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社員が辞めない組織の空気|離職率を半減させる心理安全の4原則

SPECIAL

透明資産コンサルタント

株式会社ホスピタソン

代表取締役 

社内に「感じいい空気」を意図してつくりだし、業績を躍進させる「透明資産経営」指導のコンサルタント。大学卒業後、1993年キリンビールに入社。東名阪で飲食店向け営業を担当し、延べ2千店以上へ課題解決提案を実践。在籍17年間で社長賞を4度受賞、同社最速で部長昇格。新聞・雑誌・TV・ラジオでも多数取材される。
 2011年12月、株式会社ホスピタソンを設立、代表取締役に就任。「世界中の企業に透明資産を」というビジョンを掲げ、企業の「空気感」をおカネに変える専門家として活動中。

社員が辞めない組織の空気|離職率を半減させる心理安全の4原則

 

社員が辞めない組織の空気|離職率を半減させる心理安全の4原則

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

離職率が高い会社と低い会社の違いはどこにあるのか。待遇か、給与か、制度か。もちろん、それらも一定の影響を与える。しかし、多くの経営者が見落としている最大の要因は「空気」である。社員が会社を辞める理由を調べたアメリカの調査会社ギャラップのレポートによると、退職理由の7割は「人間関係」「職場の雰囲気」「上司との心理的距離」で占められており、給与や待遇は最重要理由にはなっていない。社員は仕事そのものから離れているのではなく、空気から離れているのだ。

空気は見えないが、誰もが感じている。職場に入った瞬間に伝わる緊張感、ミーティングの微妙な空気、上司の顔色をうかがう雰囲気──こうした日常の空気こそが、社員の感情と行動を決定づける。脳科学では、人の脳は“危険信号”を察知すると扁桃体が反応し、思考・集中・創造性が低下すると言われる。つまり、空気が悪い職場では、どれだけ優秀な社員でも実力を発揮できない。離職率の高さは、社員の能力の問題ではなく、空気の問題である。

では、なぜ空気が社員の離職率にこれほど強烈な影響を与えるのか。理由は明確だ。社員は「安心できる場」でしか力を発揮できず、「不安が漂う場」では心が疲弊する。だからこそ、Googleが研究した「Project Aristotle」で最も高い成果を上げたチームに共通する要素が“心理的安全性”だったことは象徴的である。心理的安全性とは、自分の意見を言っても否定されない、ミスをしても責められない、助けを求めても恥にならない──そうした空気のことである。

つまり、社員が辞めない組織とは、心理的安全性という空気が整っている組織のことだ。ここでは、離職率を半減させるために不可欠な心理安全の4原則を、経営者の視点から深く掘り下げる。

―1.心理的安全性は「甘さ」ではない。強い組織づくりの基礎体力である

まず理解しておきたいのは、心理的安全性は「優しい職場にしましょう」という話ではないということだ。心理的安全性が高い職場ほど、挑戦が生まれ、建設的な議論が増え、成長スピードが上がる。逆に、心理的安全性が低い職場では、表面的な会話しか生まれず、社員はミスを隠し、報告が遅れ、組織の成長が止まる。

実際、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授は「心理的安全性は高業績チームの特徴であり、あらゆる成果の基盤である」と結論づけている。心理的安全性とは、甘さではなく、強い組織をつくる“筋力”だ。

では、心理的安全性はどのように空気として形成されるのか。
その鍵となるのが、以下の4つの原則である。

2.離職率を半減させる心理安全の4原則

「否定されない空気」──意見・感情・提案を出しても安全だと感じられる

人は誰しも、自分の意見を否定されることを恐れている。否定されると脳は“危険”と判断し、扁桃体が反応して言葉を飲み込むようになる。組織で意見が出なくなった瞬間、心理的安全性は崩れ始める。

例えば、上司が部下の意見に対して「それは違うよ」「なんでそんな提案したの?」と言っただけで、部下の脳は“危険な空気だ”と判断する。すると次からは意見を出さなくなる。これが積み重なると、社員は「この会社では本音が言えない」と感じ、離職を検討し始める。

反対に、意見が尊重される空気の会社では、会議が活性化し、挑戦する社員が増える。心理的安全性は、意見の尊重から始まる。

「ミスが共有される空気」──ミスは責任追及ではなく学びに変わる

ミスが起きたとき、最初に向けられる空気が「責める」なのか「理解する」なのかで、組織の未来は大きく変わる。ミスを責める風土の会社では、社員はミスを隠す。これは自然な反応であり、責められたくないという自己防衛の心理だ。しかし、ミスが隠される組織は、重大なトラブルが突然発生するリスクが高い。

