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『現代庭づくり』考

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

国旗と気候

 

オリンピックの開会式を見ていて、初めて見る国旗が多いなと思いました。
子供の頃、世界各国の国旗の書かれたカードゲームにはまっていた時期がありました。学校の授業はぜんぜん入ってこないくせに、このゲームのおかげで国旗は頭に入っていましたので明らかに「これ見たことない」というのがたくさんあるのが気になったのです。(といってもだいぶ古い情報ですが)

その中でもアフリカ大陸のあたらしい国々が特に気になりました。アナウンサーの説明を聴いていると分離独立した国や、国名が変わっただけの国などあたらしい国旗の事情は様々のようでしたGoogleで見てみるとアフリカ大陸でも海(港)のある国とない国、緑のある国とない国が歴然としていて、そこに地下資源があるかないかによって国の豊かさや成り立ちが決定づけられているようでした。(このコラムのトップ画像をご参照ください)

オリンピックは「平和の祭典」と言われる国際行事ですが、多くの場合あたらしい国旗は長年の争いの末に獲得されたものであり、独立後もなお火種をかかえる国も多いのが現実のようです。そして、同じ国の中でも緑色の部分と土色の部分に分かれている国もあったりして、国じゅうどこに行っても緑豊かな日本と環境が違うことは一見してわかります。

国土に豊かな緑があり、多様な植物に囲まれることが容易に実現できるわが国の環境はとても恵まれていると言えそうです。開会式の演出はともかく、海外の人から見た日本という島国への印象は我々日本人の感覚とは異なるもので、また国ごとにそれぞれ違ったものであるはずです。

 

↑新しい国旗がたくさんあることに気がつきました。

媒体の変化

 

あるクライアントさんを訪ねていた際に「こんな本は見たことありますか?」と見せていただいたのは、GREEN is という商店建築社からの増刊誌でした。2019年から年に一冊出版されている「植物と空間デザイン」をテーマとした本で「空間デザインに、そこにしかない体験が求められている今、自然や植物がこれまで以上に取り入れられている。そう感じたのが本誌をつくるきっかけでした。」と創刊号に書かれていました。

雑誌などの紙媒体は、ご存じのとおりインターネットコンテンツの発展によって年々発行部数が低下している分野ですが、あえて「植物が人にもたらすもの」をテーマにしてあたらしい雑誌が出てくるというのは世の中の大きな流れなのでしょう。

 

↑GREEN is 商店建築社 (現在のところvol.3まで出ています)

 

鹿児島から東京や大阪、名古屋などの大都市に出向いていく際に感じることですが、地元鹿児島よりも大都市圏のほうが多くの緑が配置されていて、日常身近に多様な植物と接することを楽しめるようになっています。緑豊かな南国鹿児島ですが、いざ建物の中に入ったり地下に降りていってしまうと、植物の緑から自然を感じる度合いは大都市圏のほうがずっと強く、実際の都市環境と逆転しているような感じがします。

地方に比べると「より地価の高い場所で、より多くの人が利用するので、より多くの予算をかけてつくったり維持したりできるから」という原則はあると思います。しかし、植物を身近に置いて日常に癒しや豊かさを取り入れる考え方は古くから日本にはあるもので、江戸時代には庭を持たない多くの庶民でも身近な園芸を楽しむ暮らしがありました。広い庭がないからこそ、切実に日常をよりよくする「発想」や「工夫」が生まれ発展したものと思います。

小さな敷地の戸建て住宅、マンションなどの集合住宅が多数を占める現代の日本でも、庶民の暮らしぶりの「本質」は18世紀半ばの江戸とそうは変わらないのかもしれません。

 

↑江戸時代の長屋でも鉢植えは大流行していたそうです

 

いっぽうweb媒体はどうかと言いますと、対象は一気に拡大し地球上の実例をいつでも誰でも見れてしまうようになりました。紙媒体しかない時代には一冊数万円といった洋書を買ってこないと見れなかったような写真が全部タダです。そして、情報へのアクセス権はプロも素人も同じく与えられていますから、熱心な者勝ちです。むかしのようなプロならではの情報収集のアドバンテージはほとんど無くなってきました。

自分たちが暮らす周辺の環境は大きく変化していないのに、触れることのできる「実例」や「情報」のみが地球規模に拡大してしまったのがweb媒体の状況です。情報分野は便利になったものの、それに反して見よう見まねでなんでも手づくりしてしまう江戸時代とは違ってリアル世界での「器用さ」は失われつつあります。そういった社会で、プロのつくり手は本来いっそうの精進を求められるはずです。

 

↑webでは地球上あちこちの実例が見れます(気をつけないとCGの場合もあります)

 

 

住まい手とつくり手の困惑

 

生き物である植物には原産地などのルーツから来る、それぞれに適した環境が違っています。ネットで見つけた実例がそのままでは日本の環境に適合しないことも多々発生します。このあふれんばかりの見た目の「実例」や「情報」につくり手の対応力が追いついていないのが当然の現状です。特に住宅においてはつくり手が植物を取り入れたデザイン能力や、生き物としての植物の知識を持ち合わせていることは極めて稀です。

そういう時勢柄、住まい手からwebで見つけた「実例」や「情報」を提示され要望されることが、つくり手にとって「恐怖」であったり「苦痛」になってきているのです。いろいろと要望を言われても現実の環境下で実現する術もわからないし、商売としてのリスクも取りたくないからです。安価・短工期・わかりやすいとのメリットを推して「規格住宅ばやり」なのはこういった一面も手伝ってのことでしょう。

となると住まい手はどうなるのでしょう。より多くの予算を準備して「能力者」を探すか、自力でなんとかがんばるしかありません。(DIYやセルフリノベーションは何もあたらしいことではなく江戸時代でも盛んでした)小さい空間でも身近に植物を取り入れて豊かに暮らすというニーズは、ずっと昔からあります。しかし、そういう視座で住まいを提案し実現できるつくり手があまりいないというのなら、そこをなんとか我々住まいづくりのプロである「つくり手」が埋めていかねばなりません。

生き物である植物を活かして居心地をつくるには、土地は土木屋さん、住宅は建築屋さん、庭は外構・造園屋さんと「順次なりゆきで出来上がってしまった状態」に合わせて考えるやり方ではうまくいきません。(多くのケースで単なる「添え物の庭」になってしまいます)完成後の人と植物双方の「居心地」を設計して、実際にそうなるように逆算して造成したり建築したりするのが理想です。結果として通常の思考プロセスと逆になります。これは、まさに弊社の「得意」とするところです。

せっかく世界の人が羨むようなバラエティに富んだ植生の国に生まれたのですから、緑豊かな暮らしをしないともったいないではないですか。

 

社長の会社では室内の緑や、庭の緑と一体となった暮らしの提案をされていますか? 紹介した外構・造園業者さんに引渡し後工事として、丸投げ・おまかせですか?

 

 

 

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