“なんとなくの停滞”から抜け出す空気経営とは？｜組織を再起動させる３ステップ

“なんとなくの停滞”から抜け出す空気経営とは？｜組織を再起動させる３ステップ

こんにちは！企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

会社が急激に悪化しているわけでもない。数字が落ち込んでいるわけでもない。しかし、なぜか全体の動きが鈍い。指示待ちが増え、新しい提案が出なくなり、会議の温度も下がり、挑戦する社員が減っていく──いわゆる「なんとなくの停滞」である。

恐ろしいのは、この停滞が“静かに進行する”という点だ。急激な業績悪化のように目に見えるシグナルがないため、気づいた頃には組織の内部に、重たい空気が深く沈殿している。「まあ、こんなものだろう」「今は仕方ない」「動いても意味がないかもしれない」──こうした無意識の声が組織に広がると、行動量は急激に落ちる。

マッキンゼーの調査によれば、成長が止まる企業の70％は「外部環境ではなく内部の空気劣化」によって停滞していたという。つまり、停滞の原因は戦略でも人材不足でもなく、“空気”なのだ。

では、停滞とは具体的に何が起きている状態なのか。それは、「組織のエネルギー（行動する力）」が低下している状態であり、空気が曇り、流れが止まり、未来への期待が見えなくなった状態である。

そして、この停滞から抜け出すには、戦略や制度の見直しでは足りない。必要なのは、空気そのものを再起動させることである。

空気は自然には良くならない。
空気は意図的に設計しなければ動かない。
空気を変えることが、組織の再起動の本質である。

ここでは、“なんとなくの停滞”から組織を再起動させるための３ステップ──①発見、②浄化、③再設計──を、実例と心理学を交えて深く解説する。

―１．停滞の正体は「空気の曇り」である

会社が停滞するとき、必ず内部の空気が曇っている。空気が曇るとは、組織の内部で以下のような兆候が起きている状態である。

・挑戦が減り、守りの姿勢が強まる
・社員の雑談量が減る
・会議で発言する人が固定化する
・小さなミス報告が遅れ始める
・情報循環が止まり、誤解が増える
・会社の未来について語る回数が減る

これらの兆候は、個人の能力不足ではない。空気の曇りによって、社員の脳が“守りモード”に入っているのである。脳科学では、恐れや不安を感じた瞬間、扁桃体が優位になり、前頭前野（思考・創造・挑戦を司る）が機能しづらくなる。つまり、空気が曇ると、どんな優秀な社員でも挑戦できなくなる。

組織が停滞するのは、社員が怠けているからではない。
空気が挑戦を抑制しているからである。

だからこそ、停滞を解消するための第一歩は、空気の曇りを「発見」することだ。

―２．停滞から抜け出す３ステップ

① 空気の“曇り”を発見する──小さなシグナルを見逃さない

停滞の最初のサインは、数字ではなく“空気”に現れる。
透明資産経営では、この空気の曇りを発見するために以下の観点を重視する。

・社員の表情の変化
・会議の温度
・雑談量
・提案数の推移
・社長への距離感
・小さな失敗に対する反応

たとえば、会議で笑顔が減ったら赤信号である。
雑談が減ったらオレンジ信号である。
提案が減ったら、すでに空気は曇り始めている。

千葉ジェッツでは、停滞期に入ったと感じたとき、GMが「選手の目が挑戦を見ていない気がする」と判断し、空気の再起動に踏み切った。細かな数字よりも、空気の温度を敏感に読み取っていた。

空気の曇りを発見できるかどうかが、“停滞を最短で解消できる会社”と“停滞を放置してしまう会社”を分ける。

② 空気の“浄化”──停滞の原因を取り除き、空気を軽くする

空気が曇っている会社には、必ず曇りの原因が存在する。
例えば、

・社内に広がる小さな誤解
・放置されている不満
・挑戦した人が傷ついた過去
・社長の疲労感
・問題が語られない文化
・成功体験への執着

停滞の本質は、こうした“空気の滞留”にある。

停滞から抜け出すためには、まず空気を浄化する必要がある。
浄化の方法は会社によって異なるが、共通するのは「本音を開く場」をつくることである。

スターバックスは、空気が重くなったタイミングで“Listening Session（傾聴セッション）”を行い、社員が本音を語れる安全な場を設ける。この取り組みによって、不満や誤解が解消され、空気が一気に軽くなる。

