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事業モデルの変革はここから考える。ベトナムでCAD代行をやるN社の事例から

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

この日は、年一回のクライアントを集めての視察会です。
そのテーマはずばり「事業モデルの変革」。
実際にその会社を訪問し、それを成し遂げた社長から直接そのお話を聴きます。
 
 N社は、住宅メーカーのCAD図面の作成代行を行っています。日本国内で受注し、そのほとんどをベトナムで行っています。
後半、N社長の話は人の管理の話になります。苦労した分、熱も入ります。
 
 私は少し野暮だと思いながらも、最後に補足の説明をするために立ち上がりました。
このままだと、参加者が「受けた仕事を安い人件費でこなしている」という、「非常に簡単なビジネス」をやっているように、受け取りかねないと思ったからです。


どんな会社も、「スペシャリティ」と「コンビニエンス」のどちらかのサービスを提供しています。
 
 スペシャリティとは、専門であり、上質であり、手間がかかっているサービスを指します。
コンビニエンスとは、汎用であり、普通であり、手軽を実現するサービスを指します。
 
 我々消費者は普段から、スペシャリティとコンビニエンス、この二つのサービスの使い分けをしています。
 
 何かの記念日に、家族でレストランに行きます。そこでは優雅な音楽がかかり、ゆったりした空間があります。ホスピタリティあふれる接客、そして、おいしい料理。
その一方で、平日のランチは、近所の定食屋やチェーン店に行きます。そこではテレビが流れ、席もやや窮屈です。頼んだものがすぐにでてきます。そして、最低限の接客とそこそこの料理があります。
 
 休みはリゾートホテルやシティホテルを利用し、その一方で、出張時はビジネスホテルを利用します。普段は高級車を使い、社用では商業用バンを使います。
たまにクラシックコンサートに行きます、普段はスマートフォンで音楽を聞いています。
 
 スペシャリティとコンビニエンス、
儲かる事業モデルは、必ずこのどちらかに振り切れています。
 
 当社のクライアントA社は、ひとつ400万円のホームページを提供しています。クライアントの事業を成功させるための手を考え、その一つひとつを一緒に作っていきます。
それに対し、B社は、自社で簡単に作成更新ができるホームページを提供しています。クライアントは安価に、自社のペースでホームページを成長させることができます。
 
 どちらの企業も十分な成果を出しています。
A社はスペシャリティを、B社はコンビニエンスを提供することで、お客様を満足させています。
 
 このどちらかです。
儲かっている、顧客に支持されるビジネスは、このどちらかを極めています。
 
 どっち付かずであれば、それは儲からないビジネスになります。
それでは、どちらの顧客も十分に満足させることができないのです。
 
 少しうまくいかなくなると、ここに迷いが発生します。
もっと価格を下げて顧客層を広げようか・・・
もっと顧客のリクエストを聴いてしっかり対応するようにしようか・・・
そのようにして尖っていたビジネスモデルは並みのものになっていきます。
 
 この時の判断は本当に難しいものです。
それに融合することなく、その道を突き進むことも必要です。しかし、時に、それを捨てる決断も必要になります。
スペシャリティとコンビニエンス、どちらが顧客から支持されるかは、時間とともに変化します。人類の思考の変化、技術や新しいサービスの出現により、それらは簡単に変化するのです。


スペシャリティかコンビニエンスか、それはあくまでも「顧客の視点」で判断されるということです。この認識が重要です。
顧客が求めるものがあり、その欲求に応えているかどうかが、満足度になります。
 
 どちらのモデルにも、スペシャリティは必要になります。
その中の仕組みや管理方法などは違うものの、その道を極めることの苦労とその終わりなき改善は必ず伴うのです。
スペシャリティのサービスを提供する企業側にはスペシャリティが必要になり、コンビニエンスのサービスを提供する企業側にはスペシャリティが必要にならない、というわけでは決してないのです。
 
 もしその仕掛けにスペシャリティが必要でなく、儲けることができるような市場があるのであれば、すぐに多くの企業が参入することになります。
そこでは早急にコモディティ化が進み、価格崩壊が起きることになります。


冒頭のN社は、非常にクリエイティヴなサービスを提供しています。また、その認識は顧客である住宅メーカー側も持っています。
 
 住宅メーカーは、家を建てる世代が急激に減っているために、どこも厳しい状況にあります。そのなかで各社は「どこに注力するべきか」というコアコンピタンスを考えました。
その結果、ある会社は、自分たちは企画と販売に注力する代わりに、CADの業務を外注化することを決めました。CADのエンジニアを確保し維持すること、また、そのためのソフトなどの費用も掛かります。
 
 その会社がN社の顧客になります。
それらの業務はやはりクリエイティヴを必要とします。基本的な建築の知識や技能が必要です。またメーカーそれぞれの家のつくりに特徴があり、それぞれに図面に癖もあります。そして、その家は一棟一棟が違うのです。
 
 そのクリエイティヴにN社長は、立ち向かうことを決断されました。そして、その仕組みを作っていきました。それらの情報を管理し共有する仕組み、お客様からの要望や指摘を確実に残し各社員に展開する仕組み。そして、採用した社員を短期間で戦力化する仕組み。
それらをつくり上げたのです。
 
 N社は、顧客の「高いスペシャリティ」な求めに、見事に応えたのでした。
 
 そんなN社を、社長15名で視察しました。参考にならないはずがありません。
しかし、その事業モデルの説明に割かれた時間は非常に短いものになりました。
 
 この時N社長の意識は、最近あった労使トラブルに引っ張られていました。(解決の目途はついていたものの)その分、N社長の話もその熱量もそちらに向かってしまいます。
 
 これでは視察の趣旨とズレたものになります。
それ以上に、視察した社長達に間違った認識のまま帰らせることになります。また、N社長のやって来たことのすごさも伝わらないことになるのです。
 
 N社は「日本のハウスメーカーから簡単な図面製作の仕事を受けて、それを人が確保でき、安い人件費でできるベトナムでやっている」というような『コンビニエンス』なサービスをやっているという認識です。
 
 これは完全に違います。
N社の正しい事業モデルは次の通りです。
「日本のハウスメーカーから非常に難しい仕事を受けて、それを能力の高い人材を集め、そして、自社でエンジニアとして育て、高い人件費を払ってやっている。」のです。
超『スペシャリティ』なサービスを提供しているのです。
それらの業務の多くをベトナムでやっているのです。
 
 だから住宅メーカーに営業の電話を入れると、10社中10社のアポイントが取れるのです。必ず興味を引くことができるのです。そして、ある割合で決まっていったのです。
その結果、N社は伸びているのです。
唯のCAD図面の作成代行では、他者には勝てないのです。
その変革をN社長はやりきったのです。
 
 どんな事業をやっていくのかを考える際には、このシンプルな軸で考えることが第一です。
「スペシャリティ」で行くのか、
「コンビニエンス」で行くのか。
それを決めることが大事です。
 
 そして、決めたらそこに全力を注ぎこみます。
狙いは、その分野における、スペシャリストかコンビニエンスの地位でナンバー1です。

 

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