循環経済と脱炭素
もう何度もこのコラムでお伝えしてきた話ですが、来年から日本でも二酸化炭素排出量の取引市場が本格的に開設されることになり、大手排出事業者の参加が義務付けられることになりました。平たく言うと、CO2に値段が付く時代がやってくるのです。
その中で注目されているのが、リノベーションやメンテナンスに関するビジネスです。建物は解体・新築するよりも、リノベーションしたほうが圧倒的にCO2排出が少なくて済むという点がミソです。大型の商業施設だと、数千万円~億単位でコストが違ってくる場合も出て来そうです。
価格よりなにより、そもそも全社的にCO2排出量を減らさなくてはいけない大手排出事業者にとっては、そもそも選択の余地すらあまりない、ということになるのかもしれません。だとしたら、営業マンがやることはほぼ見えていて、「リノベの場合と新築の場合でどのくらいCO2排出量が違うのか」を可視化してお客様に提供することだと言えるのではないでしょうか。
解体・新築からリノベとメンテナンスへ。これは循環経済が目指す新しい経済の姿そのものに他なりません。銅を含む枯渇性資源の残余埋蔵量が不安視されたり、素材メーカーによるCO2排出量が主犯扱いされてきた経緯も含めて、規模は小さいかもしれませんが一つの解決策を示してくれていることになるのです。
どうしても解体しなくてはいけないものについては解体を。そのうえで資源はしっかりとリサイクルを。その部分のトレサビや、環境貢献度についてもキチンと査定するだけの目配りができたなら、顧客からも行政からも、果ては社会全体からも感謝されること間違いなしだと言えます。
さらに言うと、目立ちませんが最近は、市場においてリサイクル素材への忌避感が弱まっているということにお気づきでしたでしょうか?これは、市場のチャンピオンが消費者からサービスプロバイダーへと移ってきていることと無縁ではありません。古いビジネスモデルにおいて、コストを払うのは常に消費者でした。「お客様は神様です。」と言うコトバが表す通り、たとえそれが合理的でもリサイクル材は忌避され、「やっぱり新品が安全・安心」と言う声にビジネスは勝てない時代が長く続いたからです。
それが新しいビジネスでは、コストを負担するのはサービスプロバイダーで、消費者は提供される無料サービスをエンジョイするのが主な役目となりつつあります。そうなると、コスト負担者であるサービスプロバイダーはビジネスの合理性を優先させますので、安全・安心の担保に責任を持てる範囲で最も合理的な選択肢、すなわち品質が合格していればCO2排出も比較的少ないリサイクル材を、むしろ選好して使ってくれるからです。
このように、脱炭素がきっかけとなって大きく進歩しつつある循環経済についての認知度が、最近ようやく高まってきました。見えないところで時代は少しずつ変わってきているのです。
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