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日本でいちばん大切にしたい会社の伝える力

SPECIAL

成長支援部づくりコンサルタント

ヒーズ株式会社

代表取締役 

会社の大元となる「総務」を革新すれば、すべての事業部に影響を与え、顧客志向になり、驚くほど業績が伸びる。経営者が着手すべき、「成長支援部づくり」を指導。

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「社員に言ってもなかなか指示通りには動いてくれない」

経営者がよくおっしゃるお悩みの一つです。


 けれども、先日ある中小企業を訪問した際に「伝えるってこういうことなのか」と改めて痛切に感じたことがありました。


 お伺いしたのは、日本理化学工業株式会社さん。ベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」で一番最初に紹介されている会社です。創業は昭和12年という老舗の会社で、学校で使われるチョークが主力商品です。


 最近でも老舗のチョークメーカーが廃業するなど、チョークの需要が減っている中、80年近く事業を続けているだけでもすごいことです。でも、日本理化学工業さんがもっとすごいのは全体の70%以上が知的障害のある社員さんであるということ。


 大山社長のお話をお伺いした後、工場見学をさせてもらったのですが、そこでは障害をもった社員さんが一心不乱に目の前の仕事に集中されていました。


 もちろん、機械は導入されていますが、意外と多い手作業の工程。でも、全員が全員ムダ口一つ聞かずに自分に与えられた仕事を黙々とこなしている職人さんです。


 大山社長によると、最初の頃はどうやって伝えるかに相当苦労されたそうです。

チョークの長さは〇〇ミリから××ミリの範囲内に収めると教えてもその数字をすぐに忘れてしまう。そして、いったん「分かりました」と理解を示してもしばらく経つと間違った作業をしてしまう。

健常者であれば「マニュアル通りにやれ!」の一言で済む仕事が相手の理解レベルやスピードに応じて本当に分かるまで伝えきらないと思ったように仕事をしてくれません。


 そこで、日本理化学工業さんでは「人を工程に合わせるのではなく、工程を人に合わせる」ということを実践されています。


 例えば、先のチョークの長さを図る工程にしても、普通はものさしで長さを測るのですが、特別な工具を作って「この溝にチョークを入れてこの印からこの印までの範囲内だったらOK」という工程に変えています。

すると、仮に社員が〇〇ミリから××ミリという基準の数値を忘れてしまっても、規格に合ったチョークを検品することができるようになっているのです。


 おそらく並大抵の努力ではなかったかと思います。また、普通だと「そんな面倒なことをしなくても」とついつい安易な方法に頼りがちです。しかし、会社にはそういった地道な作業を一つひとつ積み重ねる力強さがありました。

そして、なんと言っても目指している目標の高さが普通の会社とは全然違います。


 言った通りにやらなかった社員に対して、「何回言ったら分かるのか、何度も同じことを言わせるな!」と怒鳴る経営者もおられます。でも、その何回は1回であったり、せいぜい数回であったりすることことが少なくありません。


 大切なことは相手が分かるまで手を変え品を変え伝える。伝えきるには経営者の並々ならぬ覚悟と粘り強さが必要です。

 日本でいちばん大切にしたい会社を陰で支えているのは伝えることの難しさを何としても乗り越えようとする企業努力であることが分かった会社訪問でした。

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