透明資産経営|なぜ、うちは風通しがいいんです!と言う社長ほど本音が届かないのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー「うちは、何でも言い合える会社です」と、胸を張っていませんか
経営者と話していると、よくこう言われます。「うちは風通しがいいんです」「何でも言い合える、風通しのいい職場です」。そう語る社長の表情は、たいてい誇らしげです。あなたも、そう感じているかもしれません。自分は社員に威張らない。話しかけやすいよう心がけている。意見があれば言ってくれと、いつも伝えている。だから、うちは風通しがいい、と。
けれど、ここで一つ、静かに問わせてください。その「風通しがいい」というのは、誰が決めたことでしょうか。──社長である、あなた自身ではないでしょうか。もし、社員に匿名で「この会社は本音を言えますか」と尋ねたら、同じ答えが返ってくると、言い切れるでしょうか。少しでも「どうだろう」とためらいが生まれたなら、その感覚は、とても大切です。なぜなら、「風通しがいい」と最も強く信じている社長のもとでこそ、本音が最も届かなくなる、という逆説があるからです。
ー「風通しがいい」という思い込みが、耳をふさぐ
多くの社長は、風通しの良さを、自分の姿勢で測ります。自分は開かれている、話しかけやすい、意見を歓迎している。──だから、風通しはいいはずだ、と。しかし、この連載だからこそ、はっきりお伝えします。風通しの良さは、社長がどうふるまっているかではなく、社員が実際に本音を出せているかどうかで決まるのです。そして、この二つは、驚くほど食い違います。社長が「開かれている」と信じているほど、その信念が、かえって耳をふさぐからです。
考えてみてください。「うちは風通しがいい」と信じている社長は、社員が黙っていても、「言いたいことがないのだろう」と解釈します。反対意見が出なければ、「みんな納得しているのだ」と受け取る。つまり、風通しがいいという思い込みが、沈黙を「同意」と読み替えさせ、本音が届いていない現実を、見えなくするのです。
普通なら、風通しの良さは美点として語られます。しかし透明資産の視点では、社長の「風通しがいい」という自己評価ほど、疑ってかかるべきものはありません。本当に風通しのいい会社の社長は、むしろ「うちは、まだ本音が出しきれていないかもしれない」と、絶えず気にかけている。自信満々に「風通しがいい」と言い切る社長ほど、実は、届いていない本音の存在に、気づけていないのです。
ー本音を止めている、3つの見えない壁
社長が「開かれている」つもりでも、社員と社長の間には、見えない壁が立っています。本音を止める、三つの壁をお伝えします。
1つ目の壁は、「立場」という壁です。どれほど社長が気さくにふるまっても、社長は社長です。給料も、評価も、その人事権を握る相手に、社員が完全に無防備な本音をぶつけるのは、簡単ではありません。「話しかけやすい」ことと、「不利になるかもしれない本音を言える」ことは、まったく別なのです。この立場の壁を、社長自身は、ほとんど意識できません。
2つ目の壁は、「過去の反応」という壁です。かつて誰かが本音を言ったとき、社長がわずかに顔をしかめた。反論に、ムッとした表情を見せた。──社長は忘れていても、社員は覚えています。その一度の反応が、「本音を言うと、機嫌を損ねる」という学習として、組織に刻まれる。以来、みな当たり障りのない発言に切り替えている。壁は、あなたの何気ない一瞬が、積み上げたものなのです。
3つ目の壁は、「言っても変わらない」という壁です。過去に社員が意見を出したのに、何も変わらなかった。その経験が重なると、人は「言うだけ無駄だ」と結論づけます。風通しの入口は開いていても、その先に何の変化も起きなければ、誰も、もう口を開かなくなる。沈黙は、あきらめの結果なのです。
ー本音が届くかは、社員の側からしか分からない
風通しが本当に良いかどうかは、社長の自己評価ではなく、社員の側の実感でしか、測れません。社員が、不利を覚悟せずに本音を出せているか。出した本音が、受け止められ、何かが変わった実感を持てているか。
社長が「風通しがいい」と言い切ってしまうことこそ、本音が届いていないサインかもしれない──そう疑える謙虚さが、実は、本当の風通しの出発点です。自分の会社の空気は、自分では見えない。その前提に立てたとき、はじめて、届いていなかった本音に、手が届き始めます。
ー「いい」と決めつけず、確かめにいく
では、経営者は何を変えればいいのか。「うちは風通しがいい」と言うのを、一度、やめてみることです。まず、風通しの良し悪しを、自分で判断するのをやめる。代わりに、社員の側に、確かめにいく。匿名で本音を集める。一対一で、じっくり耳を傾ける。次に、社員が本音を出してくれたとき、たとえ耳の痛い内容でも、決して顔をしかめず、「言ってくれてありがとう」と受け止める。そして、出された声を、一つでも目に見える変化につなげる。「言えば変わる」という実感を、返していく。──こうして確かめにいき始めたあなたは、これまで見えなかった本音への扉を、静かに開き始めているのです。
ーその「風通しの良さ」は、あなただけの実感ではありませんか
最後に、経営者にお伝えしたいことがあります。風通しの良さとは、社長が胸を張って語るものではなく、社員が静かに実感しているかどうかで決まる、ということです。明日、社員の顔を見たら、問い直してみてください。この人は、本当に、不利を恐れずに本音を言えているだろうか。それとも、私が「風通しがいい」と信じているせいで、届かない本音が、そこにあるのだろうか。もし、確信を持って「言えている」と言い切れないなら、そこに、見過ごされてきた沈黙があります。
このコラムを読み終えたあなたは、次に「うちは風通しがいい」と言いかけたその瞬間、ふと言葉を飲み込むはずです。そして、自分で決めつける代わりに、社員に確かめにいく自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。「いい」と決めつけず、確かめにいく。それが、届かなかった本音への扉を開く、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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