企業理念はいらない

  組織の成長加速 木村英一 SPECIAL
木村英一 SPECIAL

組織の成長加速コンサルティング

株式会社グロースサポート 代表取締役 木村英一

組織の成長加速を促し、業績躍進を実現させる辣腕コンサルタント。これまで130社以上の企業において、経営者のコンサルティング、経営幹部、経営リーダーの育成に携わる。組織とリーダーの成長段階を知り尽くし、経営者と同じ目線で語ることのできる希有なコンサルタントとして活躍中。


「企業理念?企業理念はあります、、、が、、」私が、経営者に企業理念について尋ねた時、よく遭遇する反応がこのようなものです。こうした会社は、「企業理念はあるものの、十分浸透しているは言えない」これが続いてるのです。

経営者に直接会って、お話する機会があるときは、「それでしたら、理念は、ないほうがいいですよ」とお伝えします。なぜなら、理念の形骸化は、百害あって一利なしだからです。

多くのオーナー企業の発展を支援してくる中で、企業規模の発展段階で遭遇する共通した課題の一つがこの企業理念をどう取り扱うかの問題。

社員が40名を超えるころ、経営者が一人一人の仕事の状況を把握することが難しくなってきます。社長の判断が行き届かなくなる。クレームが増え、事故が増え、以前では考えられないようなミスも頻発するようになる。

そこで、一人一人が適切な判断基準を持てるようにと、ちょっと埃をかぶった企業理念を引っ張りだしてくるわけです。ところが、「企業理念とはどういうものか?」という説明もなければ、企業理念の背景にある想いを社員に対して数回伝えるだけで、終わります。

こうなると、「企業理念」の解釈、「企業理念」の優先順位は、社員に委ねられます。社員一人一人の企業理念の解釈はバラバラな一方で、これが絶対的な判断基準だと紙には書いてある、こんな状態です。

組織の中で、ダブルスタンダード(複数の価値基準)が公認されているとも言えます。

これはまるで、一流店のシェフが、今夜の団体客のメニューを入社半年の新米に伝えて、最後に一言。「味は一流店になるようにしろよ」といって、さっさと家に帰ってしまうようなものです。伝えられた本人は「一流店の味って?」といって右往左往する、、誰の目からも「一流店の味は再現されない」ことは分かりきっています。ところが、同じようなことが多くの企業で起こっているのです。


当コンサルタントの関連商品を販売しています。

実際にこんな場面に遭遇したことがあります。

ある会社の企業理念の一番最初に「顧客にとって一番良いことをしよう」的なことが書いてありました。ところが、この会社は、まさに、紙に書いてはあるが、解釈は分かれている状態だったのです。

短期的にみると、必ずしも、顧客にとって一番いいものが、会社にとって利益的に一番いいものではないこと、これは良く起こること。

すると、例えば、社員が部長に契約の報告をしている場面で、こんな会話が起こります。
「○○部長、ご契約いただきました」
「おめでとう!で、どんな内容?」
「はい、A会社の○○という商品です!」
「え???そうなの?それなら、B社のほうが、ちょっとだけ機能が落ちるけど、利益が高いじゃない。 次は、それを提案してよ!」
「あ、はい、、、、すみませんでした。。。」

当初、この話を聞いた時、私は、「会社は、ボランティア集団じゃないから、利益を優先するという指導は当たり前」と考えました。

ところが、これには後日談があります。その会社では、通常の経営幹部層に加えて、一部の社員層にもコンサルティングの機会を持っていました。

業務上の対話ではなかなか表面化しない内容に関しても、いろいろ話をする中で、仕事に対する不満の一番は、「顧客にとって一番良いことをしよう」に関わることだというのが分かってきました。

社員達は言います。「社長が『顧客にとって一番良いことをしよう』っていつも言うから、それを実践すると、部長は、「利益を考えろ」っていうんですよ。」と。

そして、更に後日談。T部長率いる関西支店のS君と話した時のこと。S君の業績は本社で低迷していたのですが、T部長のところで、頭角を現し、2年後には、先輩社員を抑えて社内トップの成績となりました。そのS君に「関西支店に行って何が変わったのか?」を尋ねてみたのです。

するとS君は、即答してくれました。「それは『T部長が、利益はいいから、顧客にとって一番良いことをしよう』と言ってくれたことでした」続けてこう言いました。「『利益は気にしなくていい』と言われたのは、T部長が初めてでした。」と。

S君には、仕事の迷いがなくなり、一気にトップ営業マンへの道を駆け上りました。関西支店にいった数名の社員も異口同音に同じことを言ってくれたのです。

そして、更に後日談。一連のことを社長に報告して、社長の企業理念に対する立場を尋ねたことがあります。すると、「私はT部長と全く同意見だ!」という回答。
東京本社の部長達も悪気を持って、「顧客にとって一番良いことをしよう」を曲解した訳では在りません。ところが現実には、その解釈の違いは、東京本社と関西支社の著しい業績の違いの要因の一つになっていたのでした。

企業理念を中途半端に導入すると、必ずこのような解釈の違いによる混乱が現場でおきます。そもそも企業理念を徹底したら、更に会社は良くなると考えて、企業理念を設定してるわけですから、とても残念なことです。

万一、企業理念を徹底したら、利益がなくなる!ということなら、そもそもその企業理念が間違っているので、それを治すのが先。そうではなくて、再度考えて見て、企業理念を追求することで、顧客も幸せになり、社員も幸せになる。という結論になるなら、企業理念を中途半端にせず、徹底すればいいだけです。

で、どうやって、徹底するのか?これは、再現性可能な方法が既にあります。幹部社員が誰であれ、確実に企業理念を徹底させる方法です。これはまた別の機会にお話いたしましょう。

話を元に戻します。オーナー企業の中で、新入社員を採用している企業の場合、新入社員の入社理由の上位は、経営者の魅力、そして企業理念に共感したこと、です。そんな新入社員達が、入社後、ダブルスタンダードに遭遇したら、幻滅すること請け合いです。


さて、御社は如何でしょうか?
企業理念は、日々の業務において、一貫性をもった判断基準として機能しているのでしょうか?それとも、形骸化し、ただ、社員のため息の種になっているでしょうか?

 


経営者のための、「組織の成長加速法」
木村英一

組織の成長加速コンサルティング

株式会社グロースサポート代表取締役

木村英一

執筆者のWebサイトはこちら https://www.change-growth.jp/

当コンサルタントの関連商品を販売しています。
当社の関連商品を販売しています。
月刊誌(無料)登録フォーム

×