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現場の混乱を引き起こす「仕組み化」の罠

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

前回のコラムで仕事の仕組み化のことを書きましたが、最近は仕組み化の重要性を訴えるコンサルタントも非常に増えています。

仕組み化が必要な理由としては、それぞれの社員が「自分のやり方」で仕事を進めていては、当然全体としての統一感やバランスが失われ、非常に効率が悪いからです。

あるチームに社員が3人いるとして、本来なら最低でも1+1+1=3になるべきところが、仕事がかみ合っていないために、全部足しても3どころか2にもならないといったことが起こってしまう。一方で、お互いの仕事が相乗効果を生むような仕組みができていれば、パフォーマンスは3にとどまらず、4にも5にもなる可能性があります。

また、人の能力に依存した仕事の進め方では、結局一部のスター社員しかパフォーマンスが出せないということになります。少数の人間だけ仕事ができたとして、それでは組織としての強さは一向に実現されません。優秀な人材に頼っているようでは、結局少数の「できる人」と大勢の「できない人」がいる状態から抜け出せないのです。

このように、仕組み化は重要ではありますが、しかしながら単に仕事を仕組み化すればいいのかというと、そうではありません。

まず、いくらきっちり仕組み化したとしても、その仕組みを回して得られるパフォーマンス(成果物)が大したことがなければ、競争上それはあまり意味がないのです。

例えば、自社の現状のオペレーションでは納期が3日かかるとして、これを頑張って効率化し、仕組みでまわせるようにして1日縮めて2日納期を実現させたとしましょう。しかし、もしお客様が、「翌日に納品できないのであれば2日でも3日でも同じだ」と考えているとしたら、せっかく納期を1日縮めた意味はありません。

ポジショニング上意味のあるパフォーマンスのゴールを設定し、それを実現させるために仕組み化に取り組まないと、徒労に終わってしまうということです。

また、仕組み化をやっているうちにその目的を見失い、仕組み化そのものを目的化してしまうことによって、業務の混乱を引き起こすことも大いにあります。

私が以前勤めていたミスミでも大掛かりな仕組み化・標準化の失敗がありました。かつて全国に13か所あったコールセンターを1か所に集約するプロジェクトにおいて、本来の目的である「顧客への対応の質を上げ、かつ問い合わせから回答までの時間を短縮する」という目的を見失い、集約そのものが目的化してしまったのです。

結果、プロジェクトの現場は大混乱に陥り、2度の挫折と数十億円もの損失を伴う6年間の泥沼を経験することとなりました。(詳しくは三枝匡著「ザ・会社改造」を参照)

中小企業においてはこのような大掛かりな改革プロジェクトはないとしても、目的を誤ったプロセス改革は現場を混乱させ、お客様に迷惑をかけ信用をすべて失ってしまうことにもなりかねません。

何ごとも重要なことは「何のためにそれをするか」ということ。仕組み化も手段にすぎません。どんな強みをつくるか?そしてそれを実現するためにはどのようなプロセスが最適か。これを考え抜くことが非常に重要です。

仕事の無駄をなくす“カイゼン”の発想では失敗します。事業全体を俯瞰し、トータルの視点を持ちつつ、競争に打ち勝つ強みの構築に取り組んでいきましょう。

 

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