財務至上主義こそ事業承継成功のカギ
同族会社の事業承継の場合、株式や不動産、資金などの財産はもちろん、経営理念や会社経営の考え方など、目に見えない部分も先代社長から後継社長に引き継がれます。
そのため、先代社長が昔ながらの「間違った常識」を元に会社経営をしてきた場合、後継社長も同じ考え方のもと会社経営を行い、間違った経営判断をしてしまうことになります。
間違った常識を具体的にお伝えすると、「売上至上主義」の考え方です。特に、景気の良かった時代を経験している社長ほど、「売上を増やすことが経営の安定につながる」と考えます。
しかし、今はバブルや高度経済成長の時代のような、モノやサービスがどんどん売れる時代ではありません。少子高齢化による人口の減少、競合他社の台頭、海外製品との価格競争など、経営の環境は全く異なります。
環境が変われば、当然、考え方も変える必要があります。具体的には、「売上至上主義」から「財務至上主義」の考え方に変えていかなければなりません。
「財務至上主義」の会社と「売上至上主義」の会社では、5年後、10年後には「天と地」ほどの差が生まれます。
だからこそ、先代社長自身が正しい財務の知識を学び、財務の実務を実践することで、財務至上主義の考え方が社内に広まり、スムーズな事業承継の実現につながるのです。
同族会社の場合、社長の人生や家族関係の大半が会社経営に関わっていると言っても過言ではありません。
残された社員や家族のことを考えれば、なるべく早い段階で、事業が好調なうちに事業承継をしたいと考えるのは、当然のことです。
この気持ちはとてもよくわかります。しかし、後継社長のことを考えるなら、事業が好調だからこそ、「財務至上主義」の考えも一緒に承継しなければなりません。
売上至上主義の考えのまま事業承継を行ってしまうと、社長は売上を追い続け、お金のことは経理や税理士に任せっきりになってしまいます。
その結果、「売上は伸びているのに、なぜか毎月お金が足りない…」といつもお金のことで悩んでしまいます。
また、財務を知らない社長ほど銀行との付き合いも極端になります。具体的には、「銀行からお金は借りられるだけ借りる」とか、「借金は悪だから、とにかくお金を借りずにやりくりする」といった考えに陥りがちです。
いくら売上が好調でも、会社の現金が無くなれば、会社の存続は難しくなります。だからこそ、会社と社長にしっかりとお金が残る仕組みを作ることが、同族会社の事業承継には必要となります。
先代社長が後継社長に苦労させたくないならば、早い段階で財務の実務に取り組むことです。なぜなら、財務の実務は、時間が経てば経つほど、どんどん強さを増していくからです。
大切なことなので何度もお伝えしますが、同族会社の事業承継には、『先代社長の経営への取り組み』も承継されます。だからこそ、先代社長が「財務の正しい知識」を理解することが、とても重要です。
先代社長が間違った経営判断の基準を後継社長に引き継いでしまえば、事業承継後の未来は、「借金依存」「資金不足」「赤字体質」という暗いものになってしまうでしょう。
仮に、財務の知識を知らなくても経営がうまくいっているとしたら、それは「運が良かった」だけかもしれません。運に頼った経営は、ギャンブルでしかありません。
大切なことは、「売上をつくる能力」と「会社にお金を残す能力」は、全く別物だと社長が認識すること。そして、その事実を、後継社長に正しく伝えることです。
「財務至上主義」で経営判断ができることは、景気や時代の変化にも対応できるようになります。だからこそ、強く長く続く会社を作ることができるのです。
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