透明資産経営|なぜ、社長のため息ひとつが会社全体の生産性を奪うのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー あなたの、ほんの小さなため息を、社員は見ています
思い浮かべてみてください。数字の悪い報告を受けて、思わず漏れた、あの小さなため息を。パソコンの画面を見ながら、無意識に寄せた、眉間のしわを。電話を切ったあと、舌打ちまじりに漏らした、ひとりごとを。あなたにとっては、取るに足らない、ほんの一瞬のことだったでしょう。すぐに忘れてしまうような、些細な仕草。──ところが、その一瞬を、社員たちは、驚くほど鮮明に見ています。そして、こう感じ取るのです。「社長の機嫌が悪い」「何かまずいことが起きたのか」「今日は、話しかけないほうがよさそうだ」。
あなたのそのため息ひとつで、フロア全体の空気が、すっと張りつめる。社員は、仕事の手を止め、社長の顔色をうかがい始める。誰も、余計なことを言わなくなる。──思い当たることが、あるのではないでしょうか。もしあるのなら、その光景こそ、社長という存在が、いかに強く会社の空気を支配しているかの、動かぬ証拠なのです。
ー 社長の感情は、「個人のもの」ではなく「会社の天気」である
多くの社長は、自分の機嫌を、個人的なものだと考えています。今日は少し疲れている、虫の居所が悪い。それは自分の問題であって、仕事とは別だ、と。しかし、この連載だからこそ、はっきりお伝えします。社長の感情は、もはや個人のものではありません。それは、会社全体を覆う「天気」なのです。社長が晴れやかなら、組織に陽が差す。社長がどんよりしていれば、フロア全体に、低い雲が垂れこめる。社員は、出社してまず、その日の「社長という天気」を読み、それに合わせて、自分の一日の過ごし方を決めます。
ここに、社長という立場の、逃れられない現実があります。あなたがどれだけ「これは個人的な機嫌だ」と思っていても、社員には、そんな区別はつきません。社長の不機嫌は、社員にとって、いつでも「自分たちのせいかもしれない脅威」として受け取られる。一般の社員なら、多少不機嫌でも、周りは「あの人、今日は機嫌が悪いな」で済ませます。しかし社長の不機嫌は、権力を伴うがゆえに、組織全体を萎縮させる力を持つ。同じ一つのため息でも、社長のそれは、桁違いの重さで、空気を支配するのです。
ー 社長の不機嫌が奪う、3つのもの
社長のたった一つの不機嫌が、組織から何を奪うのか。三つお伝えします。
1つ目に奪われるのは、「報告」です。社長が不機嫌そうにしていると、社員は悪い報告を持っていきづらくなります。「今、言ったら、余計に機嫌を損ねる」と、報告を先送りする。こうして、社長が最も早く知るべき悪い情報ほど、社長の不機嫌によって、届くのが遅れる。あなたのため息が、会社を守るための情報網を、自ら断ち切っているのです。
2つ目に奪われるのは、「集中」です。社長の顔色をうかがっている間、社員の意識は、仕事から離れています。「社長は何に怒っているのか」「自分は大丈夫か」。──この気づかいに使われるエネルギーは、本来、仕事に注がれるべきものです。社長の不機嫌は、フロア全体の集中力を、静かに、しかし確実に、削り取っていきます。
3つ目に奪われるのは、「挑戦」です。社長の機嫌に敏感な組織では、社員は「機嫌を損ねないこと」を最優先にします。すると、リスクのある新しい提案や、耳の痛い進言を、避けるようになる。波風を立てないことが、何より大切になる。社長の不機嫌への恐れが、組織から、前へ進む活力を奪うのです。
ー 社長の機嫌は、最も影響力の大きい「経営資産」
社長の感情の安定は、もはや個人の資質の問題ではなく、会社の生産性を左右する、極めて大きな経営資産です。社長が、日々、安定した穏やかな空気をまとえているか。感情の波を、そのまま組織に垂れ流していないか。フロアの空気が張りつめるのは、社長の感情という天気が、組織を覆っているサインです。社長が自らの機嫌を、経営の一部として律したとき、組織からは無用な萎縮が消え、本来の力が発揮され始めます。
ー 機嫌を、経営の一部として律する
では、経営者は何を変えればいいのか。感情を消すことではありません。自分の機嫌が持つ影響力を自覚し、それを経営の一部として律することです。まず、自分の感情が「会社の天気」であると、常に意識する。ため息ひとつ、表情ひとつが、フロア全体に伝播していることを、忘れない。次に、不機嫌を感じたときは、それを組織に垂れ流す前に、一呼吸おく。席を立ち、気持ちを整えてから、現場に戻る。そして、意識して、穏やかで安定した空気をまとう努力をする。──こうして機嫌を律し始めたあなたは、フロアから無用な緊張を取り除き、社員が本来の力を出せる空気を、静かにつくり始めているのです。
ー 明日の朝、あなたはどんな天気で出社しますか
最後に、経営者にお伝えしたいことがあります。あなたの機嫌は、あなた一人のものではなく、社員一人ひとりの一日の質を、そして会社全体の生産性を、静かに左右しているということです。明日の朝、出社するとき、思い出してください。あなたがまとう空気が、そのまま、その日の会社の天気になる。あなたが穏やかなら、社員は安心して力を発揮できる。あなたが不機嫌なら、フロア全体が、顔色をうかがうことに一日を費やす。──あなたは、どちらの天気を、社員に届けたいでしょうか。
このコラムを読み終えたあなたは、次にため息をつきそうになったその瞬間、ふと気づくはずです。「今、フロア中が、自分を見ている」と。そして、一呼吸おいて、穏やかな表情を取り戻す自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。機嫌を、経営の一部として律する。それが、会社全体の生産性を静かに底上げする、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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