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下請け企業の新規開拓が難しい3つの理由

SPECIAL

波及営業コンサルタント

有限会社 日本アイ・オー・シー

代表取締役 

取引先のネームバリューで次々に新規開拓を実現する「波及営業戦略」を体系化した辣腕コンサルタント。特に技術系のメーカー企業や、特殊な加工、取り扱い品、異色サービスなどを手掛けている企業の販売戦略の再設計、大きく売れるようにする仕組みづくりに定評。

『弊社は下請け企業です。技術の売り込みに、波及営業は使えるでしょうか?』

以前、セミナーに参加された方からのご質問です。

下請けの加工業を営んでいる会社で、営業は全くしていない状態。

既存の取引先に、御用聞きをして新規案件を獲得して30年以上の経営をしてきたそうです。

しかし、利益率は低く、発注元の景気が良ければ、たくさん仕事が来るけど、景気が悪くなると、仕事は激減。

ジェットコースターのような経営にストレスを感じ、その悩みを解決するためには、営業の強化が必要と思われたようです。

しかし、営業だけを強化したところで経営の体質は変わりません。

下請体質の新規開拓は、構造的に難しい背景が横たわっているからです。

これは、これまで下請け企業の営業改革のプロジェクトに入ったり、数多のご相談をこれまで何度も受けてきた中で実感した事です。

その新規開拓を困難にしている背景は、3つあります。

1つ目は、期待段階での差別化が困難であること。

2つ目は、要求事項は顧客が握っておりオープンにされないことです。

3つ目は、既存業者への発注は暗黙知が通じるということです。

まず1つ目の期待段階での差別化。

売り手側でのセールス・アピールは「短納期」「高品質」「小ロット生産または大量生産」など、競合他社との“違い”との違いを明確に打ち出すことが出来ません。

カタチがないのですから、ある意味当然です。

「我が社は、違うのです。他社は3日かかるところ、ウチは1日で出来ます!」と言ったところで、買い手にとってみれば「依頼してみないとわからない」つまりお金を払わってみないと、本当に短納期かわかりません。

まぁ、最初は1日でやってくれるだろうけど、持続性があるかどうか、正直言って懐疑的。

そんな不安が、買い手側にあるのは、至極当然のことです。

そもそも論としても「1日納品」なんて、繁閑状況によっては保証なんてできませんから、最初から謳うことはできない…。

だから、問い合わせをしてみないとわからない。依頼してみないとわからないという状態に買い手は陥るわけです。

期待段階での「他社との違い」を表現することが難しい。

これが新規開拓を困難にする1つ目の理由です。

2つ目の要求事項は顧客が握っておりオープンにされないことも根深いテーマです。

これまで幾度か下請け企業の営業改革をお手伝いしてきましたが、「その素材は、どのような利用用途なのでしょうか?」「その部品は何に使われているのですか?」と藤冨が質問すると、大半の社長さんは、「それが分からないのです…」と答えるのです。

これは、ある意味恐ろしいことです。

当たり前のことですが、売上というのは、1件1件の受注の積み重ねです。

その1件1件の受注を決める「見積もり」は、相手からの「こんな事、できますか?」という要求から起算され、そこには「どのような価値があるのか?」は明かされないケースがほとんどです。

「溶接加工をしているけど、これを折り曲げ加工して欲しいんだ」

「今の加工法だと隙間ができるから、これを無くしたいんだ」

などなど、ある程度の「目的」は見えても、要求事項の真の理由までは見えないケースがほとんど。

新規開拓の段階において、要求事項の真の理由がわからなければ、付加価値のある提案もできません。

つまり、商談時において刺さる提案ができないケースがあまりにも多いのです。

これが2つ目の理由。

最後の3つ目の理由は、既存業者への発注は暗黙知が通じるので、担当者は「発注」が楽チンだという事です。

新しい業者に依頼をしようとすると、一から「自社の要求」を説明しなくてはなりません。

そんな余計な仕事は、できるだけ避けたいのが、担当者の心情です。

多少コストが高かろうが、担当者からすれば自分の懐が痛むわけではないので、目を瞑ります。

多少納期に不満があろうが、自分の仕事に火の粉が降りかからなければ、特段騒ぎ立てません。

よほど経営意識の高い担当者以外は、正直そんなものです。

つまり大きな不満がない限り、業者をスイッチしようなんて思わない。

これが新規開拓を困難にしている3つ目の理由です。

これらの壁を乗り越えるためには、足しげに新規見込み客のところに通い、自社の得意分野や実績を知ってもらい、ご用は無いでしょうか?とお伺いを立てるほかありません。

うまく仕事がもらえても、受注価格の主導権は「買い手」が握っているので、もらえる利幅には限界がある。

新規開拓は困難。

さらに、潤沢な利益を会社に流入させる受注は、さらに難しい。

これが「下請け企業の営業上の課題」です。

冒頭にお話ししたセミナーにご参加頂いた社長さんも、この構造的な課題に気づかれ「自社商品を開発し、商品に名前をつけ、価格を自社で決めて販売しないと、強い営業はできないのでは…」と察したようです。

カタチや数字など、目に見える差別化ができれば、下請け構造であっても、まだ強いプッシュセールスは効くかも知れません。

しかし、業界的にそれが難しい場合。

かつ、自社の手のひらで仕事ができる企業になりたい…そう強く願うのであれば、間違いなく、自社商品を開発し、名前と価格を自らが決めて販売するほかありません。

下請けモデルからの脱却は、決して優しい道ではありません。

それでも、構造的な問題が横たわっている限り、いつまでたっても悩みは消えません。

御社は、どこに活路を見出しますか?

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