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「自由で開かれたインド太平洋」におけるASEANの役割

SPECIAL

東南アジア進出コンサルタント

KJグローカル経営事務所

代表 

国内企業向けの、東南アジア市場進出の戦略・実務コンサルタント。大学卒業後20年以上の間、メーカー・商社・公的機関にて海外ビジネス(主に東南アジア・中国)に従事。東南アジア市場におけるマーケティング・拡販業務を成し遂げた後、大手自動車関連メーカーにて同社中国初の販売会社(ディストリビュータ)を立ち上げ、人事・財務・企画等の管理部門の統括などを歴任。その後、食品/アルコール・伝統工芸品・医薬品/医療機器など多岐に亘る業種のアジア市場開拓支援を経て、2018年にKJグローカル経営事務所を設立。現在同社代表。

 安倍元首相死去で改めて注目される「自由で開かれたインド太平洋」とは何なのか?今回はこのテーマを扱いたいと思います。「自由で開かれたインド太平洋」は英語に訳すと【Free and Open Indo-Pacific(FOIP)】。文字通り、『インド洋』と『太平洋』という2つの大洋を「自由で」「開かれた」ものにしようというものです。2016年提唱されたこの日本発の外交構想は下記3点を基軸として、各国・地域がそれぞれの思惑を抱えながらも「共有できるビジョン」として受容してきました。

(1)法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着

(2)経済的繁栄の追求(連結性、EPA/FTAや投資協定を含む経済連携の強化)

(3)平和と安定の確保(海上法執行能力の構築、人道支援・災害救援等)

 

 ASEANにおいても、そのビジョンは広がりを見せ、2019年には開放性や透明性、国際法を尊重するなどとしたASEAN独自のインド太平洋構想「アセアン・アウトルック(ASEAN Outlook)」が打ち出されました。その構想の特徴を示す1つのキーワードは【包摂(subsumption/Inclusion)】です。日本や米国が主導する構想には、中国の一帯一路構想と海洋進出への牽制が多分に加味されていますが、「アセアン・アウトルック」にはその要素は含まれていません。中国も排除しない「経済社会面での協力」に特化した構想といえるでしょう。

 

 統計によると、ASEAN主要6ヶ国(インドネシア・ベトナム・フィリピン・タイ・マレーシア・シンガポール)の2019年貿易総額は下記のようになっています。

第1位: 「ASEAN6-中国」間→ 4828億米ドル

第2位: 「ASEAN6-米国」間→ 2884億米ドル

第3位: 「ASEAN6-日本」間→ 2195億米ドル

このように貿易面から診ると、インド太平洋の地理的中心にあるASEANにとって、中国は切っても切れない貿易パートナーであり、中国を完全に排除した当構想の成立は非現実的とも言えます。ASEANが多くの国・地域が賛同している「自由で開かれたインド太平洋」構想において、このバランサー的な役割を果たしている象徴が「アセアン・アウトルック」であるのです。

 

 少子高齢化による国内市場の縮小という難題を突き付けられた日本企業にとって、成長著しいアジア市場の需要を取り込むことは喫緊の課題です。「自社製品やサービスの展開に相応しいアジアの国・地域はどこなのか?」について体系的に分析し、ターゲット先を決めることが今の日本企業に最も必要なノウハウでしょう。まずは安倍元首相が提唱したように「地球儀(世界地図)を俯瞰」して、自社のターゲット先について想いをめぐらしてみては如何でしょうか?

 

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