赤字と工程遅延
プロジェクトを計画通りに進めて完遂させたいのは当然ですが、前提や想定を超えたトラブルにより計画通りに進まないケースが起きることは避けられません。その時に、何に気をつけて対応しなければならないでしょうか。
プロジェクトの成否を評価する重点項目としてQCDがあります。Q(Quality;品質、C(Cost; コスト)、D(Delivery; 納期)の頭文字をとったものです。世の中一般的にはQCDの並びで用いられているのですが、その重要度、及び対策の優先度からはQDCの並びとすべきでしょう。
プロジェクトが計画通りに進まない状況というのは、このQDCのいずれか、またはすべてにおいて実績に計画との偏差が生じているということです。そして偏差が生じた時に対策しなければならない優先度は、Q>D>Cということになります。
プロジェクトの成果物である製品・サービスの品質は何を置いても最重要です。品質を疎かにすると、納期に間に合わせることができたとしても、納品後、サービス稼働後にトラブルを発生させることになり、プロジェクト期間中に対策するより何倍ものコストと期間が費やされることになります。ただし、製品・サービスによっては品質の中において濃淡があって、一部の機能不足や不具合があってもリリースを優先し、後から対策版を追加リリースするという判断もあります。いずれにしても、品質面で問題が生じると納期及びコストの両方に問題が生じることになるので、常に感度を上げてモニタし、問題には最優先で対策すべきです。
さて、品質の次に優先すべきはコストよりも納期です。プロジェクトが赤字になっても、製品・サービスの納期を守る方を優先すべきです。プロジェクト進行過程では、コストオーバより工程遅延への対策を優先すべきということです。なぜでしょうか。赤字やコストオーバの影響は自社内に収まりますが、請負プロジェクトにおいても自社製品・サービスのプロジェクトにしても、納期を守れないと顧客や利用者に迷惑を掛けるためです。
そしてもう一つの理由があります。赤字やコストオーバは一過性ですが、工程遅延はボディブローの様に後々に効いてくることになり、組織の体力を奪ってしまうためです。何らかの事情により品質の低下や工程に遅れが発生したとき、追加コストを要しても直ちに体制強化等の手を打って挽回すれば、後に尾を引かない単発のコストオーバで済みますが、工程遅延を放置してしまうとそれによって後工程、関係者のスケジュール、場合によっては他のプロジェクトの進捗にも影響を及ぼしてしまう可能性があります。何より慢性的な工程遅延は、プロジェクト関係者間にもやもやしたものを感じさせ、精神衛生上落ち着かない状況を生み出します。
PM(プロジェクトマネージャ)及び上位者の皆さんは、以上のことを念頭に置きながら、プロジェクトの工程に遅れが見えたときに何を優先しどの様に対処するか、覚悟を持って判断できているでしょうか。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。