透明資産経営|なぜ、和を大切にする会社ほど、じわじわ弱っていくのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー「うちは、仲がいいんです」の裏に、何が隠れているでしょうか
経営者と話していると、誇らしげにこう語られることがあります。「うちは、社員同士の仲がいいんです」「みんな穏やかで、揉め事がなくて」。あなたの会社も、そうかもしれません。social 社員同士が和やかで、対立もなく、雰囲気がいい。会議も、いつも和やかに終わる。誰も声を荒げず、角を立てず、みんなが穏やかに過ごしている。──経営者にとって、これほど安心できる光景はありません。人間関係のいざこざに悩まされることもなく、組織はいつも平穏そのもの。
けれど、ここで一つ、静かに問わせてください。その「和やかさ」の中で、社員は、本当に言いたいことを、言えているでしょうか。それとも、和を保つために、言うべきことを、飲み込んでいるのでしょうか。──もし、後者かもしれないと、わずかでも感じたなら、その感覚を大切にしてください。なぜなら、揉め事のない、穏やかすぎる会社ほど、内側から、じわじわと弱っていくという、見えにくい落とし穴があるからです。
ー「対立のない空気」は、健全さではなく、思考停止のサインかもしれない
多くの経営者は、対立のない、和やかな空気を、健全さの証だと考えています。揉め事がない。人間関係が良好だ。だから、良い組織だ、と。しかし、透明資産の視点から見ると、その穏やかな空気には、二つの、まったく異なる正体があります。一つは、互いに信頼し合っているからこそ、安心して本音をぶつけ合える、本物の和。もう一つは、波風を立てるのを恐れて、誰もが本音を飲み込み、表面だけ穏やかに取り繕っている、偽物の和です。この二つは、社外から見た空気は、そっくりです。どちらも、揉め事がなく、和やかに見える。けれど、その中身は、正反対なのです。
そして、多くの会社で広がっているのは、後者の、偽物の和のほうです。「和を乱してはいけない」という空気が強すぎると、社員は、異論や、耳の痛い指摘を、口にできなくなります。おかしいと思っても、「波風を立てたくない」と、飲み込む。より良い案があっても、「今のやり方を否定するようで気まずい」と、黙る。こうして、和を守るために、本音が封じられていく。
普通なら、和やかさは美点として語られます。しかし透明資産の視点では、あまりに揉め事のない空気ほど、疑ってかかるべきものです。なぜなら、健全な組織には、より良いものを求めるがゆえの、健全な意見の衝突が、必ずあるからです。誰も異論を唱えず、すべてが穏やかに流れていく組織は、仲がいいのではなく、考えることを、やめているのかもしれない。偽物の和の中で、組織は、変化も、成長も、静かに手放していくのです。
ー穏やかすぎる空気が組織を弱らせる、3つの静かな作用
偽物の和が、組織をどう弱らせていくのか。三つの静かな作用をお伝えします。
1つ目の作用は、「改善が止まる」ことです。「今のやり方を否定したくない」という空気の中では、誰も、現状に異を唱えません。もっと良い方法があっても、和を乱すことを恐れて、口にされない。こうして、組織は、改善の機会を、次々と見送っていく。穏やかな停滞の中で、会社は、少しずつ時代に遅れていきます。
2つ目の作用は、「問題が放置される」ことです。誰かの仕事に問題があっても、「指摘したら、気まずくなる」と、見て見ぬふりをする。和を守るために、本来正すべきことが、正されないまま放置される。小さな問題が、指摘されないまま育ち、やがて、大きな問題になって表面化するのです。
3つ目の作用は、「本音が地下に潜る」ことです。表向き穏やかでも、飲み込まれた本音は、消えたわけではありません。それは、行き場を失い、水面下にたまっていく。そして、あるとき、突然の離職や、思わぬ形で噴き出す。表面の和やかさと、水面下の澱み。その乖離が、組織を、内側から蝕んでいくのです。
ー本物の和は、本音がぶつかっても壊れない空気から生まれる
組織が強くなるか、弱るかを分けるのは、対立の有無ではなく、本音をぶつけ合っても壊れない、信頼の空気があるかどうかです。社員が、異論や耳の痛い指摘を、安心して口にできる空気があるか。意見が衝突しても、それが人間関係の亀裂にならず、より良い結論への道になる空気があるか。揉め事がなさすぎるのは、本音が封じられ、偽物の和が広がっているサインかもしれません。本音がぶつかっても壊れない、信頼に裏打ちされた空気を育ててはじめて、組織は、穏やかな停滞から抜け出し、健全に成長していきます。
ー波風を、恐れないでみる
では、経営者は、何を変えればいいのか。和を壊すことではありません。本音の衝突を、恐れない空気を、育てることです。まず、社長自身が、「異論こそ聞きたい」という姿勢を、はっきり示す。穏やかに流れそうな議論に、あえて「本当に、これでいいだろうか」と、問いを投げる。次に、異論を口にした社員を、和を乱す者としてではなく、組織を良くする者として、はっきり労う。そして、意見の衝突が起きても、それが人格の否定にならないよう、「意見は戦わせても、人は尊重する」という空気を、守る。──こうして波風を恐れない空気を育て始めたあなたは、偽物の和を、本物の和へと、静かに変え始めているのです。
ーその穏やかさは、信頼でしょうか、それとも遠慮でしょうか
最後に、お伝えしたいことがあります。組織の和やかさには、二つの種類があるということです。信頼から生まれ、本音をぶつけ合える、強い和。そして、遠慮から生まれ、本音を封じ込める、弱い和。──見た目は同じでも、その中身は、正反対なのです。思い浮かべてみてください。直近の会議で、誰か一人でも、その場の空気に反する意見を、口にしたでしょうか。社員は、おかしいと思ったことを、正直に指摘しているでしょうか。もし、思い当たらないなら、その穏やかさは、信頼の証ではなく、飲み込まれた本音の、静かな堆積かもしれません。
このコラムを読み終えたあなたは、次に会社の「和やかさ」に触れたとき、これまでとは違う目で、それを見つめるはずです。この穏やかさは、本物か、偽物か、と。そして、あえて波風を歓迎し、本音の飛び交う空気をつくりにいく自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。穏やかすぎる空気を疑い、本音がぶつかれる空気を育てる。それが、じわじわ弱る組織を内側から立て直す、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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