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社長は「脱炭素ビジョン」を持て

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環境戦略コンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

環境戦略アドバイザー。数々の多国間環境条約や、国連が提唱する2030年のための持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を参照しながら、サーキュラーエコノミーなど企業として取るべき環境戦略や、環境対策を通じた長期収益構造の改善などをアドバイスしている。

去る10月5日、金融庁が大企業4,000社に対してCO2排出量の情報開示を義務化させる検討に入った、というニュースが流れました。脱炭素の加速を図るべく民間企業に対して具体的な貢献を求めた「TCFD提言」に沿った動きだと言えます。

脱炭素については、今からちょうど1年前に当時の菅首相が「カーボンニュートラル2050」を宣言したこと、その後4月に行われた気候サミットで「2030年までに46%減」を明示したことなどで、日本も世界の流れに伍する目標を掲げることになったのは良く知られているところだと思います。

他方で長期的には削減される方向が決まったものの、既存の石炭火力発電所は相変わらず稼働しています。先ごろ中国が2022年からは海外での石炭火力発電所建設を行わないと表明しましたが、日本は受注済みや建設中の発電所について予定通り建設工事を進めるスタンスを崩していません。

そのような流れの中で11月初旬に開催されるCOP26において、本会議で石炭の話が取り上げられる予定はないのですが、会議場の外、更にはネット空間での無秩序な発言や書き込みは、そんなことお構いなしで化石燃料を攻撃してきます。前回、COP25のときには日本が2度に渡って「化石賞」を受賞したことを覚えている人も多いと思います。

そんな日本ですが、こと民間企業の覚悟については世界をリードする立場にあると言えそうなのがこの「TCFD提言」への対応です。これは日本だけでなく、たとえばEUでも民間企業が取り入れるべき脱炭素の指針であるとされているのですが、今のところ世界の大企業のうち2400社ほどが公式に賛同を表明している中、日本は国別でトップの約500社が賛同しているのです。

日本にとって、気候変動対策は化石賞をもらうばかりじゃないぞ、という乾坤一擲の切り札がこのTCFD対応なのですが、大企業に対する義務化措置などを進めてゆくということは、下請け企業となる中小企業にとっても「自社のCO2排出量を正しい方法で把握しなくてはならない」ことを意味します。

環境省のウェブサイトである(グリーンバリューチェーンプラットフォーム https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/index.html )にその手順が記載されているのですが、いわゆるライフサイクルアセスメントの考え方に基づいた計算をしなくてはいけない部分があり、多少ややこしいと感じられる中身になっています。

とはいえ、世界の潮流と日本の立ち位置が上で述べたような状況なので、遅かれ早かれ日本の民間企業は自らが排出責任を負っているCO2の量的データを客観的な形で公表しなくてはいけない立場に立たされる、と見るべきでしょう。

どうせやらなくてはいけないならば早く対応したほうが良い、という判断が働く典型的な事例だと思います。変化に素早く対応する指示さえあれば担当者でもできる仕事ですが、これまでやったことのない仕事だけに、担当者任せでは上手く進まないことが懸念されると言う意味でも典型的な事例です。

こんな時こそ社長の出番です。我が社の脱炭素政策はどうあるべきなのか?日頃から「脱炭素ビジョン」ともいうべき自身の考え方をまとめておくことが重要です。情報源は新聞や勉強会程度で十分です。それを自分で咀嚼して、会社の経営に反映させる準備を怠らないことが重要です。

今回のような事例においても、この考えに基づいてライフサイクルアセスメントの実施に関する自分の考えをしっかり示し、あとは下僚に任せる。歯切れ良い経営が気候変動対策にも有効に機能するのです。自らの考えをスピーディにわかりやすく伝えようとする経営者を、当社はいつでも全力で応援しています。

 

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