透明資産経営|なぜ、報告はきちんと上がる会社ほど、社長が現実を見誤るのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー報告は、きちんと上がってくる。だから、安心していませんか
思い浮かべてみてください。あなたの会社の、報告の仕組みを。日報が、毎日上がってくる。定例会議で、各部署から、進捗が報告される。数字も、案件も、きちんと文書にまとめられ、あなたの手元に届く。──報告体制は、整っている。だから、あなたは、思っているはずです。「うちは、報告がしっかりしている。会社の状態は、把握できている」と。
けれど、ここで一つ、静かに問わせてください。その、きちんと上がってくる報告は、現場で本当に起きていることの、「すべて」でしょうか。それとも、「報告してよいと判断されたこと」だけ、でしょうか。──もし、後者かもしれないと感じたなら、その感覚は、とても大切です。なぜなら、報告がきちんと上がる会社ほど、社長が「把握できている」と思い込み、かえって、現実を見誤るという、皮肉な落とし穴があるからです。
ー報告に乗るのは「言葉にできること」だけ。空気は、乗らない
なぜ、きちんとした報告が、社長の目を、曇らせるのか。ここに、この連載だからこそお伝えしたい、報告の限界があります。報告に乗せられるのは、言葉にできる、目に見える事実だけであって、現場に流れる、目に見えない空気は、報告には、決して乗らない、ということです。考えてみてください。日報や会議の報告に乗るのは、何でしょうか。売上の数字、案件の進捗、起きたトラブル──いずれも、言葉にできる、事実です。しかし、現場には、報告に乗らないものが、たくさんあります。社員が、どんな表情で働いているか。お客様と接するときの、声の温度。チームの中に漂う、かすかな不穏さ。ベテランが、最近、少し元気がないこと。──こうした、数値にも言葉にもならない空気は、どんなに報告体制を整えても、上がってこないのです。
普通の経営者なら、「報告さえきちんと上がっていれば、会社は把握できる」と考えるでしょう。しかし、透明資産の視点では、それは、危険な思い込みです。なぜなら、会社の変調は、多くの場合、報告に乗る「事実」よりも先に、報告に乗らない「空気」に、表れるからです。空気が澱み始めても、数字や案件には、まだ、何の異変も出ていない。だから、報告は、順調そのものに見える。ところが、水面下では、空気が、確実に変わり始めている。報告がきちんとしている会社ほど、社長は、その順調な報告を信じ込み、水面下の空気の変化を、見逃してしまう。「報告は、順調だ」という安心が、かえって、社長の目を、最も大切な空気から、そらしてしまうのです。
ー報告への過信が生む、3つの見誤り
報告を信じきることが、どんな見誤りを生むのか。三つお伝えします。
1つ目の見誤りは、「順調という誤解」です。報告される数字や案件が、順調なあいだ、社長は「万事、うまくいっている」と思い込みます。しかし、その裏で、社員の心が離れ始めていても、お客様との空気が冷え始めていても、報告には、まだ出てこない。順調な報告が、水面下の異変を、覆い隠すのです。
2つ目の見誤りは、「加工された現実」です。報告は、現場から社長へと、人を経て、上がってきます。その過程で、都合の悪いことは、薄められ、見栄えのいいことが、強調される。社長が受け取る報告は、いつの間にか、加工された現実になっている。それを、ありのままの姿だと信じた社長の判断は、現実から、ずれていくのです。
3つ目の見誤りは、「現場との距離」です。報告で把握できると思うほど、社長は、現場に足を運ばなくなります。すると、生の空気に触れる機会が、失われる。報告という、フィルターを通した情報だけで、会社を見るようになる。報告への信頼が、皮肉にも、社長を、現場の空気から、遠ざけてしまうのです。
ー現実を掴むのは、報告と、肌で感じる空気の両方
社長が、現実を正しく掴めるか、見誤るかを分けるのは、報告体制の精緻さではなく、報告に乗る事実と、報告に乗らない空気の、両方を見ているかどうかです。きちんとした報告を受けつつ、報告には乗らない、現場の生の空気を、自分の肌で、感じ取れているか。順調な報告の裏に、まだ言葉になっていない変調が、ないかを、気にかけているか。報告を過信して現実を見誤るのは、目に見える報告にとらわれ、目に見えない空気を、見失っているサインです。報告と、肌で感じる空気の、両方を掴んではじめて、社長は、会社の本当の姿を、見られるのです。
ー報告を読む前に、現場の空気を、感じにいく
では、経営者は、何を変えればいいのか。報告をやめることではありません。報告に加えて、報告に乗らない空気を、自ら感じにいくことです。まず、報告書の数字が順調でも、それを「すべてが順調」と、鵜呑みにしない。「この報告に、乗っていないものは、何か」と、問う癖をつける。次に、報告を受けるだけでなく、意識して現場に立ち、社員の表情や、お客様との空気を、自分の目と肌で、確かめる。そして、報告で見える事実と、肌で感じた空気を、突き合わせる。──こうして両方を見始めたあなたは、順調な報告の陰に隠れていた、水面下の変化を、いち早く掴み始めているのです。
ーあなたが見ている会社は、報告の中の会社でしょうか
最後に、お伝えしたいことがあります。社長が把握できるのは、報告に乗った、目に見える事実だけであって、会社の本当の状態は、報告に乗らない空気の中にこそ、表れているということです。思い返してみてください。あなたが今、頭に描いている自社の姿は、きちんと上がってくる報告から、組み立てられたものでしょうか。それとも、現場に立ち、肌で感じた、生の空気に基づくものでしょうか。もし、報告ばかりに頼ってきたと気づいたなら、あなたが見ている会社と、本当の会社のあいだには、すでに、見えないずれが、生じているかもしれません。
このコラムを読み終えたあなたは、次に順調な報告書を手にしたその瞬間、ふと、こう問うはずです。この報告に、乗っていないものは、何だろう、と。そして、報告を読む手を止めて、現場の空気を、自ら感じにいく自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。報告を過信せず、報告に乗らない空気を、自ら掴む。それが、順調な報告の陰の変調を見逃さない、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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