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国際取引規制|モノ・サービスの海外取引、事前に何を確認するか

SPECIAL

海外ビジネス〈構造設計〉コンサルタント

株式会社DREAM CUBE

代表取締役 

海外ビジネスコンサルタント。30年以上にわたり、事業開発と国際取引を手掛けてきた実績。自ら海外事業を展開する一方、300社を超える企業・団体の海外進出を支援。数千万円規模の輸出入取引から、数千億円規模の大型国際プロジェクトへの参画まで多岐にわたる。
数多くの事案を通じて、海外ビジネスの成否は「事業全体の構造」に左右されることを実感。現場で培った知見を体系化した独自の〈7つの構造設計〉を提唱し、企業が世界で勝ち続けるための海外事業の設計・構築を支援している。

「台湾のバイヤーから注文が入りました。来月出荷できますよね?」

「ちょっと待ってください!その食品は現地へ輸入可能ですか。原材料や表示の確認は終わっていますか?」

「この機器、海外の工場へ販売してそのまま使えますよね?」

「日本から輸出できるかだけでなく、現地の安全規格や電源仕様、据付け条件まで確認できていますか?」

「海外の顧客にソフトウェアを提供します。インターネット経由なので、輸出手続きは関係ないですよね?」

「プログラムや技術情報、相手国の個人データの取扱い条件まで確認しましたか?」

国際取引では、「売れそうだ」「提供できそうだ」との判断だけで、そのまま契約や出荷へ進めるとは限りません。

食品であれば、輸入規制、原材料、添加物、表示、検査、登録などを確認する必要があります。

機械機器であれば、輸出規制だけでなく、相手国で求められる規格や認証、電源、設置環境なども確認します。

ソフトウェアであれば、プログラムや技術情報の国外提供、ライセンス、個人データ、クラウド環境など、モノとは異なる確認事項が生まれます。日本の安全保障貿易管理は、貨物だけでなく一定の「技術の提供」も対象としており、外国への技術提供について確認が必要になる場合があります。

規制は、契約した後や出荷する直前に調べるものではありません。

市場を選び、価格を決め、取引条件を設計する段階から確認しておく必要があります。

最初に「何を取引するのか」を分解する

規制を調べる第一歩は、商品名やサービス名だけを見ることではありません。

たとえば「機械を海外へ販売する」という一つの取引でも、機械本体だけでなく、交換部品、組み込まれたソフトウェア、操作マニュアル、据付け、試運転、技術指導、保守まで含まれることがあります。

食品であれば、中身だけではありません。原材料、添加物、容器・包装、表示、保存条件なども取引条件に関係します。

ソフトウェアも、プログラムだけを提供するとは限りません。アカウント、クラウド環境、顧客データ、導入支援、保守、更新などが一体となって提供されることがあります。

つまり国際取引では、

「何を売るのか」だけでなく、「何が、誰から誰へ、どの国を越えて動くのか」を整理する必要があります。

モノ、技術、サービス、データを分けて考えると、確認すべき規制が見えやすくなります。

食品は、「売れるか」の前に「入れられるか」を確認する

海外のバイヤーが商品を評価し、「ぜひ買いたい」と言ってくれた。

これは大きな前進です。

しかし、商談が成立しそうだからといって、その食品を相手国へ輸入し、そのまま販売できるとは限りません。

食品では、原材料や添加物、衛生基準、検疫、表示、商品登録、証明書など、国や商品によってさまざまな確認事項が生じます。

日本では問題なく販売できる商品でも、相手国では使用できない原材料が含まれていることがあります。ラベルについても、使用言語、栄養成分、アレルギー情報、輸入者情報など、現地の制度に合わせた対応が必要になる場合があります。

