専門コラム「指揮官の決断」 No.050 アウトドアの勧め

  クライシスマネジメント(想定外の危機への対応) 林祐 SPECIAL
林祐 SPECIAL

クライシスマネジメント(想定外の危機への対応)コンサルティング

株式会社イージスクライシスマネジメント 代表取締役 林祐

経営陣、指導者向けに、クライシスマネジメント(想定外の危機への対応)を指導する専門家。海上自衛隊において防衛政策の立案や司令部幕僚、部隊指揮官として部隊運用の実務に携わる。2011年海将補で退職。直後より、海上自衛隊が持つ「図上演習」などのノウハウの指導依頼を受け、民間企業における危機管理手法の研究に着手、イージスクライシスマネジメントシステムの体系化を行い、多くの企業に指導、提供している。

当コンサルタント開催セミナーがあります。


当コラムは危機管理の専門コラムです。それがいきなり遊びの話を持ち出して来てどうするのかと思っておられる方も多いかと拝察いたします。

アウトドアレジャーと危機管理がどう関係するかと言えば、そこには二つの意味があるからです。

第一は、当然のことながら、アウトドアレジャーにはサバイバルの基本が詰まっており、アマチュアの入門としては取り付き易いからです。

私の小学校時代、冬の楽しみの一つは、庭を掃除して枯葉を集め、焚火をして焼き芋を焼くことでした。しかし、いつの間にか住宅地での焚火は防火管理の観点から禁止され、海岸での焚火も禁止されてしまいました。
 キャンプ場でも直火の焚火が禁止されているところが多いようです。

なぜ焚火が禁止されてしまったのかというと、後始末が悪くて砂や土を痛めてしまうからです。
 しかし、その結果、焚火を経験したことの無い人たちばかりになり、いよいよ後をどう始末すればいいのか分かる人がいなくなってしまいました。

しかし、大規模な自然災害等でライフラインが失われた時、役に立つのは、これらの技術です。
 電気やガスが無くとも火を起こして煮炊きができるという基本的な技術がないと、生き抜いていくことができません。

第二の意味は、自然の中に身を置いてみると、実にいろいろなことを学ぶことができるからです。

私はかなり小さい頃からヨットに乗り、海や船に関心をもってきました。
 ヨットはもやい綱を放した瞬間から自然の中に放り込まれます。海底と自分の間には船底と海水しかないのです。
 ハーバーを出てしまうと、頼れるのは自分だけです。天気が変わるとハーバーに戻れなくなるかもしれません。陸と繋がっている最後のロープを外すのは慣れないと心細い瞬間です。

その心細さの中で人はいろいろなことを考えます。もっとしっかり天気図を読めるようにならなければとか、少しくらい時化てもしっかりと操船できる技量を持たなければ、持久力を鍛えないといけないな、など様々です。

日常生活で、天気予察がしっかりとできなければならないなどと考えることはまずありません。テレビで天気予報を観ればいいだけですし、スマートフォンでも確認することができます。
 しかし、海の上では、周囲のほんの僅かな変化からでも天候の急変を予知できなければ、ハーバーを目の前にして命を落とすことだってあります。

現在はGPSがありますが、私が学生時代にはそのようなものはありませんでしたので、ヨットで海を渡るときには天測ができなければ話になりませんでした。
 光ですら何千年も何万年もかかる遠い星を測って地球上の自分の位置を算出するのです。
 ここで、時間とは何か、地球が丸いということはどういうことなのかなどという始原的な想いにかられるのです。

私は海に出ていましたが、山に登る人々も同様でしょう。日常、街にいては考えることのない、様々なことを考え、様々な気付きを得ながら登っているはずです。

同じく自然の中にいるように感ずることのできるゴルフでは、このような想いに駆られることはまずありません。
 同じパーティの人たちと雑談をしながら回っているだけなので、それはそれでとてもいい気分転換ではありますが、大自然の中にいる自分を感じることはできません。

しかし、ヨットに乗って海に出たり、山に本格的に登ったりすることができるということは、よく考えるとかなり贅沢なことなのかもしれません。

ヨットに乗るためには、ハーバーが近くにないと大変ですし、最初は誰かに教えてもらわなければなりません。
 山に登るのは、手近なハイキングコースから始めればいいのかもしれませんが、しかし本当に登るのなら、しっかりとしたトレーニングを受けることが必要でしょう。どちらも、しっかりと基礎を身に付けておかなければ、命を落とす危険のある行為です。
 都会の真ん中で一生懸命に働いている多くの方々には、時間的にも贅沢なことでしょう。

