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財務諸表はすべて開示すべきか

SPECIAL

社内独立店開コンサルタント

株式会社ストアブレインコンサルティング

代表取締役 

経営コンサルタント。アパレル、小売、飲食チェーン指導などに強みを持ち、店長再生から店舗最盛へとつなげていく独自の「社内独立店開」手法を指導する専門家。
自らは店舗を持たない「販売・運営」に特化した経営スタイルに、多くの異業種経営者、店長が注目。路面店から百貨店、都心型SC、郊外型ショッピングモール…など、多様なチャネルで成果を上げ、店舗の強みを引き出す天才と称されている。

店舗経営者が社員に対して「経営計画」の開示および周知をすることは、直接、間接的、そして社内外に対してもあらゆる効果があることから、経営者として最も重要な仕事というのは再三このコラムでもお伝えしてきました。 

経営者の考えが見えているということは、社員にとっても、取引先にとっても、そして顧客に対しても安心感を与えます。つまり「経営計画」は社内外に存在するステークホルダーとの「信頼関係」を構築するための必要不可欠なツールということです。 

さて、それと同じく重要なことに過去の「財務状況」を開示することが挙げられます。その程度はそれぞれあるとして、自社の過去から現在までの経営状態を数値化した「財務状況」一般的には貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などで構成された「財務諸表」ということになります。 

「経営計画」が将来に向かっての目標を指し示す決意表明となるのに対し、「財務諸表」は過去に歩んできた会社の履歴書、半生記としての記録となります。現在の社員をはじめとした関係者たちは、過去から将来に向かっての流れを「財務諸表」や「経営計画」で把握、理解することでさらに深く会社との関係を築くことができます。 

しかしながら、「経営計画」はいいとして、「財務諸表」の開示には抵抗がある経営者が多いのではないでしょうか。何を隠そう私自身も経営者として、財務諸表をすべて開示することには抵抗があります。 

「自分がやっていないことを勧めるのか!」という声が聞こえてきそうですが、結論から言えば、財務諸表のすべてを開示する必要はないということです。自分たちに都合が悪いことを隠すということではなく、その社員が関係する部署の数値に限定するとか、その背景が複雑で、社員にあらぬ誤解を生むような数値、記録はとりあえず保留にし、時期を見て開示するなど、状況に応じた対応をするということです。 

私自身も同様の対応をしていますし、何でもかんでも見せればよいというものでもありません(繰り返しますが、隠すということではありません)。物事には順序というものがあり、それを間違えばそれだけでいらぬ揉め事を巻き起こすことになります。社員の財務諸表に対するリテラシーが低ければ、こちらがどんなに説明をしても、納得してくれないこともあります(例えば、これだけ利益があればもっと給料は上げられるだろう…など)。 

もちろん、財務スキルなど教育する必要がありますが、社員全員を同レベルにするのは難しく、限界があります。本来であれば、財務諸表に限らず、すべての記録を開示するのが一番ですが、現実的には非常に難しいのです。 

とはいえ、すべてを隠していても話になりません。まずは部分的にでもいいので開示することが大事です。世の大半の中小企業は財務諸表を開示していません。その中で、少しでもオープンにする姿勢は必ず評価されます。店舗経営者の皆さんには、ぜひその一歩を踏み出していただきたいと思います。

 

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