同族会社の社長が陥りがちな資産形成の落とし穴
同族会社の社長の多くが「会社が成功すれば個人も安泰」と考えています。もちろん、会社が成功しないことには、社長個人の生活が豊かになることはありません。
しかし、「会社にお金があるから大丈夫」「いざとなれば会社から借りればいい」と考えるのは、大きな間違いです。なぜなら、会社の資産と個人の資産は全く別物だからです。
例えば、年商10億円で会社の預金残高は3億円、しかも実質、無借金経営であれば、社長も周りも「成功した経営者」と考えます。
しかし、社長個人の金融資産が、わずか300万円しかなかったとしたら、役員報酬がなければ生活できません。
役員報酬のために社長がいつまでも会社にいれば、後継社長が不満を抱える可能性も高くなります。「いつまで経っても本当の社長になれない」と考え、最悪の場合は、会社が分裂してしまうかもしれません。
また、高齢になればなるほど、体調面のリスクも高くなります。病気のために、なんの準備もなく事業承継することになると、想像以上に相続税がかかってしまい、個人資産では払いきれなくなるということも、よくある話です。
つまり、同族社長は、会社の成長はもちろん、会社を永続させるためにも、社長個人にお金を残すことを考えなければなりません。
一方で、個人の資産形成に取り組んだものの、経営者特有の思考パターンが原因で失敗してしまう…という社長もとても多いものです。
会社の経営が軌道に乗ると、さまざまな金融商品の話が社長の耳に入ってきます。手元に資金があることと、持ち前の行動力と決断力で、最初から大きな金額を投資に回してしまうものです。
「投資マンションを5,000万円で購入したけど、毎月50万円の赤字…。」
「仮想通貨に2,000万円投資したけど、売却タイミングを逃して500万円まで目減り…。」
「証券会社から高配当の外国債権を1,000万円投資したけど、円安で元本が30%減少…。」
会社経営で成功した社長ほど、チャンスへの嗅覚は鋭いものです。会社経営では、「この事業に一点集中しよう!」「すぐに結果を出そう!」こういった考え方が成功につながります。
「これは儲かるぞ!」と感じたものに、大きく投資をしたくなる気持ちは理解できます。
しかし、資産形成ではこれらが全て裏目に出てしまうのです。「こんなことなら預金のままにしておけばよかった…」と何度も後悔し、結局何もできずに時間だけが過ぎていくのです。
その結果、社長個人の資産形成ができずに、いつまでも経っても社長業から引退できなくなってしまうのです。
大切なことなのであえて申し上げますが、同族社長にとって資産形成は大切です。しかし、当然ですが、「本業の成功があってこそ」です。
そのため、まずは会社経営で収益を上げ、「財務至上主義」の考え方で会社にしっかりとお金が残る仕組みを作り上げることが、何よりも優先して取り組むことです。
会社にお金が残るようになれば、社長として「納得のいく役員報酬」を受け取れるようになります。そのお金で、個人の資産形成に着手できるのです。
さらに言えば、社長の本業は会社経営です。個人の資産形成が気になって、会社経営が疎かになってしまっては、本末転倒です。
だからこそ、投資に関しては、ある程度、「ほったらかし」でも資産形成ができる状態を作ることが重要です。定期的な状況確認だけでも、ちゃんと資産が積み上がっている仕組みがあれば、安心して会社経営に専念できます。
会社経営と資産形成では、成功のルールは全く異なります。その一点をしっかりと理解し、準備して段階的に資産形成に取り組むことが、同族社長が資産形成を成功させる秘訣です。
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