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強い組織は物語の空気で動く!|社員の主体性を引き出す3つのストーリー設計とは?

SPECIAL

透明資産コンサルタント

株式会社ホスピタソン

代表取締役 

社内に「感じいい空気」を意図してつくりだし、業績を躍進させる「透明資産経営」指導のコンサルタント。大学卒業後、1993年キリンビールに入社。東名阪で飲食店向け営業を担当し、延べ2千店以上へ課題解決提案を実践。在籍17年間で社長賞を4度受賞、同社最速で部長昇格。新聞・雑誌・TV・ラジオでも多数取材される。
 2011年12月、株式会社ホスピタソンを設立、代表取締役に就任。「世界中の企業に透明資産を」というビジョンを掲げ、企業の「空気感」をおカネに変える専門家として活動中。

強い組織は物語の空気で動く!|社員の主体性を引き出す3つのストーリー設計とは?

 

強い組織は物語の空気で動く!|社員の主体性を引き出す3つのストーリー設計とは?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

会社に属する人間は、指示や規則だけでは動かない。給与や待遇だけでも動かない。人を深く突き動かすものは、論理でも強制でもなく、「自分は何のためにここにいるのか」という個人の“意味づけ”であり、その意味づけを生み出す源泉が「物語」である。

物語は、言葉よりも、数字よりも、制度よりも、強い。人間の脳は物語に触れると前頭前野と側頭葉が同時に活性化し、「理解」と「共感」が同時に立ち上がる。これがただの説明や指示との決定的な違いである。説明は理解を生むが、共感は生まない。物語は理解と共感を同時に生み出し、その両方が揃ったとき、人は初めて“自分の意思で行動する”主体性を獲得する。

スターバックスの社員が主体的に動き続けるのは、「コミュニティをつくる」という物語を共有しているからであり、パタゴニアの社員が自ら環境保護活動に出ていくのは、「自分たちは地球を守るために仕事をしている」という深い物語が空気として染み込んでいるからだ。物語は単なる情報ではない。空気である。目に見えないが、組織の行動の総量を決定する根源的な力であり、透明資産の中でも、特に“空気を方向づける磁力”を持つ唯一の要素だといえる。

物語は語った瞬間ではなく、空気に変換された瞬間に力を持つ。
そして物語が空気になるためには、3つの設計が必要である。
「起源の物語」「未来の物語」「役割の物語」。
この三つがそろったとき、社員の主体性は劇的に変わる。

1.起源の物語──“なぜこの会社は存在するのかを空気として共有する

どんなに優れた理念でも、“なぜそれを掲げているのか”という起源が語られなければ、社員の心には深く届かない。人は理念そのものではなく、その理念の背後にある“物語”に共感するからだ。

スターバックスの創業者ハワード・シュルツは、貧困の家庭に生まれ、父親が怪我をした際に会社に見捨てられた経験を持つ。彼が「人を大切にする文化」を徹底し続けたのは、その個人的体験が基点になっている。社員はこの物語に触れることで、「スターバックスの理念は美しい言葉ではなく、創業者の人生の痛みから生まれたものだ」と理解し、空気として受け取る。

パタゴニアも同じだ。創業者イヴォン・シュイナードは、自然の中で生きてきた体験を背景に“地球を守るために会社を営む”という物語を掲げ、それが社員ひとりひとりの行動基準となっている。社員は理念を暗記しているのではない。物語を生きているのである。

起源の物語は、会社の存在理由に血を通わせる。
起源が語られた瞬間、理念は“空気”になる。

社長の人生や痛み、挑戦、葛藤──それらすべてが会社の起源であり、その物語は社員の主体性の土台になる。透明資産経営において、社長のストーリーが最重要要素と位置づけられる理由はここにある。

2.未来の物語──“自分たちはどこへ向かうのかという希望を描く

企業は数字だけでは伸びない。未来の物語がなければ、人はその組織に期待と希望を持つことができず、行動のスケールは小さくなる。

ユニクロが世界企業へと進化するプロセスで、柳井氏は常に未来の物語を語った。「世界中の人々の生活を豊かにする」という物語は、単なるビジョンではなく、未来を共に創るという“空気”として社員に広がった。この空気を吸った社員は、日常の仕事に“未来への意味”を見いだし、自ら行動するようになった。

