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仲良しクラブで終わらせない、良い会社の条件

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

とある現場で、ある社員さんがこう話してくれました。「実は結構難しい仕事で投げ出したくなることもあるんですが、周りが本当にいい人ばかりなので続けられるんです」

なるほどな、と聞いていました。仕事そのものが楽だから続けているわけではない。給料が特別に高いからでも、休みが多いからでもない。大変な仕事であっても、一緒に働く人たちとの関係が、その人を会社につなぎ留めているのだと。

いま、多くの会社が賃上げや待遇改善を迫られています。物価は上がり、人材の採用競争も激しい。給料を上げ、休日を増やし、福利厚生を整える。経営者からすれば、苦しい中でできることはかなりやっているという感覚もあるでしょう。それなのに社員の反応が薄かったり、退職者が出たりすると、「これだけやっているのに」と言いたくなる気持ちもよくわかります。

待遇を整えることは大切です。給料が低すぎたり、働く環境が悪かったりすれば、それだけで人は離れていきます。ただ、待遇には不満を減らす力はあっても、人を長く動かし続ける力まではない、これは定説です。人は給料が上がったり、人にやさしい制度が整備されたとしても、やがて慣れてしまいます。ありがたかったはずのものが当たり前になり、また別の物足りなさが顔を出す。

その点、職場の他の人との関係は少し違います。困ったときに助けてくれる人がいる。自分の仕事を見てくれている人がいる。意見を言っても頭ごなしに否定されない。自分で考え、自分で決める余地がある。こうした感覚は派手ではありませんが、毎日の仕事の中でじわじわ効いてきます。

人は「良くしてもらった」だけでは、必ずしも動きません。それよりも、自分にはここに居場所がある、自分もこの会社をつくる一人なのだ、と感じたときに動き始めます。冒頭の社員さんを支えていたのも、そういう感覚だったのでしょう。

ただし、社員が辞めないことと、会社が成長することは同じではありません。ここで話を終えると、会社は仲良しクラブであればいいという話になりがちです。人間関係が良く、居心地もいい。誰も辞めない。けれど、これだけでは会社として成立しないのは明らかです。関係の良さを、会社の成果につなげる仕組みが必要です。

良い関係は、それだけでは会社の力になりません。けれど、そこに、お客様に届ける自社ならではの価値や、それぞれの役割、迷ったときの判断の物差しがつながった瞬間に、意味が変わります。助け合うことが目的になるのではなく、何のために助け合うのかが共有される。仲が良いから譲り合うのではなく、お客様により良い価値を届けるために知恵を出し合う。そこまでつながって初めて、関係性は経営資源になります。

気持ちは水のようなものです。どれほど良い気持ちが社内にあっても、それを受け止める器がなければ、日々の忙しさの中にこぼれていきます。その器になるのが、会社としての仕組みです。ミッション、役割、判断の基準。これらがあることで、人の善意や信頼が、偶然の助け合いではなく、会社として再現できる力に変わります。

待遇改善は目に見えます。数字でも表現しやすいし、取り組みやすい。一方、関係性や信頼は見えにくく、成果が出るまでにも時間がかかります。地味で、扱いにくいテーマです。それでも、人が留まり、自分から動き、会社の価値を高めていくためには、こちらのほうが長く効くのかもしれません。

さて、あなたの会社にある良い関係を、偶然のままで終わらせますか。それとも、選ばれる会社の力へと変えていきますか。

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