循環と言う価値
コンサルタントをしていてしみじみと感じられることの一つに「財務諸表と言うツールは企業の実態を客観的に表す目的で、実に良く作られた作品である」ということがあります。
バランスシートは企業の大きさや経営の質を、損益計算書は事業の収益性やコスト構造を、キャッシュフロー計算書は円滑な運営と将来への投資のバランスを、実によく表現してくれています。
他方で隠れた企業努力である整理整頓や、いわゆる5Sカイゼンで培われる規律のようなものはなかなか可視化しづらい部分があり、数字を見ただけではわからない企業の長所や強みも確実に存在します。そういった強みの一つに資源循環という新しいキーワードが加わることになりました。
去る5月28日に参議院を通過した「改正資源有効利用促進法」がその裏付けになるのですが、企業が資源の無駄塚いを抑制したり、再生資源の活用を進めたりすることを、脱炭素との関係で積極的に評価しようというものです。
本来であれば、これに合わせて企業会計の見直しも議論されてしかるべきかもしれませんが、これよりもっとずっと大きなテーマであるサステナビリティのための情報開示に関する議論が先行していて、資源循環に関する議論はまだ手付かず状態にある、というのが実態だと言えます。
この議論を深掘りして、財務諸表が循環と言う価値をしっかりと表現できるような工夫がなされれば、企業から見ても議論を理解しやすくなり、制度整備も進めやすくなるものと期待されます。
現在の財務諸表ではなかなか表現しづらい「循環」と言う価値が、やがてはしっかりと企業評価のための変数として認知されるようになる日も、そう遠い話ではないということです。今後の議論に是非ご注目ください。
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