職場をよくする最初の一人を生み出す方法
先日、新幹線で出張に行く時のこと。ある駅で隣の席にドスンと座った仕事帰りらしき若い女性が、連れの男性に向けて大きな声で話を始めました。聞くともなく聞いていると、この方の同僚の女性が何かを強く主張するのが不満らしく、「正義を振りかざして問題を解決しようとするところが良くないと思う」と強い語調でおっしゃっている。同行の男性の反応は…とそっと見てみると、肯定でもなく否定でもなく、微妙なバランスを保ちながら、ふんふんと聞いておられました。
ひとしきり強い語調の話が終わると、すべて吐き出してすっきりしたのか、本日の仕事の成果について落ち着いた様子で会話が進んでいきました。
決して盗み聞きしていたわけではないのですが、あまりに大きな声だったので読んでいた本に集中できなくなって、ついつい耳を傾けてしまった次第。そして、つぶやいたのは、それ言っても解決しないんだよな…という独り言。
職場の人間関係はストレスにもなり、やる気の源にもなります。この女性の場合は大いにストレスになっているらしく、ひとしきり吐き出した後は冷静になったところを見ると、話すことがよい効果をもたらしたらしい。ちなみに「話す」は「放す」と同じで、心の中のもやもやを手放すうえでもよい方法と言われます。
長期的に良好な結果を生み出すための「原理原則」を説いた自己啓発のバイブル「7つの習慣」には、第1の習慣として「主体的である」が挙げられています。ここでいう「主体的」の反対が「反応的」。「反応的」とは、何らかの刺激に対して一秒の躊躇もなく決まった反応をすることを指します。
対して「主体的」とは、刺激に対する反応を自分で選ぶことができるということを指します。「主体的である」ということは、感情のコントロールを含め、自分の行動を自分で選ぶということです。たとえば、誰かに不快なことを言われたとき、怒ることもできるし、受け流すこともできる。相手の言葉に左右されるか、自分の軸で反応を選ぶかで、結果はまったく違ってきます。
人間関係のストレスの多くは、相手の言動に自分の感情を明け渡してしまうことから生まれます。もちろん、腹の立つこともあれば、理不尽に感じることもあります。でも、その瞬間に「自分はどう反応するか」を選べると思えば、少し冷静になれます。ここに「主体的である」という生き方の第一歩があります。
職場でも同じです。誰かが批判的な発言をしたり、協力的でなかったりすると、つい反応的に「どうせあの人は」と決めつけてしまいがちです。けれども、その態度に反応しても状況は良くなりません。むしろ、「自分はこの状況をどうしたいのか」と一呼吸おいて考えることで、対話の方向が変わります。
この「一呼吸おく」ことが、主体的な人の特徴です。感情をそのまま吐き出すのではなく、いったん受け止めて、どのように行動するかを自分で選ぶ。そうすることで、職場の雰囲気は確実に変わっていきます。
主体的な人が増えると、組織全体の温度が上がります。誰かの言動に振り回される人が減り、自分の影響範囲の中でできることを考える人が増える。愚痴や不満よりも、「じゃあどうする?」という前向きな会話が生まれます。
結局、組織の空気というのは、誰かが放った小さな言葉や態度の積み重ねでできています。
だからこそ、最初のひとりになる人が大切です。影響力のある人――たとえば社長やリーダーが、自ら「反応的ではなく主体的に」ふるまう姿を見せれば、それは静かに伝播していきます。
あなたの会社ではいかがでしょうか。
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