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システム運用の間違ったがんばり方

SPECIAL

工場の自動化経営コンサルタント

株式会社さくらブルー

代表取締役 

 社長不在でも社員だけで現場が回る仕組み構築により、社員だけで利益を出す「工場経営の自動化」のノウハウを提供する、経営コンサルタント兼2代目工場経営者。工場経営の傍ら、がんばる中小工場経営者向けに、経営コンサルタントとして工場経営の指導を行う。「工場経営の自動化」により、現場は社員に任せ、次のビジネス展開に専念する経営者を多数輩出。

「うちの社員は、自主的に朝早く出勤して生産の準備を始めたり、遅くまで残り次の準備をしてくれる」

こんな昭和な空気を感じる言葉を久しぶりに聞く機会がありました。

電子部品製造の工場で、ベテラン社員が非常に元気な会社でした。

ベテラン社員だからといってPCが使えないとか、システム導入されていないとかそのようなことはありません。逆に、紙の資料はほとんどなく、情報はグループウェアで共有され、管理職は全員ノートPCを使っていて、現場社員用にも2~3人に1台くらいの割合でPCやタブレットが備え付けられています。

このようにIT化が進んだ工場ですので、さぞかし業務効率化が進み、生産性の向上ができているのではないかと思っていたのですが、この工場の社長から冒頭の言葉を聞いたのです。

この社長にとっては、システム導入で業務効率化でき、社員が仕事優先で「がんばる」姿。この両方があることで強い会社になったように思っておられたようです。

システム導入が進んでいて生産性の向上ができていれば、わざわざ朝早く出勤するとか、遅くまで残って作業をするとか、そのようなことが不要になっていなければいけません。

企業が強いかどうか、良い会社かどうか、最終的には「人」によるところが大きいのは間違いありませんが、システム導入したのに、朝早く出て遅くまで残っていないといけないなんて、システムが有効に使えてないんじゃないの?と言いたい口を押え、

「社員のみなさんの反応はどうですか?」

「朝と夕にやっている準備って、社員のみなさんは具体的に何をしておられるのですか?」

という質問をしてみました。

社員のみなさんの反応は、

「私が考えるシステム導入の必要性を理解してくれて、導入はスムーズだった。運用開始後も生産状況がPCでわかりやすくなり、社員に都度確認する必要がなく、効果を感じている」

社員のみなさんがやっている作業は、

「倉庫在庫の数量を把握したり、生産実績や現場に残っている生産中のものを確認したり、作業者がすぐに生産に取り掛かれるように必要な材料を生産ラインに準備したり・・・」

たしかに、そんなにやること残っていたら帰れない。

そもそもシステム導入の目的やシステム導入後の業務の姿、社員の動きはどうなる予定だったのか?と聞いてみると、社長から言葉が出て来なくなりました。

結果的には、システム導入のきっかけは、自社の業務が紙だらけでアナログ作業ばかり。世の中からのDX化しなければならないというプレッシャーを感じていたところに、「○○補助金があるので、ほとんどお金をかけずに自社のシステム導入可能です!」というITベンダーからのお誘い。

システム導入失敗に向かう、よくある入り口です・・・。

システム導入自体は勝手に終わります。問題はその後の運用です。

運用とは、システムが不具合なく稼働するかどうか、インプットとアウトプットに問題はないか、社員が操作を理解しているかなど、システムが機能的に動くかどうかというものではありません。

システムによりアウトプットされたものを、現場の社員がどのように使うか、データを見て自分は何をすればよいのか、どう動けばよいのかを社員一人一人が理解して実行できますか?ということです。

冒頭の例では、システム上在庫数量の把握はできるものの、そのデータを信用できないのか、結局現場の中を走り回り状況を把握していました。

さらに、現場の管理者は生産計画自体まともに立てられず、管理者の頭の中にある基準による判断、あるいは思い付き?と思われるような指示により、とにかく納期に間に合うように生産するということは変わっていないのです。

これまで紙ベースでアナログ作業をしていたのですから、それが管理者の体に染みついています。アナログ作業だけで生産計画をキッチリ立てるのも不可能ではあるけれど、それを急にシステムを使って管理しろと言っても無理な話です。

システムからアウトプットされた情報をどのように使うのか、これはアナログ作業のときと「がんばり方」が変わります。

アナログ作業の時は、手足を使い、時間をかけ、動き回り額に汗をかけば、なんとか業務を回すことができました。

しかしシステムを使うようになればそうはいきません。なぜなら、システムでは人には到底及ばない情報量を人には到底理解できないスピードで処理してしまうからです。

現場を走り回って情報を集め指示を出すということは、システムがやっていることをわざわざ手足を使ってやろうとしているということになってしまいます。

同じ管理者で同じ仕事内容であっても、システムを使うようになれば、作業内容が変わります。

この作業内容を明確にし、だれもがその作業をできるようになって、はじめてシステム運用がうまくいった、と言えるのです。

このときに、手足を使わず、脳みそに汗をかかなければいけません。

「がんばるな、考えろ!」 です。

この社長は、システム導入の必要性は理解していたものの、結局どうなることが正解なのか悩んでいたようでしたが、この件で、導入で終わっているシステムを、運用に向けて動き出す、と言ってくださいました。

あなたの会社には、システム導入により困っている社員がいませんか?

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