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文化差をビジネスチャンスに

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

「西田先生、日本と外国の文化差についての議論は面白いですね!」

 対面コンサルティングの席で、エネルギー溢れるクライアントの社長がしみじみと言ってくれたコトバです。国際的な資源循環に関する情報の説明に絡めて、日本と諸外国の違いの話をお伝えした時のことでした。

 

 事業の海外展開を考えるとき、誰もが直面する難しさのひとつに「文化差」、あるいは「文化のカベ」と呼ばれるものがあります。たとえば、日本では会議での沈黙は「熟考」と受け止められますが、欧米では「同意」「従属」あるいは「関心の欠如」と解釈される場合が多い。この認識の違いは、日常の小さなやり取りから大きなビジネス交渉に至るまで影響を及ぼします。

 

 確かにこれは難しい問題です。しかし、それがどのような難しさなのかを客観的かつ定量的に把握し、説明することはさらに難しい。文化差について、社会全体で共有された明確な方法論が存在するわけではないからです。

 

 そんな中で、一つのヒントを与えてくれるのが、オランダの社会学者ヘルト・ホフステードによる「多文化論」です。彼は国民性を6つの次元に分けて比較しようとしました。権力への距離の取り方、個人主義か集団主義か、不確実性をどれほど嫌うかなど。その結果、日本は「男性的思考」が強い傾向がある、北欧は「フランク」で平等性を重んじる、ロシアは「権威を好む」といった特徴が数値として表現されました。

 

 もちろん、この分析の客観性や科学的厳密さについては議論の余地があります。しかし「言われてみれば確かにそうだ」と思える部分が多く、むしろ素直にうなずきたくなるのです。ある意味で、血液型性格診断のようなものかもしれません。根拠の厳密性はさておき、自分と違う誰かと折り合いをつけようとする思考の訓練としては、大変有用な道具になるのです。

 

 このような視点は、社会の平和を実現するためにも欠かせません。隣人といかにうまくやり、住み心地の良い社会を作っていくか。すでに都市部では、アジア各国出身の人々と共生しているのが日本の現実です。それはやがて、アフリカを含めた世界各国の人々へと広がっていくでしょう。インバウンド旅行者が世界中から日本にやってきている今、電車や空港ロビーで私たちはすでにその「先行体験」をしているとも言えます。

 

 さらに、急激な人口減少に直面する日本社会は、外国人労働者なしでは成り立たなくなりつつあります。コンビニや介護施設だけでなく、農林水産業、製造業、サービス業のあらゆる現場に外国籍の労働者が普通に働いている。今はまだ少数派であるアフリカ出身者も、近い将来には当たり前の存在になるでしょう。子供の同級生がアフリカ人、隣家がブラジル人、道で会えば日本語で挨拶を交わし、地域の祭りや初詣にも参加する。そんな光景は遠い未来の話ではありません。

 

 この変化をビジネスチャンスとして捉えるならば、企業にとっては新たな成長機会になります。すでに地域の祭りでエスニックフードの屋台が出るようになってきたのは、その兆しの一つかもしれません。食文化は最も身近な形で「異文化との融合」を体験できる分野です。そこに循環経済の要素を重ね合わせると、さらに新しい可能性が開けます。

 

 たとえば、廃棄されるはずの食材を多国籍の知恵でリメイクし、新しい料理として提供する「フードアップサイクル市場」。あるいは、日本各地に眠る伝統工芸の技術を、外国人労働者や移民のデザイン感覚と融合させ、世界市場へ発信する「多文化循環デザイン」。文化差があるからこそ生まれる新しい循環経済のビジネスモデルは、無限の広がりを持っているのです。

 

 つまり、文化のカベは単に「乗り越えるべき障害」ではなく、「新しい価値を生む源泉」にもなり得ます。日本社会が多文化共生へと進むなかで、循環経済もまた進化していきます。社会の変化と循環経済の進展が交わるところに、次の時代を形づくるビジネスモデルが現れる。その未来図を共に描いていきたいと思うのです。

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