しかし、何もプロになる必要はありません。また、最初は何が自分に向いているのかもよくわからないでしょう。もっと手近なところで始めて、自分が本当に面白いと思えるものが何なのかを発見していくプロセスも楽しいものです。

そのためには、時々、都会の喧騒から離れて自然を感じ、その中で自らを省みる機会を得るというところから始めればいいのです。

いきなり都会の喧騒から離れてと言われてもどこへ行っていいかわからないという声も聞こえそうです。
 近くに歩き回れる海岸や森があればウォーキングから始めるという手もあります。

私は湘南に住んでいますので、海も山もすぐ近くにあります。
 本格的な登山をするような山ではありませんが、歩き続けると4時間くらいかかるハイキングコースもありますし、同じ市内にあるオフィスに歩いて行くときには、海岸線をしばらく歩いてから里山のような景色の中を通ってオフィスに到着します。これだけでも非日常の間隔を味わうことができます。

しかし、これもそのような地域に住んでいるからできることであり、都内23区、特に山手線の内側などにお住いの方々にとっては、JRで1時間かけなければできない贅沢かもしれません。

お薦めは、外で一晩過ごすことです。
 最近はアウトドア用品が恐ろしいほどに安く売られています。2~3人用の小さなテントなどは3000円程度で買うことができます。(ちなみに、2~3人用のテントで2~3人が寝ることはできません。1人で使うのが快適なサイズです。)

これを庭に張って、夕食を家の中で食べたら、懐中電灯とウィスキーのボトル、グラスを持って潜り込み、肩の凝らない本などを読むか、好きな音楽を聴くかしながら寝るという経験をしてみることです。
 マンション暮らしで庭などないよ、という方はベランダか屋上でいいでしょう。

やったことのない方は、騙されたと思って是非一度お試しください。
 これだけでも、普段家の中では考えることのない、実に様々なことを考えるようになります。テントの薄い布一枚外は自然なのです。
 これがアウトドアへの第一歩です。
 何事も第一歩を踏み出すのがとても勇気が必要で大変で、特に自然の中に出て行くというのは結構荷が重いのですが、この方法はご自宅の庭やベランダで一晩寝るだけのことで、その第一歩を踏み出すことができます。

あとは、何回かやってみて、家から離れたところで一晩過ごすには何が必要なのかを考え、少しずつ距離を伸ばし、それに応じて、少しずつ必要なものを調達していけばいいのです。

最初から大掛かりなアウトドア料理を作るコンロやテーブルと椅子のセットなどを一挙にそろえる必要などまったくありません。

雑誌やパンフレットに騙されることなく、本当に自分のスタイルに必要なものを見極めて揃えていくという態度を取らなければ、アウトドアを本当に楽しむことはできません。
 次々にいろいろなものが欲しくなり、揃えるだけ揃えて、ついには家が一軒移動しているようなキャンプファンを見かけることがありますが、何か勘違いしているように思われます。

アウトドア料理にしても、家でも作ったことのないような贅沢なご馳走を作る必要は全くありません。何を食べても美味しいからです。

最初は外で一晩過ごすことだけを目的とすれば、準備が簡単です。
 無理に料理など作らず、弁当を持って行き、しかし、お湯だけは沸かしてコーヒーや紅茶を楽しむ、そんなところから始めればいいでしょう。

慣れてきたら釣りをしてきたり、山菜やキノコを集めて帰るようにすれば、野外生活のバリエーションが増えていきます。

大切なことは、いろいろと御託を並べるのではなく、とにかく野外に出ること、そして自然の中でいろいろなことを考え、気付くことです。

それを繰り返していく過程で、基本的なサバイバル技術が身に付いていきます。
 また、自然と人間の関わりなど、普段あまり考えないようなことについて、思いを馳せることになります。
 私たちはプロの登山家でも陸上自衛隊のレンジャーでもありません。無理をせず、楽しみながら淡々と取り組めばいいのだろうと思います。

 


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「経営者のためのクライシスマネジメント」~元海上自衛官が教えるクライシスマネジメントとは~
林祐

クライシスマネジメント(想定外の危機への対応)コンサルティング

株式会社イージスクライシスマネジメント代表取締役

林祐

執筆者のWebサイトはこちら http://aegis-cms.co.jp/

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