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『後継社長の「使命」とは?』

SPECIAL

バトン承継コンサルタント

承継イノベーション研究所(株式会社think shift)

代表取締役社長 

これまで後継経営者を100名以上支援・指導し、自身も後継経営者として実績を出してきた、後継者支援の実績と後継経営者としての経営実務の実績とをあわせ持つ、バトン承継コンサルタント。
後継経営者が「ただ」事業を引き継ぐだけではなく、「自分らしい」経営を行うことで経営の革新を引き起こす、「承継イノベーション」を提唱している。

バトン承継コンサルタントの浅野泰生です。
いつも記事を御覧いただきありがとうございます。

今回の記事は、講演でお話する際に考えたことをお伝えいたします。
経営の目的とはなにか、経営者として、後継社長としての「使命」とはなにかを改めて考えました。

人が辞めないことははたしていいこと「だけ」なのか?

年初にとある業界団体で、久しぶりに対面形式で講演をする機会をいただきました。

オンラインでのセミナーでは、「伝わっているか」不安なままお話しすることが多かったのですが対面形式ではお客さまの顔を見ることができ、やはり対面形式での開催はいいなと思いました。
そのような目の前のお客さまの反応を見ながら講演を進めていくうちに思い出したことがあります。
当初話す予定にはなかったのですが、ある会社のこと、「会社はなぜ成長しなければならないのか?」についてを講演の中でもお伝えすることにいたしました。

これまで300名以上の後継社長・後継予定者から、私は直接話を聞いてきました。

3年ほど前に会った後継社長との会話です。
彼は、都内で印刷業を営む会社の2代目でした。承継して10年、パート・アルバイトを含めて20名ほどの規模です。

経営の状況や近況を聞くうちに社員の定着率の話題になりました。
その話題のなかで、「御社は最近離職はありましたか?」ときくと、彼は得意げに「継いでから誰一人として辞めていない」と答えました。

継いでから、10年間で誰も辞めていないことは、本当に素晴らしいことだと思いました。

社員が辞めるときの理由はさまざま、経営者も複雑な感情が入り混じる場面ではありますが、少しの間でも一緒に仕事をした仲間が辞めていくのは淋しいものです。

問題だと感じたのは、承継してからの業績の話題に及んだときでした。

「この業界も厳しくて、売上は10年間ほぼ横ばいです」と、先ほどの得意げな表情はさすがにありませんでしたが、売上が伸びていないことを悪びれる風もなく語ったのです。
どことなく外部環境のせい、景気のせいとでも言いたげにも感じました。

さらに聞くと、離職はないものの、この10年間で一人たりとも採用していないとのことでした。

後継社長としての使命は社員が辞めない会社ではない

もちろん社員が辞めていく状況を是とするつもりは毛頭ありません。
ですが、社員が辞めないという一点だけを捉えて称賛することは間違いだと思いました。

後継社長が死守すべきこと。
それは継いだ会社を潰さないことです。

その大前提のうえで、継いだ会社を成長させ、ついてきてくれた社員やその家族を、物心ともに幸せにしていくことが、後継社長の「使命」です。

10年間、同じメンバーで業績も横ばいということは、どういうことでしょうか。
おそらく社員の待遇も10年間、何も変わっていないということなのです。

人間は誰しも一年に一つずつ歳を取ります。
当然この会社は、辞めていない社員が全員が10歳ずつ歳をとったわけです。

定年後に継続雇用されている方であればいざ知らず、若い世代の社員が10年ものあいだ給料が上がっていないとしたら大問題ではないでしょうか。

このとき私は、社員の定着を目的にしてしまっては、手段が目的化してしまうことに気づきました。
経営者は、会社の成長を優先しながら、結果として社員が辞めない状態を理想とすべきです。

経営者が会社を成長させなければならない理由は、会社に貢献してくれる社員をより幸せにしていくため。
これは経済的な幸せだけを指しているのではありません。
会社の成長は社員のやりがい、待遇両面を向上させるものだからです。

もちろん、経営者には様々なスタンスがあります。すべての人に、私の考えが当てはまらないかもしれません。
ただ、私自身はこれからもこの考え方をもとに成長を目指し、また、成長を強く望む後継社長に多くの時間を使っていくつもりです。

 

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