一方、トヨタで徹底されているのは、“ミスは共有し、みんなで改善するもの”という空気である。「報告しやすい空気」があるからこそ、改善のスピードが速い。ミスを責める空気は組織を崩壊させるが、ミスを分かち合う空気は組織を強くする。ミスを共有できるかどうかは、心理的安全性の試金石である。

「助けを求められる空気」──弱さを見せても大丈夫だという安心感

人は弱さを見せるときに、最も大きな勇気を必要とする。「分かりません」「手伝ってください」と言うことは、決して簡単ではない。しかし、この弱さを晒せる空気がある組織は極端に離職率が低い。

この原則を象徴するのが、スターバックスの“パートナー文化”だ。新しいスタッフが困っていると、誰もが自然に声をかける。これは単なる親切ではなく、「助けを求めていい空気」が制度として根付いているからだ。弱さを見せられる空気、それこそが社員の心を守る。

助けを求められない空気の会社では、社員の孤独感が増幅し、離職へと向かう。
助けを求められる空気の会社では、社員の安心感が増幅し、成長へと向かう。

「未来に希望が持てる空気」──この環境なら成長できるという確信

心理的安全性は現在の空気だけでなく、未来の空気にも関係している。社員は「自分の未来がこの会社にあるかどうか」を敏感に感じ取っている。直属の上司の姿勢、会社の戦略、社長のビジョン──こうした未来の方向性が明確であるほど、離職率は低くなる。

千葉ジェッツが急成長した背景には、監督、選手、スタッフの全員が“未来の希望”を共有していた空気がある。「この組織は必ず成長する」「このチームでなら自分も伸びる」──この確信が空気として流れていた。未来が見える空気は、社員の心に根を張る。

社員が辞めない組織には、必ず“未来の空気”がある。

―3.空気が整った会社ほど、社員が勝手に育ち、勝手に残る

心理的安全性が高い組織では、社員が自発的に学び、挑戦し、成長する。これは社長の負担を大きく軽減する。なぜなら、心理的安全性は「社員の自己効力感」を圧倒的に高めるからだ。自己効力感とは、「自分はできる」と感じられる感覚であり、これが高い社員ほどパフォーマンスが高く、離職率が低い。

ミネソタ大学の研究によれば、自己効力感の高い社員は、転職意向が約40%低下するという。つまり、心理的安全性は単なる“空気づくり”ではなく、人材育成と定着の基盤そのものなのだ。

逆に、空気が悪い会社では、いくら研修をしても社員は育たない。
空気が整った会社では、研修が最小限でも社員は勝手に成長する。

社員を育てるのは研修ではなく、空気である。

―4.社長が心理的安全性を壊す3つの瞬間

どれだけ制度や環境を整えても、社長の言動ひとつで心理的安全性は簡単に崩れる。社長こそが空気をつくり、空気を壊す存在だからだ。

心理的安全性を壊す瞬間は大きく3つある。

・怒りに任せて感情的に叱った瞬間
・社員の意見を遮断した瞬間
・社長の機嫌が日によって大きく変わる瞬間

この3つが起きている会社では、社員の脳は常に緊張状態にあり、空気が冷え込む。脳科学の観点から見れば、社員は“扁桃体ハイジャック”状態に陥り、能力どころか思考も感情も適切に働かなくなる。

社長がまず整えるべきは、自分自身の空気である。

5.空気を整えると、離職率は必ず下がる

透明資産経営を導入した企業で最も大きな変化は、「離職率の低下」である。中には、前年20%を超えていた離職率が翌年5%まで改善した企業もある。待遇を変えていないにもかかわらず、である。

理由は明確だ。空気が整うと、以下の3つが自動的に改善するからだ。

・社員の安心感が増える
・社員同士の協力が生まれる
・社員が成長意欲を取り戻す

空気は見えないが、数字に現れる。
離職率は空気の“体温計”であり、空気が整えば確実に下がる。

―まとめ|社員が辞めない会社は、空気が強い会社である

社員が会社を辞める理由の本質は、仕事ではなく“空気”である。
心理的安全性はその空気の核心部分であり、
否定されない、ミスが共有される、助けを求められる、未来に希望が持てる──
この4つの空気がそろった会社は、離職率が劇的に低下する。

空気は経営資源である。
空気は社長の意思で変わる。
空気が整えば、社員は辞めない。

社員が辞めない組織をつくる最大の秘訣は、制度でも給与でもない。
空気である。
そして、その空気をデザインできるのは、社長だけである。

 

―勝田耕司

 

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