オンラインで優れたコンサルティングを活用する!

『おひとりさま』考

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

『おひとりさま』とは?

 

「おひとりさま」という言葉は、フードジャーナリストで日本のストーカー研究の第一人者だった 岩下久美子さん が提唱したといわれています。通常は「1人客に対する呼称」ですが、2001に出版された著書「おひとりさま」(中央公論新社)で「個の確立ができている大人の女性」といったポジティブな定義をされました。

新築のお客様の中でもそういった感じの方は少数いらっしゃいましたが、マンションリノベーション事業の立ち上げの際には多くの「おひとりさま」に出会う経験をしました。マンションリノベーションを施したモデルルームを完成させて開催した見学会来場者の多数が、女性おひとりのマンション住まいの方々だったのです。そのマンションは当時でも築30年以上の建物でしたが、居住者の多くが「おひとりさま」だったのです。(大先輩の女子もいらっしゃいましたが)

それまでは新築の営業の仕事を長くしていましたので、やはり子育て中のご夫婦の比率が圧倒的に多く世の中の変化にほとんど実感としては気づいていませんでした。同じエリアでの同じ会社による住まいの見学会であっても「新築」か「マンションリノベーション」かではお見えになる客層は全然違っていたのです。実際に見学会をやってみる前は「土地から求められる新築の見込客を、より資金的にハードルの低いマンションリノベーションが喰ってしまうのではないか?」などと変な危機感を持っていたりしていたのですが、とんだ見当違いであった訳です。

2030年 全人口の約半数が「おひとりさま」に

 

2017年に出版された本に、2030年には全人口の約半分が「おひとりさま」になるという内容が書かれていました。読んだときには「えー。そんなことないやろう」と思ったのですが、どうもそういう方向で世の中変化し続けているようです。

 

↑2030年の配偶関係別人口予測

 

毎日新聞出版 牛窪 恵 著 「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー より

 

「えー。そんなことないやろう」と思っていたのですが、この統計グラフを見てみると「おひとりさま」は女子に限らず男女あわせての全世代合計のデータでした。そして、未婚29%、死別・離別18%とあります。既婚であっても離別することもありますし、みんなやがては死別するのでしょうから平均寿命が長くなっていることもあり「おひとりさま」が増えるのは納得です。2030年というと少しは先の話ですが、50歳になった時点での未婚割合は現在でもかなりの水準になっています↓

 

↑50歳時の未婚割合は現在でも男性で4人に1人、女性で6人に1人の水準に

 

平成30年版 厚生労働白書 本文掲載図表より

 

 

50歳時の未婚割合は、この35年間で男性は6倍、女性でも4倍を超えているようです。これも仕事上では接点が少なく、これまではあまり実感することがありませんでしたがすごい変化です。しかし、どうしてここまで未婚比率が増えてしまったのでしょうか?共働き世帯比率の変化も見てみます。

 

↑この40年と現在では共働き世帯比率はちょうど反転していたのです

 

平成30年版 厚生労働白書 本文掲載図表より

 

 

こちらのグラフを見てみると、この40年間で専業主婦世帯と共働き世帯の数字が入れ替わっています。1980年頃には共働き世帯は専業主婦世帯の約半分でしたが、現在では専業主婦世帯が共働き世帯の約半分です。これには実感があります。1980年といえば高校生だった頃ですからそんなに大昔ではなく、ついこの間のような気がしてしまいますが。あらためて数字で見るとすごいですね。「どっちみち共働きなんだったらひとりでいいや」ということで「少子化」も加速しているのでしょうか?

