頑固と信念の分かれ道──空気を制する者が未来を制す

頑固と信念の分かれ道──空気を制する者が未来を制す

こんにちは。企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

私はこれまで数多くの経営者とお会いしてきました。業績を伸ばしている会社、停滞している会社。いったい何が違うのか。資本力か、商品力か、人材力か。もちろんそれらは大切です。しかし、私が長年の現場観察から導き出した結論は明快です。

会社の未来を決める最大の要因は「空気感」であること。

戦略や計画は机上で描けます。資金も、銀行や投資家からの調達で補えます。人材も、ある程度は採用活動で獲得できます。けれども、会社に漂う空気感──そこに社員が「挑戦していい」と感じるか「黙って従おう」と感じるか──こればかりは模倣できず、経営者のあり方から自然に滲み出てしまうのです。そして、その空気感を決定づける分岐点こそが「頑固」と「信念」の違いだと考えています。

＜１＞頑固が生み出す“防御の空気”

頑固とは、自分の考えややり方に固執し、外部からの意見や変化を拒む態度です。一見、強いリーダーシップに見えます。しかし、その裏にはしばしば「不安」や「プライド」、そして「過去の成功体験への依存」が隠れています。「昔からこのやり方でやってきた」「俺の経験に間違いはない」こうした言葉が口癖になった瞬間、空気は硬直します。社員は「どうせ聞いてもらえない」と声を失い、提案も挑戦も消えていきます。

実際、私はある製造業の現場でこの空気を目の当たりにしました。社長は長年の展示会営業に自信を持ち続け、デジタル化の波を無視し続けました。その結果、若手社員は「社長に言っても無駄」と沈黙し、競合はオンライン発信で顧客を奪い、市場の存在感は急速に薄れていったのです。頑固が生み出すのは「防御の空気」。それは学びの扉を閉ざし、社員の主体性を奪い、会社を過去の成功の亡霊に縛り付けるのです。

＜２＞信念が流す“推進の空気”

一方、信念とは理念や価値観に根ざした揺るぎない軸を持ちながら、手段や方法は柔軟に変えられる姿勢です。たとえば「お客様第一」という信念を持つ経営者。店舗という形態がオンラインに移っても、その軸はぶれません。「どうすればお客様が決めやすくなるか」という目的に忠実であれば、接点の方法はいくらでも変えられるのです。この態度が社内に流れると、社員は「方向性は変わらない」という安心感を持ちつつ、「やり方は工夫していい」と挑戦できる。つまり、信念は挑戦の許可証となり、推進の空気を社内に充満させるのです。

ある飲食チェーンでは、社長が「お客様に“余韻”を残す」という信念を掲げ、現場に工夫を任せました。すると各店が独自の方法で余韻を演出し、口コミでの再来店が増加。広告費を削減しながら売上が伸びました。これは数字で測れない信念が、空気を通して数字を動かした典型例です。

＜３＞頑固と信念の本質的な違い

両者の違いをシンプルに表すならこうです。

頑固は「方法」に固執する
信念は「目的」に根ざす

頑固は「変わらないこと」そのものに価値を置きます。やり方を守ること自体が目的化してしまうのです。一方で信念は「変わらない軸を持ちながら、変わることを恐れない」。目的を守るために手段を変え続けられる柔軟さを持ちます。つまり、頑固がつくるのは「過去に縛られた空気」。信念がつくるのは「未来に挑む空気」。この違いが、企業の透明資産の厚みを決定づけるのです。

＜４＞経営者の一言が空気を決める

経営者が頑固に傾けば、組織は停滞します。社員は萎縮し、挑戦を避け、優秀な人材から辞めていきます。しかし、信念を貫く経営者の言葉は違います。理念を語りつつ、やり方の工夫を歓迎する。その一言が社員の背中を押し、「この社長についていけば未来を切り拓ける」と信じさせます。経営者の在り方一つで、会社の空気は180度変わるのです。

＜５＞従業員に現れる違い

社員の行動にも頑固と信念の差は如実に現れます。頑固な従業員は、新しい方針に「前のやり方の方がよかった」と抵抗し、自分の経験を絶対視します。学びを止め、やがて「古い人材」となっていきます。その空気は周囲にも伝染し、組織を停滞させます。信念ある従業員は、会社の理念を軸に判断できるため、自律的に正しい方向に動けます。方法を柔軟に変え、常に新しいスキルを吸収します。「なぜこの仕事をするのか」を仲間に共有し、チームに前向きな空気を醸成します。会社を未来に押し出すのは、こうした「信念を持つ人材」です。

＜６＞脳科学が裏づける“空気の力”

「空気感など曖昧なものだ」と思うかもしれません。しかし脳科学は、空気の影響を明確に示しています。人が安心感を覚えると「オキシトシン」が分泌され、協力的・挑戦的な行動が増えます。信念を軸にした組織では、この安心感が空気として広がり、社員は自然に協力し、新しい挑戦が日常化します。逆に頑固な空気が支配すると、社員は「どうせ無理だ」と感じ、ストレスホルモン「コルチゾール」が優位になります。その結果、挑戦を避け、防御的な行動に終始する。これは組織の生命力をじわじわと削ぎ落とす“静かな病”です。

＜７＞透明資産経営の視点

ここで改めて、私が提唱する「透明資産経営」の本質をお伝えします。透明資産とは、財務諸表には現れないが、確実に業績を左右する“空気感”を資産として設計・運用する考え方です。商品力や営業力はもちろん必要です。しかしそれだけでは持続的成長は難しい。なぜなら、商品も技術もやがて模倣され、資金調達の優劣も相対化されていくからです。唯一、模倣できないのが「その会社にしかない空気感」です。社員が挑戦しやすい空気、お客様が「なんかいいな」と感じる空気。これこそが企業を未来へ導く最大の資産＝透明資産なのです。頑固を放置する会社は、空気が硬直し、透明資産を失っていきます。信念を軸にする会社は、空気が推進力となり、透明資産が積み上がり、持続的成長へとつながります。



最後に・・・

経営者の皆さん、あなたが自社内に流しているのは、「防御の空気」でしょうか。それとも「挑戦の空気」でしょうか。頑固は過去を守り、信念は未来を拓きます。空気感は目に見えません。しかし確実に社員を動かし、顧客を惹きつけ、数字を変えていきます。

どうか今日から、自社の空気を見直してください。

そして「信念で空気をデザインする」──それこそが透明資産経営の核心であり、変化の時代を生き抜く唯一の道であることに目を向けてみませんか。。。

 

―勝田耕司