はあまり感心できません。というのは、先述の研修費などは、コスパがいいとか悪いとか簡単に結論が出せるものではないからです。

すぐには効果が出なくても、じっくりと結果を待つという選択も、事業推進の上では必要なときがあるのです。

 

さて、こんな風に、経費の中でも「投資的経費」の性格を強く含むものに「販売促進費」があります。

「販売促進費」は、事業業績を上げるために先行的に投資する広告宣伝費やイベント経費などの費用になります。ただしこの効果は、絶対的に保証されているものではなく、お金をかけた割にはあまり成果が出なかった、ということは大いにあり得るのです。

 

したがって、零細な企業や業績不振の企業ほどこういった経費をかけない傾向にあります。しかし、そうなると売上に貢献する材料が乏しくなるために、ますます業績が下がるという悪循環に陥ってしまうのです。

企業に資金的に余裕がなくなってきたとき、この「投資的経費」から先に削減してしまうケースが多いのですが、そうするとさらに将来的な展望が望めなくなる、ということになるのです。

それではなにかそうならない方法、というものはないのでしょうか。

 

私はその一つに、企業経営者による「情報発信(アウトプット)」があると思っています。

「情報発信(アウトプット)」は全く経費がかからないわけではありませんが、広告宣伝費やイベント経費などに比べれば圧倒的に少ない費用で済ますことができる販売促進策です。

したがって、零細な企業や資金的に厳しい企業には極めてありがたい方策の一つといえるのではないでしょうか。

 

このほかにも、安易に削ってはいけない「投資的経費」というのはいくらでもあります。もちろん、企業にとって無駄な経費を使っている余裕などない世の中ですが、冒頭の商工会青年部の彼のように、若い経営者にもかかわらず、まず思いつくテーマが「経費の上手な削り方」ではちょっと寂しすぎます。

「情報発信(アウトプット)」に取り組むというのは、「攻めの経営」の一つの姿です。

私も経営者の一人ですが、経営は常に「攻めに徹していなければ話にならない」と考える方です。

「投資的経費」=「戦略的経費」と位置付けて、若い経営者には前向きに頑張ってもらいたいものです。

 

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