40年経てばみんな同じく40歳をとっているので日本で人口比率の多い、いわゆる「団塊世代」(1947〜49年生まれ)も、その子供たちである「団塊世代ジュニア」も40年スライドしていっています↓

 

↑日本の人口構成上最後のボリュームゾーンである「団塊世代ジュニア」世代(1971〜74年生まれ)はまもなく50歳台に突入

 

平成30年版 厚生労働白書 本文掲載図表より

 

 

40年あまり後の2065年には「団塊世代ジュニア」世代がほとんど亡くなってしまいます。そうすると、日本の人口ピラミッドは大きなピークのない構成になる予測です。しかし、高齢者比率が上昇したまま高止まりしているのがやはり気になります。新しい技術を生かして、苦労はあっても苦痛なく永く働ける社会にしていかなかればいけません。歳を経てもなお、誰かのために働ける社会は人類の理想です。

 

常に新しい「不満」があり「仕事」になる

 

先日、美容師の娘に勧められて「ソフト整体」を予約、ほぐしてもらってきました。娘も現在は「おひとりさま」です。仕事柄か親よりもずっと「自己投資」が上手で、いろいろ試してみては良かったものを勧めてくれます。ホットペーパービューティーのサイトから予約をしたのですが、翌日「男性の一見さんは予約できません」といった旨のキャンセルメールがきていました。

「娘からの紹介です」と返して娘からもメッセージ入れてもらったら晴れて予約受付けとなりました。やりとりしていたのは、夜の11時から朝10時ぐらいまでの間でした。「ソフト整体」の方はひとりでされているようでしたが、ホットペッパービューティーの予約サイトやLINEを活用されているので「営業時間外に全て完了」でした。今どきな感じです。これがアナログの大手の整体院みたいなところだったら、連絡がつかなかったり返信が遅かったりしてイライラしてたかもしれません。

その整体サロンではまず最初に「足湯」サービスがあって、「足湯」で脱力しているあいだに日常の様子を聴き取りしたり、姿勢の癖を見たりしてくれます。「ソフト整体」施術中には「お父さん、カチコチですね」と言われつつ、いろいろなお話を聞かせてもらいました。

その方は元美容師さんで10年ほどされていたそうです。美容師はどうしても立ち仕事で、ハサミを持っての偏った姿勢が多くなるので筋肉のバランスが崩れやすいのだそうです。美容師時代に体がキツくなって、筋肉のバランスを整えるために整体に通いだしたのがきっかけで「整体師」が本業になってしまったとのことでした。10年間の美容師経験が、そういった忙しく働くお客様への共感をもたらしていると感じました。10年間キツい仕事でがんばっていたからこそわかる事があって「共感」を生むのですね。だから娘も安心して体を委ねることができるのでしょう。

「整体」と言っても最近では「美容」や「体型改善」といったニュアンスが強く、若い働く女性が主な顧客層のようです。しかし、実のところは色々なお客様が来られるそうです。

ある日、お母さんと小学生の男の子がやってきたそうです。お母さんの予約でしたので、整体する間「男の子に何して待っててもらおうかなと思っていたら、整体するのは小学生のほうだった!」ということがあったそうです。その子は特にスポーツをやっているという事もないそうですが、定期的に通ってくるみたいです。「小学生がそんなに筋肉凝ったりしないでしょ?」と言ったら「彼は彼なりに色々ストレスがあるみたいで、リラックスしにくるみたいです」とその整体師さんは淡々とおっしゃっていました。そういう子供のお客さんも都内ではそんなに珍しくはないそうです。

 

↑ホットペッパービューティー(検索・予約サイト)の画面(よく見たらレディースとメンズでページが分かれていました。そして「整体」はリラクサロンというカテゴリーで呼ばれているみたいです)

 

牛窪 恵さんの「おひとりウーマン」消費!という本にも書いてありましたが、最近の消費構造はそんなに画一的に収入や年齢や性別などの属性ではくくれないものになっているようです。SNSの存在により一見「同調圧力」が高まっていて価値観が画一化しているようでいて「自分が良ければ良いのだ」という独自感覚が強く、消費の現場では「多様化」というか「その人がOKならなんでもあり」の傾向もどんどん進行しているようです。なるほど。たまには、行ったことのない店に行ったり、受けたことのないサービスを受けてみたりするのも大切な事のようです。

 

社長はご自身の理解できる範囲だけで御社の仕事領域を捉えていませんか? 自分とは違うけどこれから増えていく不満、望まれる仕事に「研究対象」として目を向けていますか?

 

 

コラムの更新をお知らせします!

コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。