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価格交渉力は、タダでは手に入らない

SPECIAL

オルタナティブ経営コンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

「先生、これが当社の悩みなんですけど。」先日訪問した企業の現場で、社長さんから直々に打ち明け話をいただきました。製品の品質検査が自社で行えていないことから、価格交渉力が検査工程を持つ客先に握られているとのこと。そうなると、値段を決めるのは品質検査を行った客先で、いつも同じ努力をしている自社は、客先が決めた指し値に従って製品を引き渡すだけ、だというのです。

偶然にも、農業関係で類似のお悩み話を聞かされたばかりだったのですが、作物の品質を判別する「目利き力」が値段を左右する、そしてその目利き力は生産者でなく仲買人が持っている、という分野が今の日本にもまだ存在する、というのです。

農業の場合、ある程度の制度整備が進んだ分野では、たとえば農協が都道府県の試験場と組んで品質等級の試験を行い、等級付けをすることで一定の交渉力を担保する取り組みが進んでいます。しかしながら、国内で生産されている全ての農産品についてこの仕組みが整備されているというわけではありません。

製造業の場合、JIS規格などの整備が進んでいる分だけこのようなお悩みは珍しいと言えるのかも知れませんが、それだけにむしろ目立つ事例として認識されたのでした。仮に規格などの外的基準がない場合には、その部分を市場に依拠する形になるため、最低限の品質検査は自社で担保する必要が出て来ます。市場で値段が付けられている産品と同等以上の品質であることを、自社のデータで証明できれば、ある程度の価格交渉力を自らのものにできるからです。

そのためには、最低限の検査装置の導入や技術力の確保が求められることになります。それによって得られる価格交渉力が、長期的に見れば回収してくれる投資だとは思いますが、短期的には一定の出費が発生することに違いはありません。

農業の場合でも、都道府県の力を借りながら試験制度の確立に進んでいかないと、いつまでたっても仲買人の言い値でしか取引してもらえない、というような状況が続くことになるでしょう。いずれの事例でも、仕組み作りのためのコストは必ず発生します。それをどのように回収し、仕組みをどのように生かしてゆくのかを考えることが求められるのです。

これは長期的繁栄のために不可欠な取り組みです。だとすると、それこそがまさに経営者の責務と言えるのではないでしょうか。

 

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