数字の目標は人を動かさない。しかし、未来の物語は人を突き動かす。
なぜなら、未来の物語は“行動した先にどんな世界が待っているのか”を社員にイメージさせ、脳の報酬系を活性化させるからだ。未来の空気は、主体性の源泉である。

経営が停滞している会社は例外なく、この未来の物語が弱い。未来が語られない会社では、社員の想像力が枯れ、行動量が減り、挑戦への意欲が消えていく。

未来の物語とは、“希望の空気”である。
希望が空気として循環し始めた瞬間、組織は動き出す。

3.役割の物語──“自分がここで担う意味を社員一人ひとりに結びつける

起源の物語と未来の物語がいかに素晴らしくても、社員自身が「自分がその物語の中でどんな役割を担っているのか」を理解していなければ、主体性は生まれない。

人は「自分が重要な役割を担っている」と実感した瞬間に、行動が加速する。この心理は、自己効力感、自己重要感と呼ばれるが、脳科学的にも役割意識はドーパミンを強く分泌させ、行動を自動的に促す働きがある。

たとえば、千葉ジェッツの成長を支えたのは、選手だけではなく、スタッフ、広報、アナリスト、地域担当、スポンサー担当、それぞれが“自分の役割が物語の一部になっている”と感じられる空気設計だった。「私たちは地域の子どもたちの夢をつくるチームである」という物語の中で、自分がどんな役割を担うのかが明確だったため、全員の主体性が極めて高かった。

会社でも同じである。
営業、事務、店舗スタッフ、広報、現場管理、パート・アルバイト──すべての人が「自分の役割は、この会社の物語を前に進めるためにある」と理解したとき、組織は一体となって動き出す。

役割の物語とは、社員一人ひとりの“存在価値の再定義”である。
価値を感じた人間は、主体性を持ち、空気を前へ押す存在に変わる。

4.物語が空気として浸透した瞬間、組織の行動量が変わる

物語は語るだけでは意味がない。語られた物語が“空気に変わる瞬間”に、初めて組織は変わる。空気に変わるとは、社員がその物語を自分ごととして扱いはじめ、日々の行動基準が自然と揃い始める状態を言う。

たとえば、パタゴニアの社員が「Repair, don’t replace.(修理しよう、買い替えるのではなく)」という価値観を自然と行動に落とし込んでいるのは、スローガンではなく、その背後にある“地球を守る物語”が空気として共有されているからだ。

スターバックスのバリスタが一人ひとり違う顧客体験を提供できるのも、マニュアルではなく、「一杯のコーヒーから人々の心を豊かにする」という物語が空気として店舗に流れているからである。

物語が空気として浸透した組織は、指示を出さずとも行動が増え、理念を説かずとも行動基準が揃い、管理しなくても動き続ける“自走型の組織”へと進化する。

物語は空気になった瞬間、文化になる。
文化は一貫した行動を生む。
行動は成果をつくる。

企業の未来は、物語の質で決まると言われる所以である。

5.ストーリー経営の核心──社長の物語が、会社の物語になる

物語を語る存在として最も重要なのは、社長である。
社長がどんな人生を歩んできたか。
どんな痛みを経験し、どんな価値観を育ててきたか。
何を嫌い、何に感動し、何を大切にしているか。

会社の“起源の物語”はすべて社長の人生から生まれる。
だからこそ、透明資産経営では「社長のストーリー」を最重要資産として扱う。

社長の物語は、会社の空気になる。
会社の空気は、社員の行動になる。
社員の行動は、会社の未来になる。

どんなに優れた戦略があっても、物語のない会社は人が動かない。
どんなに小さな会社であっても、強い物語がある会社は人が動く。
物語は会社の“魂”であり、“温度”であり、“推進力”である。

まとめ|物語が空気を変え、空気が組織を動かす

物語は情報ではなく、空気である。
物語は文化をつくり、文化は行動をつくり、行動は成果をつくる。

起源の物語が会社の存在理由を温め、
未来の物語が希望と挑戦の空気を生み、
役割の物語が社員一人ひとりの主体性を引き出す。

物語が空気になった組織は、
指示がなくても動き、
管理がなくても進み、
理念を唱えなくても価値観がそろう。

強い会社とは、物語を生きる会社である。
そしてその物語を紡ぎ、空気に変えるのは、社長である。

―勝田耕司

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