お家騒動は致命傷

今日は親子経営企業の思わぬ「死角」について、第3話。
【お家騒動は致命傷】
世によくある「お家騒動」の話。親子経営企業では身内親族が経営権を巡って争うことが多い。なかでも最も多いケースは父と子の争いである。常日頃から、もっと言うなら子供が物心ついた頃から、どうも親子の関係が上手くいかなかった、などという話は結構多い。
その結果、今でも父と子の関係性が悪く、父親が引退してもいい年齢になっているにもかかわらず、後継者にどうも簡単に経営を譲ろうとしない。待ちきれない後継者が、クーデター紛いに反旗を翻そうとするが、どうにもならない。
また、後継者に経営を譲ったものの、会長職にとどまり、いつまでも経営に口を出してしまう。最悪の場合、一旦後継者を社長にしたけれど、気に入らぬことが多いということで退任させてしまうということまである。
もうひとつのケースでは、兄弟姉妹間で経営権を取り合うということがある。この場合、経営権のみならず相続も関係してくるので、問題はさらに複雑になる。兄弟姉妹が争った末に文字通り喧嘩別れとなり、その後一切の関係を絶ってしまうということがよく起こる。
いずれにしても、そういった身内親族の争いが長期間続き、世間に広く知れ渡ると、当然いろいろな影響が出てくる。地域や業界で、「お家騒動」として、面白おかしく語られることになる。
社内では、社員たちが動揺し浮き足立ち始める。社外では、取引先、金融機関などが注目し始める。それまで比較的順調に推移していた業績に陰りが見え始める。「お家騒動」が致命傷となる前に手を打たねばならない。
親子で互いに経営権を巡って争うケースは結構多い。記憶に新しいところでは、大塚家具のケースがある。父と娘が株主総会の場でプロキシーファイト(株主争奪戦)まで行い、経営権を取り合ったことは記憶に新しい。
大塚家具の一連の話は、私の著書、講演などで何度かさせてもらっている。親子経営企業において、父と子の関係性の複雑さ故に起こるであろうトラブルのケースとして、紹介させてもらっている。
大塚家具のケースでは、今、改めて見直してみると腑に落ちない、不思議に思えるところがいくつかある。まずひとつは、2009年に創業社長の父親から長女に経営を委ねられたときのことだ。
後継者として長男がいたはずなのに、なぜ長女が社長になったのだろうかと不思議に思っていたのだ。調べてみると、1才年下の弟である長男が前年の2008年になんと退社していたのだ。理由は、親族全員から自身の結婚を反対されたからだそうだ。
その後、2011年に父親の勧めで再入社し、専務取締役に就いていたようだ。当初から、父親と母親は後継者には長男と思っていたようだ。ところが、長男が退社してからすぐに、インサイダー取引の疑いがあるということで問題が発生することになった。
その責任を取る形で経営を譲らねばならなくなったようだ。ところが、本来譲りたかった長男が退社してしまっていた。そこで、仕方なく長女に経営を譲ることになった。これが長男でなく、長女に社長を譲った理由であった。
ここからは想像するしかないのだが、本来、社長に就くチャンスはなかった長女が思わぬ出来事があり、社長の座に就くことになった。一旦退社した長男が、父親の強い要請があって、長女が社長に就いている会社に戻ってきたことになる。
社長に就いた姉と、自身の都合で退社していたにもかかわらず、親父の勧めとは言いながら入社してすぐに専務取締役として返り咲いた弟との師弟関係は想像するまでもなく、冷えたものであったろう。
当時、もうひとつ不可解に思われることがあった。それは、一旦、社長に就けた長女を5年後に突如解任したことである。その理由が今ひとつよく分からなかったのだ。5年間、長女に任せてみたものの、業績が思うように回復せず低迷したままであったということもあるだろう。
しかしながら、創業経営者である父親が創った、郊外の大型店舗で高級家具を会員制で販売するというビジネスモデルは、すでに経年劣化を起こしているという厳しい経営環境であった。そのようななかで、創業経営者が長女を降ろしてまで再登板する理由が今一つよく分からなかったのだ。
今考えてみると、長女からその時、経営権を取り返しておかないと、長男を先で社長に就けることが難しいと思っていたのではないだろうか。それがあの時、長女を解任したひとつの理由ではないかと思っている。
大塚家具のその後はみなさんご存じの通り。最終的にヤマダ電機に吸収合併され、長女は社長を退任、大塚家具というブランドだけが残ることになった。一方、父親と長男は、匠大塚という会社を興しているが、その匠大塚の業績は今一つよくないといわれている。
大塚家具の場合、父と娘が経営権を争ったことが表立ってはいるが、内情は、姉と弟が先の経営権を争っていたともいえるのではないか。それが、両親、兄弟姉妹を巻き込み、結果、家族を分断してしまったというのが実情ではないだろうか。
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