ここで重要なのは、規制確認を「輸出手続き」とだけ考えないことです。

配合変更が必要なら商品設計に影響します。新しいラベルが必要ならコストが変わります。
登録に時間がかかれば販売開始時期も変わります。

食品規制は、通関の問題ではなく、市場へ参入できるかどうかを左右する事業条件です。

機械は、「輸出できる」と「現地で使える」を分けて考える

機械の場合も、日本から送り出せれば取引が完了するわけではありません。

相手国へ輸入できるのか。現地の工場へ設置して実際に稼働できるのか。

電圧や周波数、電源設備、安全規格、認証、設置場所、使用環境などを確認する必要があります。

大型機械であれば、搬入口や床荷重、クレーンなど、相手側の設備が問題になることもあります。

さらに機械取引では、モノと一緒に技術が動きます。

設計図、制御プログラム、製造情報、技術マニュアル、遠隔保守、技術指導などです。

日本の安全保障貿易管理では、軍事転用可能な貨物や技術について外為法に基づく管理が行われています。輸出だけでなく、技術提供についても確認する視点が必要です。制度自体も改正されるため、継続取引であっても最新の規制内容を確認する必要があります。

機械本体を「出せるか」と、技術を「提供できるか」、そして現地で「稼働できるか」は、分けて確認します。

ソフトウェアは、国境が見えにくいからこそ注意する

ソフトウェアには、船もコンテナも倉庫も登場しないことがあります。

アカウントを発行する。インターネットからダウンロードしてもらう。
クラウドへ接続してもらう。

これだけを見ると、国境を越えている感覚は薄くなります。

しかし実際には、プログラム、技術情報、データ、利用権などが国境を越えています。

誰がソフトウェアを利用するのか。
どの国まで利用を認めるのか。
データはどこのサーバーに保存されるのか。
どの国の担当者がアクセスするのか。
別の事業者へデータが提供されるのか。
契約終了後にデータをどう扱うのか。

こうした取引の流れを確認します。

日本の個人情報保護法にも、外国にある第三者への個人データ提供についての規律があり、個人情報保護委員会が専用のガイドラインを設けています。したがって、海外へデータを移す場合には「クラウドだから」「同じグループ企業だから」といった理由だけで判断せず、実際のデータの流れを確認する必要があります。

「インターネットで送れる」と「自由に提供できる」は同じではありません。

関税率を調べる前に、品目分類を確認する

モノの国際取引では、関税も採算を左右します。

しかし、最初から、

「この商品の関税率は何%ですか?」

と聞いても、正しい答えにたどり着けないことがあります。

まず、何という品目に分類されるのかを確認する必要があります。

関税率や輸入手続きではHSコード(国際的な商品分類番号)に基づく品目分類が重要で、日本をはじめ各国税関が実行関税率表を公表しています。また、日本では品目分類について税関へ事前に照会する制度も設けられています。