空気の浄化とは、
・見て見ぬふりをしていた課題に向き合うこと
・本音の循環を取り戻すこと
・空気を止めていた“澱（おり）”を取り除くこと

空気が浄化されると、社員の表情が変わる。
会議のテンポが早くなる。
雑談量が増える。
未来の話が自然に出てくる。

この変化はすべて、“空気が軽くなった”証拠である。

③ 空気の“再設計”──組織の未来に光を当て、新しい流れをつくる

空気が浄化されたら、次は“再設計”である。
空気は自然には良くならない。
空気は意図的に設計しなければ、再び曇り始める。

空気の再設計とは、
・未来の物語を掲げる
・行動基準を定める
・コミュニケーションの流れをつくる
・儀式や習慣をつくる
・小さな成功体験を積み重ねる

こうした“日常の設計”である。

透明資産経営の「５つの構造」は、この再設計を体系化したものだ。
特に重要なのは、

・社長のストーリー
・情報局
・社内学校
・ブランドの４本柱

この４つを通じて、未来の空気を設計し、日常の行動を変える。

たとえば、千葉ジェッツでは、低迷期から再起動する際、「私たちは地域の子どもたちの夢になる」という未来の物語を掲げ、その物語を軸に空気が再設計された。選手・スタッフの行動基準が揃い、空気が温まり、行動量が飛躍的に増え、結果として国内トップレベルのクラブにまで伸びた。

空気の再設計とは、“未来をデザインすること”である。
未来が見える空気の会社から、停滞は消えていく。

―３．停滞は「能力の問題」ではない。空気の問題である。

多くの社長は、停滞が始まると
「社員が怠けているのか？」
「能力が足りないのか？」
「意識が低いのか？」
と考えてしまう。

しかし、これは根本的な誤解である。

社員は怠けているのではない。
空気が彼らの行動を止めているだけである。

社員は能力が足りないのではない。
空気が彼らの挑戦を奪っているだけである。

社員は意識が低いわけではない。
空気が未来への期待を曇らせているだけである。

停滞とは、社員の問題ではなく、空気の問題なのだ。

だからこそ、停滞を解決するために必要なのは、社員教育でも管理強化でもなく、
“空気づくりの再設計”である。

空気が変われば、社員は動き出す。
社員が動き出せば、会社は自然と再起動する。

―４．社長こそが“空気の再起動ボタン”である

空気を最も強く動かす存在は、社長である。
社長の語る未来は、空気の源泉である。
社長の感情は、空気の温度を決める。
社長の判断は、空気の方向性を決める。

そして、社長の一つの決断が組織の空気を一瞬で変える。

停滞した空気を変えられるのは、社長のみである。
だからこそ、空気経営は社長の最重要業務と言っていい。

社長が未来を語った瞬間、空気は動き出す。
社長が挑戦を許した瞬間、空気は軽くなる。
社長が誠実に向き合った瞬間、空気は澄み渡る。

空気を変えるとは、社長自身が変わることでもある。

―まとめ｜空気を再起動させれば、組織は必ず再び動き出す

“なんとなくの停滞”は、どんな会社のどんなタイミングにも起こり得る。
しかし、停滞から抜け出せる会社と抜け出せない会社の違いは、
空気の曇りを発見し、浄化し、再設計できるかどうかにある。

空気は経営資源である。
空気は見えないが、空気がすべてを動かす。
空気が再起動すれば、組織は必ず蘇る。

発見、浄化、再設計──
この３ステップを実行できる会社だけが、
停滞を成長のチャンスに変えることができる。

そして、空気を動かせる唯一の存在は、社長である。

空気を変えれば、未来は変わる。
空気を再起動させた瞬間、組織は必ず前へ進み始める。

―勝田耕司