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「二酸化炭素」と 印象操作

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

セメントと「二酸化炭素」

 

建築にも土木にも必須になった材料であるセメント。国内生産量は1996年度のピーク時の約60%まで減少しているそうですが、原料である石灰石(CaCO3)からセメントを製造する際に二酸化炭素(CO2)が発生してしまいます。

2019年度時点で日本国内のセメント生産量は約6,000万トン弱、セメント製造時のCO2排出量は4,147万トンだそうです。実に生産量の約70%もCO2が出てしまう計算になります。その内訳は、原料の石灰石から出てくるものが6割(2,533万トン)、製造時に使用する化石燃料から出てくるものが4割(1,614万トン)です。

セメントという材料は、すごい量のCO2を出さないと作れないのです。言い方を変えると、石灰石や化石燃料に固定化されていた大量のCO2を大気中に放つことによって作られるものなのです。

最近では、セメント製造段階で廃棄物や代替原料を使用してCO2の排出量を削減したり、大量に排出してしまうCO2を回収して炭酸カルシウム(CaC03)を作り再固定化する技術の開発も行われているそうです。

いっぽう、世界に目を向けてみると2018年時点で日本のセメント生産の比率は2%程度です。圧倒的シェアはやはり中国の55%です。世界中で生産されるセメント量はCO2の排出量と連動していると言えます。中国国内には工事が中断された建設現場がおびただしい数あるそうですが、利用されない建物も既にかなりのCO2の発生源となっている訳です。

セメントがここまで多くのCO2発生をともなう認識はありませんでしたが、たっぷり出している割には声高には言われてこなかったように思います。皆さんはどのように感じられるでしょうか?

日本国内の最新のセメント製造技術では、自治体の廃棄物処理の負担軽減にもなっている部分もあるそうです。経済産業省としては、さらにCO2排出を減らし再固定化する技術を開発し、世界に輸出しようという目論みのようです。

 

 

↑世界のセメント市場比率(生産量ベース 2018年)【出典 一般社団法人セメント協会「セメントハンドブック」より】

 

 

環境と「二酸化炭素」

 

接する情報量の多さから、温室効果ガスと言えば「二酸化炭素」みたいになっていますが、温室効果を発生させるガスは何種類もあります。それら各種ガスの排出量の比率は以下のような構成になっているようです。

 

 

↑温室効果ガスの種類別比率(発生量) 【データは気象庁HP 人為起源の温室効果ガスの総排出量に占めるガスの種類別の割合 (2010年の二酸化炭素換算量での数値: IPCC第5次評価報告書より作図)より】

 

 

上の円グラフは温室効果ガスの排出量の比率です。排出量は二酸化炭素が76%(化石燃料由来+森林減少などの合計)となっていて、温室効果が進む原因の過半を占めているように見えてしまいます。しかし、それぞれのガスの種類によって温室効果を引き起こす強さには大きな違いがあります。実は、これが桁違いに違うのです。

この、温室効果を引き起こす強さを表す指標は地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)と呼ばれ、二酸化炭素を基準にして温室効果ガスがどれだけ温暖化する強さがあるか表した数字のことです。つまり、二酸化炭素の温室効果強さを1としたときに、他のガスがどのくらいの温室効果強さを持っているかという倍数を表すものです。以下に化学式・発生源とともに表にまとめたものを紹介します。これを見ると、他のガスがいかに凄まじい温室効果強さを持っているかが分かります。

 

 

↑温室効果ガスの温室効果の強さ・主な発生源 【データは全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)HPより】

 

 

温室効果強さを掛け合わせた影響力で見ると、二酸化炭素の影響は僅かであることになります。仮に、フロン類等の地球温暖化係数GWPを平均5,000としたら、それぞれの影響力比率は次の円グラフようになります。

 

 

↑温室効果ガスの種類別比率(発生量に温室効果強さを掛け合わせた影響力)

 

 

一般的に、私たちがよく目にする情報は上のグラフ(発生量)のようなものが多いです。しかし、本質的な原因と結果については、下のグラフ(影響力)のほうが現実を表していると言えます。見事に印象が変わってきます。最近「印象操作」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、まさにこのような事なのかもしれません。ところで、強力な影響力のあるフロン類は世界中で適切な管理がなされているのでしょうか?あまり聞こえてこない気がしますが…

 

 

植物と「二酸化炭素」

 

前回のコラムでは、植物が光合成する際に「二酸化炭素」を吸収して「酸素」を放出するのと同時に、私たちと同じく呼吸していて「酸素」を吸収して「二酸化炭素」を放出しているというお話をしました。

光合成する際の「二酸化炭素」吸収量はやはり植物の種類によって違うそうです。それぞれの種としての植物の個性でもある訳です。一般的な樹木の類では以下のような違いがあるようです。これは感覚的には成長スピードの傾向と一致しているような気がします。

 

 

↑樹種別の二酸化炭素吸収の働き【長野県地域森林計画主要樹種林分材積表に基づく試算より】

 

 

次に、代表的な落葉広葉樹(高木)、常緑広葉樹(高木)、中低木の葉っぱの単位面積あたりの年間総CO2吸収量を比較したものです。常緑のほうが落葉よりもたくさんCO2を吸収しそうに思えますが、意外にも落葉と常緑で年間の差はそれほどありません。

また、大きな木の方が活発にCO2を吸収しそうなイメージがありましたが、葉っぱ単位面積あたりということになると、中低木のほうがCO2吸収量が多いのも意外でした。

 

 

↑樹木の単位葉面積あたりの年間総CO2吸収量【大気浄化植樹マニュアル 2014年度 改訂版より】

 

 

ということは、ツル植物や草などではどうなのでしょう?こちらも研究データを見せてもらうと、落葉・常緑広葉樹(高木)に比べてツル植物や草の中にCO2吸収量の大きいものもあることが分かります。

植物は光合成と呼吸では「酸素」「二酸化炭素」の吸収と放出において逆の作用をします。表中にある「見かけの光合成速度」とは、光合成分から呼吸分を差し引いたCO2吸収量を表す数値です。

 

 

↑ツル植物とその他の植物の光合成速度の比較【大気浄化植樹マニュアル 2014年度 改訂版より】

 

 

以上のように「二酸化炭素」にまつわることにも、イメージしている事と実際が大きく違っている内容がいくつもありました。ネットやメディアで多く露出している内容は誰かの利害やバイアスがかかっているものが大半です。

いつでも、誰でも、簡易にいろいろな事を調べられる世の中です。何か疑問に思ったときには、ひと手間かける事を惜しまず複数の情報源で確認したいものです。

 

ちゃんと調べてみると、どうやら物事にはプラスとマイナス、よい面とよくない面の両方が存在するようです。お手軽な情報には、そのどちらかだけが強調されていることが多いようです。

 

 

 

社長の会社では、顧客に説明する内容などを自社でちゃんと裏付けを確認されていますか?まさか、メーカーさんのパンフレットなどからコピペした受け売り状態ではないでしょうね?

 

 

 

 

 

 

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