材質、成分、用途、加工方法、機能などによって分類が変わる場合があります。

分類が変われば、関税率だけではなく、必要な許認可や手続きに影響する可能性もあります。

関税を調べる前に、何として分類される商品なのかを確認する。

この順序が重要です。

EPA・FTAは、「日本から輸出するから使える」わけではない

日本と相手国との間にEPA(経済連携協定)などがあれば、通常より低い関税率を利用できる場合があります。

しかし、日本から出荷した商品だからといって、自動的に優遇税率が適用されるわけではありません。

EPAでは、原産品と認められるための基準や、証明・申告などの原産地手続が定められています。

どこで製造したのか。どこの材料を使用したのか。
どのような加工を行ったのか。

こうした条件によって原産性の判断が変わります。

「EPAがあるから関税は下がるだろう」と考えて価格を決めるのではなく、

自社の商品が実際に適用条件を満たすのかまで確認して、価格へ反映する必要があります。

サービスには「関税がないから簡単」とは限らない

サービスはモノのように税関を通らないため、規制が少ないように見えることがあります。

しかし、サービスにも別の確認事項があります。

たとえば、現地で業務を行うために資格や許可が必要なのか、担当者が現地へ渡航して業務を行えるのか、どの国で税金が発生するのか、といった問題です。

オンラインサービスでも同じです。日本の消費税制度でも、インターネットなどを介した「電気通信利用役務の提供」について、国境を越えた取引に特有の取扱いがあります。

税務は国、取引内容、契約主体などによって扱いが変わるため、具体的な案件では税理士や現地の専門家などによる確認が必要です。

国際的なサービス取引では、

「契約金額はいくらか」だけでなく、「誰が何を負担し、最終的にいくら残るのか」まで見ておく必要があります。

輸出国と輸入国、双方を見る

国際取引では、一方の国だけを確認しても十分ではありません。

日本から出せるのか。相手国へ入れられるのか。

食品や機械なら、この両方を確認します。

ソフトウェアやデータでは、さらに複雑になる場合があります。

日本企業が契約し、シンガポールのクラウドを利用し、別の国の事業者が保守し、米国の顧客が利用する。

こうした取引では、「日本と販売先」の二国間だけを見ても、全体像を把握できません。

モノ、技術、データ、サービスが、どこからどこへ動くのか。

取引の流れを一度図にしてみると、確認すべき国や制度が見えやすくなります。

規制対応の「担当者」を決める

規制が分かっても、誰が対応するのか決まっていなければ取引は進みません。

輸出者が確認するのか。
輸入者が対応するのか。
海外代理店が商品登録を行うのか。
通関業者や専門家へ依頼するのか。

「輸入者がやってくれるはず」
「代理店が知っているだろう」

という状態は避けたいところです。

相手へ任せる場合にも、何を確認するのか、誰が担当するのか、いつまでに確認するのか、どの書類で確認するのかを明確にします。

規制対応も、国際取引における役割設計の一部です。

価格と納期を決める前に、規制を確認する

規制確認が遅れると、価格にも納期にも影響します。

食品なら、検査、登録、ラベル変更。

機械なら、認証、仕様変更、現地工事。

ソフトウェアなら、データ管理、セキュリティ対応、システム変更。

契約した後になって必要だと分かれば、追加費用が発生し、利益が減る可能性があります。

許認可や登録に時間がかかれば、約束した納期にも影響します。

したがって、

売価を決める前。
納期を約束する前。
独占権を与える前。
大きな投資をする前。

規制上、その取引が実行可能なのかを確認します。

規制確認、価格設計、納期設計、契約設計を別々に考えないことが重要です。

国際取引規制を確認する五つの問い

取引開始前の確認事項は、次の五つに整理できます。

  1. 何を取引するのか
    モノだけでなく、技術、サービス、ソフトウェア、データまで具体化する
  2. 日本から出せるのか、日本へ入れられるのか
    輸出入規制、許認可、安全保障貿易管理などを確認する
  3. 相手国で販売・利用できるのか
    食品規制、安全規格、商品登録、データ関連規制などを確認する
  4. 税金と追加費用はいくらかかるのか
    関税、輸入時の税金、登録、検査、認証、税務対応などを確認する
  5. 誰が確認し、誰が責任を持つのか
    輸出者、輸入者、代理店、通関業者、専門家などの役割を決める

すべての規制を経営者や担当者自身が判断する必要はありません。

税関、所管官庁、通関業者、検査・認証機関、弁護士、税理士、相手国の専門家など、それぞれの分野を確認できる人がいます。

重要なのは、専門家へ丸投げすることではなく、

何を、どの国で、誰と、どのような方法で取引するのか

を自社で整理してから確認することです。

「売れる市場」を「取引できる市場」へ変える

海外市場を調べるとき、最初に目に入るのは市場規模、成長性、競合、販売価格などです。

もちろん重要です。

しかし、市場が魅力的でも、規制に対応できなければ事業にはなりません。

反対に、規制を理解し、必要な条件を最初から事業計画へ組み込めば、価格、商品仕様、パートナー選び、納期、契約条件を現実的に設計できます。

市場を調べる。
提供するものを決める。
規制を確認する。
必要な費用と時間を把握する。
役割を決める。
価格と契約条件へ反映する。

「売れるか」だけでなく、「合法的に提供でき、採算が合い、継続できるか」まで確認する。

国際取引規制への対応には、市場の可能性を、実際に実行できる取引へ変える〈構造設計〉が必要です。

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