第70号:「うちの業界は特殊だ」という思考が、1人粗利最大化に蓋をする
「シライ先生、うちの業界は特殊なんですよ」初面談の際、サービス業を営むK社長からのお言葉です。
世の中には数えきれないほどの業界や事業があります。
数兆円の市場規模を持つ業界もあれば、数億規模の業界もあり、同じ業界内でも顧客層の違い、商品サービスの違い、売り方や組織活動に違いがあります。
実際、よほど会社名が似ているとかいうことがなければ、消費者はあるA社とB社を「同じ会社」と認識することはまずないでしょう。
ですから、たしかに業界も会社も千差万別であり2社として同じ会社はない、というのは事実です。
しかし、その特殊性に目を向け囚われていることが、実は1人粗利の低さから長年脱却できない根本的な原因だったりします。
業界の特殊性ーー市場が狭い、法規制が厳しい、他業界に転用できない技能が多い、慣行が独特だ・・確かにそれらは事実でしょう。
しかし、それらを並べれば並べるほど、社長の思考は、ある方向に収束していきます。
それは「業界を理解していない人には無理だ、解決策も業界特有のはずだ、結局この会社のことは自分しか分からない」という内向きの収束です。
すると次に出てくるのは、「どこかにウルトラC的な秘策があるはずだ」という発想です。この業界ならではの特別な一手、誰も知らない裏技、それさえ見つかれば一気に状況が変わるはずだ、と。
しかし、1人粗利を高め、組織の生産性を引き上げ、ゆったり大らかな経営をしている社長たちは、まったく違う場所を見ています。彼らは自社や自分の業界を「特殊」だとは考えていません。
むしろこう考えています。何か特別なことが足りないのではない。そもそも、事業として、組織として、成立するために必要なものが欠けているのではないか、と。
300年前の人に「自動車とは何か」を説明するとしたら、あなたはどう説明しますか。
エンジンがすごいとか、特殊なタイヤを使っているとか、そういう話はしないはずです。
エンジンという動力があり、冷却する仕組みがあり、タイヤという進行機能があり、ハンドルという方向制御があり、サスペンションという車体制御機能があり、それらが正しく接続されているから、走る、止まる、曲がる、という成果が生まれるーーおそらく、そんな説明になるでしょう。
要するに、自動車とは「要素」と「接続」で成立している仕組みであり、各要素の特殊性以前に、それらが揃っていなければそもそも走ることができません。
重要なのは、各要素の特殊性ではなく、そもそも必要な要素が揃っているか?、そしてそれらが正しく接続されているか?、という点です。
1人粗利が上がらない会社も、まったく同じ状態です。「うちの業界は特殊だ」と言う社長ほど、エンジンやサスペンションの話ばかりをします。
一方で、ハンドルが機能していないこと、冷却水が入っていないこと、要素同士をつなぐ構造が存在しないことには、ほとんど目が向いていません。
ここで本当の理由が見えてきます。1人粗利に課題がある社長が現状を打破できない理由は、業界が特殊だからではありません。
事業・組織・収益構造の中に、本来備わっていなければ成立しない構造の欠陥があるにもかかわらず、それをパーツの特殊性の問題にすり替えてしまっていること。これが、ほとんどすべてのケースで起きていることです。
1人粗利が1,000万円前後で止まっている会社は、例外なく、本来なければ成立しない要素、あるいは接続機能が欠けています。
能力の問題ではありません。努力不足でもありません。見ている場所が違うだけです。現状を変えるために本当に必要なのは、ウルトラCを探し続けることではありません。
「うちは特殊だ」という見方を一度横に置き、どこに構造欠陥があるのかに目を向けること。その着眼点の転換こそが、1人粗利が増え始める、最初の一歩なのです。
あなたは、これからも特殊性という呪縛の中でウルトラCを探し続けますか?それとも、1人粗利最大化に必要な要素と接続の構造に目を向け、根本的に欠けている構造部分に真正面から手を打っていきますか?
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