透明資産経営|なぜ、社長が良かれと語るビジョンが、社員に他人事として響くのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー熱く語ったのに、社員の目が、どこか遠かった
思い浮かべてみてください。あなたが、社員の前で、会社の未来を、熱く語ったときのことを。「我が社は、これから、こういう会社を目指す」「5年後には、こんな未来をつくる」──あなたは、思いを込めて、ビジョンを語った。会社の夢を、成長の絵を、情熱を持って、社員に届けた。良い会社にしたい、みんなで大きくなりたい。その気持ちに、嘘はありません。
ところが、語り終えたあと、社員たちの反応は、どこか、あなたの熱とは、温度が違いました。うなずいてはいる。けれど、その目は、どこか遠い。「社長は、ああ言っているけど」という、他人事のような空気が、うっすらと漂っている。──あれほど熱を込めて語ったのに、なぜ、社員の心には、火がつかないのか。この、社長の熱意と、社員の冷めた目のあいだにある温度差こそ、今日、お話ししたいことです。
ービジョンが「社長の夢」で止まると、社員には他人事になる
なぜ、社長が熱く語ったビジョンが、社員に、他人事として響くのか。ここに、この連載だからこそお伝えしたい、見落としがあります。社長が語るビジョンが、多くの場合、「社長の夢」であって、「社員の夢」には、なっていない、ということです。考えてみてください。社長が語る「5年後に、こんな会社になる」という絵。それは、たいてい、会社の成長や、規模の拡大といった、社長の視点から見た未来です。しかし、社員が知りたいのは、少し違います。「その未来の中で、自分は、どうなるのか」「その成長は、自分に、何をもたらすのか」「自分は、その絵の、どこにいるのか」──社員は、会社の未来を、自分の人生と、重ねられたときにはじめて、それを、自分事として、受け止められるのです。ところが、社長のビジョンが、会社の話だけで完結し、社員一人ひとりの未来が、そこに描かれていなければ、社員は、それを、遠くの、社長だけの夢として、聞き流してしまう。
普通の経営者なら、「立派なビジョンを、情熱を持って語れば、社員はついてくるはずだ」と考えるでしょう。しかし、透明資産の視点では、ビジョンが社員を動かすかどうかは、その内容の立派さや、語りの熱量ではなく、社員が、その未来の中に、自分の居場所を、感じられるかどうかで、決まります。どれほど熱く語っても、そこに社員自身の姿がなければ、ビジョンは、社員にとって「自分に関係のある空気」には、なりません。社長の夢が、他人事として響くのは、その夢が、社員一人ひとりの人生と、結びついていないからなのです。
ービジョンを他人事にしてしまう、3つの語り方
社長のビジョンを、他人事にしてしまう語り方とは何か。三つお伝えします。
1つ目は、「会社の話しか、しない」ことです。「会社を、大きくする」「売上を、伸ばす」──語られるのが、会社という主語ばかりで、社員一人ひとりが、そこにいない。すると、社員は、「それは、社長の夢であって、自分の夢ではない」と感じる。社員の姿の描かれていないビジョンは、社員の心を、素通りするのです。
2つ目は、「一方的に、語りきる」ことです。社長が、壇上から、ビジョンを一方的に語って、終わる。社員は、ただ、聞くだけ。自分が、その未来づくりに、関われるという実感が、ない。参加できない未来は、他人事になる。一方通行の語りが、社員を、傍観者にしてしまうのです。
3つ目は、「日々の行動と、つながっていない」ことです。壮大なビジョンを語る一方で、日々の仕事の中で、そのビジョンが、まったく感じられない。語られる未来と、目の前の現実が、乖離している。すると、社員は、「あれは、ただの、きれいごとだ」と受け取る。日常と切れたビジョンは、絵空事として、響かなくなるのです。
ービジョンを自分事にするのは、社員の未来が描かれた空気
ビジョンが、社員を動かすか、他人事で終わるかを分けるのは、語りの熱量ではなく、その未来の中に、社員一人ひとりの姿が、描かれている空気があるかどうかです。語られるビジョンの中に、社員自身の成長や、幸せが、描かれているか。社員が、その未来づくりに、参加できる空気があるか。ビジョンが他人事として響くのは、それが社長の夢で止まり、社員の人生と、結びついていないサインです。会社の未来と、社員一人ひとりの未来を、重ねて描いてはじめて、ビジョンは、社員が自ら向かいたくなる、自分事の空気になります。
ー「会社の夢」を、「みんなの夢」に変えて語る
では、経営者は、何を変えればいいのか。ビジョンを、より立派にすることでも、より熱く語ることでもありません。会社の夢を、社員一人ひとりの夢と、重ねて語ることです。まず、ビジョンを語るとき、「会社が、こうなる」だけでなく、「その中で、あなたたちが、こうなる」を、描く。社員の成長や、幸せを、未来の絵の中に、はっきりと、位置づける。次に、一方的に語るのではなく、「どんな会社にしたいか、一緒に考えたい」と、社員を、未来づくりに、巻き込む。そして、日々の仕事の中で、そのビジョンに、少しずつでも近づいている実感を、届ける。──こうして会社の夢とみんなの夢を重ね始めたあなたは、他人事だったビジョンを、社員が自ら向かう、共通の空気へと、変え始めているのです。
ーあなたのビジョンの中に、社員の姿は、描かれていますか
最後に、お伝えしたいことがあります。ビジョンが社員を動かすかどうかは、その絵の立派さや、語る熱量ではなく、その未来の中に、社員一人ひとりが、自分の居場所を、感じられるかどうかで、決まるということです。思い返してみてください。あなたが、これまで語ってきたビジョン。そこには、会社の未来だけが、描かれていたでしょうか。それとも、その未来の中で、社員一人ひとりが、どう成長し、どう幸せになるのかが、描かれていたでしょうか。もし、会社の話ばかりだったと気づいたなら、それが、社員の目が、遠かった理由です。
このコラムを読み終えたあなたは、次にビジョンを語ろうとしたその瞬間、ふと、問い直すはずです。この未来の中に、社員の姿は、描かれているだろうか、と。そして、「会社が」ではなく「みんなが」という言葉で、未来を語り直す自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。会社の夢を、みんなの夢に変えて語る。それが、ビジョンを社員の自分事に変える、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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