知的財産の交渉における経営者のスタンス~社長、事前に決めてますか?
以前、本コラムにて、「知的財産の交渉においては相手の話を「聴く」姿勢が大事である」ということを書きました。
今回は、そこから一歩進め、相手先との交渉に入る前に、経営者が考えておくべきことについて考えてみます。
当然、何も考えずに交渉に臨む経営者などいないと思いますが、知的財産に関する交渉で特に考えておくべきことは2つあります。
まず1つは、「基本線から決してぶれない」ということです。
知的財産に関する交渉は、専門的な知識が必要な場合があり、また非常に時間がかかるものばかりです。まず1回や2回で終わるような交渉ではありません。
また、自社の思い通りになるとも限らず、相手を説得、ときには社内も説得しなければならない場合もあります。その際に必要なのが「ぶれない」ということです。
一見、知的財産交渉はその専門部署に任せて、経営者はタッチしなくてもいいと考えるかもしれません。
しかし、知的財産の交渉においても、その根底にあるのは「自社の経営理念・ビジョンからぶれていないか」というところであり、常にそこに立ち返る必要があります。
つまり、
- この交渉は何のために行うのか?
- この交渉で、自社の理念やビジョンを達成できる(直接的にでも、間接的にでも)のか?
を自らに問わないといけません。
でないと、交渉を進める方向があちらへ行ったりこちらへ行ったりすらばかりでなく、場合によっては「知的財産交渉で金銭を得ること」そのものが目的化してしまうおそれがあるからです。
知的財産の活用とそのための交渉は、あくまでも自社の経営理念とビジョンを達成するためのツールであることを忘れないでください。
もう一つ、経営者が考えるべきことは「落としどころ」です。
これも、交渉の矢面に立つ担当者が考えればいいことと思われるかもしれませんが、
私はそうではないと考えています。
つまり、
- 自社及び交渉相手が時間と経費の浪費を最小限に抑え、
- 双方が納得する形で合意できる条件
を、「落としどころ」として設定しておくことです。
これは一担当者が決められることではありません。
経営者が会社の内部状況と外部状況を判断して決めるべきことです。
この「落としどころ」の設定をしておかないと、交渉はいつまでも終わることなく、
合意にも到達できなくなってしまいます。
「落としどころ」は、交渉の初期段階では誰にも公表はせず、最初はあくまでも
「当社はこの条件から一歩も引かない」という姿勢を経営者自ら見せ、交渉部門にもはっぱをかけて交渉に臨ませることも必要でしょう。
しかし、「機を観て」条件を「落としどころ」へ誘導していくことも交渉の中では必要なアクションです。
「基本線からぶれない」+「落としどころを決める」
この2つが知的財産交渉の基本となります。忘れないようにしてください。
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