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経営管理を動かす”納期”と”担当”の可視化

SPECIAL

トラスタライズ=信頼を対価に変えるコンサルタント

トラスタライズ総研株式会社

代表取締役 

企業の「信頼を対価に変える」専門コンサルタント。独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、「信頼」を切り口に、顧客企業が売上・利益を向上させられる手法の研究・提言を行っている。


経営計画が動かないのは、”納期”と”担当”が不明瞭だからかもしれません。責任追及ではなく進捗管理として丁寧に確認することが、仕組みを動かす力になります。


「ところで、これらの項目については、いつまでに誰がやるか決まっていますか?」

経営管理の仕組みづくりをご支援している際、ある社長との打ち合わせでふと口にした問いです。年間の経営計画は存在する。会議も定期的に開いている。それでも「どうも実効性が感じられない」と言う。

第三者目線で見てみると原因は明らかではあるのですが、そんなとき筆者はこの質問を投げかけます。

すると、少しの間沈黙があり、「うーん、そこまでなかなか決められてませんね」と返ってくることが少なくありません。

一見すると単なる進捗管理の話に聞こえますが、ここには「計画を動かす仕組み」と「人を動かす文化」の両方が関係しています。今回は、経営計画を実効性あるものに変えるための原点である、「納期と担当の明確化」について改めて考えてみます。

 


■「納期と担当」があいまいな計画は動かない

中期経営計画を作っても、日常の業務がそのまま続き、気づけば計画書は棚の中に眠り続ける。そんな状態に陥る会社は少なくありません。

お話を伺ってみると、往々にして「誰が」「いつまでに」やるのかが決まっていないことに突き当たります。

納期と担当の設定は、経営計画という装置を機能させるための歯車です。これが抜けると、計画は理念的には正しくても、行動の順序や優先順位が曖昧になり、社内の動きがかみ合わなくなっていきます。

また、実務の進捗が可視化されないため、管理者は「うまくいっているのか」「遅れているのか」さえ把握できず、結果としてPDCAが止まり、対話の質も低下していきます。

逆に、納期と担当を明示できている計画は、ある程度力を発揮します。「〇月までにAさんがここまでやる」と決まっていれば、仮に間に合わない場合でも、「どうすれば挽回できるか」「何を支援できるか」に変わっていきます。納期に対する状況を担当に確認できるからこそ、次のアクションにつながっていくのです。計画を動かすうえで、必要不可欠のパーツといえます。

 


■なぜあいまいになるのかー「責任=追及」という思い込み

それでは、なぜこんなにも基本的な部分が曖昧になりがちなのでしょうか。

多忙すぎて管理に工数をかけられない、というケースもありますが、筆者が注目する点としては「責任を明確にすると人を責めることになるのではないか」という無意識の思い込みの存在が挙げられます。

特に、社員想い・実直・優しいといった社風が強い会社ほど、責任の線引きを避ける傾向があります。「できていない人を責めたくない」「相手の立場を尊重したい」、その姿勢自体は理解できます。

しかし、組織運営において“責任の所在を明らかにする”ことと“責めること”はまったく別の話です。納期と担当を定めるのは、あくまで実行の再現性を高め、チームで支え合うための仕組みをつくるためです。

「Aさんがやる」と決まっていれば、他のメンバーもサポートのしどころを判断できます。「Bさんが遅れそう」と分かれば、フォロー体制を組むことができます。責任を個に閉じ込めるのではなく、むしろ共有してチーム全体でバックアップすることが、こうした社風の企業が成果を出すための第一歩になることが少なくありません。

そして一度この文化が根づくと、変化は早く訪れます。このような会社はもともとチームワーク志向があるため、一度仕組みとして受け入れられれば、定着も速く、成果にもつながりやすいのです。

社内の動きが明確になれば、社外に対してもより明確に約束ができるようになります。それはひいては自社の信頼強化にもつながります。経営者としては、責任追及と捉えられることを恐れず、“進捗管理の明確化・仕組み化”が重要なのです。

 


■”ゼロからの経営管理”でも有効な起点に

まだ経営計画そのものがなく、これから導入しようとする場合も、今行おうとしていることの「納期と担当」は、最初に確認すべき要素です。なぜなら、組織の“現実”が最も端的に表れてくるのがこの2つだからです。どんな業務が、誰の手で、どんなペースで進んでいるかを整理すれば、会社の「いま」が見えるようになります。

よくいわれる”PDCA”についても、P(計画)からではなくC(確認)から始めるのが有効に働く場合があります。立派な計画をゼロから立てるよりも、まず現状のタスクを全て書き出し、「誰が」「いつまでに」やっている(やる予定か)を一覧化する。これだけでも、組織の動きが可視化され、意外な重複や抜けが見えてきます。そこから、今後の「優先順位づけ」「業務設計」「中期計画化」に自然とつなげていけばよいのです。

つまり、納期と担当の明確化は、経営管理の“エントリーポイント”であり、どんな規模の会社でも今日から始められる実践的な第一歩であるともいえます。この地道な積み重ねが、やがて会社全体のPDCAを自律的に回す仕組みへと育っていきます。

納期と担当を決めるのは、あまりに単純で、当たり前に見えるかもしれません。しかし、経営者が意識して確認しなければ、つい軽視されたり、曖昧になっていったりするものです。

 

経営管理を成り立たせる「最初の歯車」は、非常に小さな当たり前のことでもあります。ただ、経営企画の仕事とは、この基本を丁寧に積み上げていく営みでもあるのです。

もし「計画はあるけれど、なぜか会社が動かない」と感じているなら、最初に見直すべきはスローガンでも方針でもなく、「納期」と「担当」の二つかもしれません。ぜひ、社員に頼んだ仕事が現状どのように管理されているか、責任追及の姿勢ではなく確認してみることをおススメします。

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