透明資産経営|数字を追いすぎる会社ほど業績が伸び悩む理由とは?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
「数字は嘘をつかない」。経営の現場でよく聞く言葉です。確かにその通りです。売上、利益、KPI、どれも経営の現実を映し出す重要な指標です。私は数字を軽視すべきだとは一切思っていません。むしろ、数字を見ない経営は論外です。ただし、ここで一つ大きな誤解があります。それは、「数字を強く追えば追うほど、業績は伸びる」という思い込みです。
実際の現場では、その逆が起きているケースを数多く見てきました。KPI管理が非常に強く、会議の大半が数字の進捗確認に費やされている会社ほど、ある段階から業績が伸び悩み始める。しかもその理由が、戦略不足でも努力不足でもないことが多いのです。原因は、数字を追いすぎることで生まれる“空気の硬直化”にあります。
数字が強調されすぎた組織では、会話の質が変わります。問いは「なぜこうなったのか」ではなく、「なぜ達成できていないのか」に変わり、次第に数字の説明が主目的になります。人は評価と直結した数字を前にすると、防衛本能が働きます。脳科学の視点で見れば、これは自然な反応です。責められる可能性を感じた瞬間、人は挑戦よりも保身を選ぶようになります。
この空気の中では、現場からの情報が歪み始めます。問題は小さく報告され、リスクは先送りされ、数字を守るための行動が優先される。表面上のKPIは一時的に整うかもしれませんが、顧客の違和感や市場の変化といった「数字になる前の兆し」が共有されなくなっていきます。ここに、伸び悩みの種が静かに蓄積されていきます。
もう一つの副作用は、判断の思考停止です。数字が絶対視されると、「KPIに書いてあるかどうか」が行動基準になります。KPIに載っていない改善や挑戦は、後回しにされる。すると、現場は考えなくなります。数字を達成するために最短距離の行動だけを選び、長期的な価値づくりから目を逸らすようになるのです。
ここで重要なのは、数字そのものが悪者なのではないという点です。問題は、数字が“目的”にすり替わってしまうことにあります。本来、数字は結果であり、確認のための道具です。しかし、空気が硬直した組織では、数字が命令になり、評価になり、恐れの源になります。この状態では、数字は経営を助けるどころか、成長のブレーキになってしまいます。
では、業績が伸び続けている会社は、数字とどう向き合っているのでしょうか。特徴的なのは、数字の「手前」にあるものを大切にしている点です。顧客の声、現場の違和感、小さな改善の積み重ね。これらはすぐにKPIには反映されませんが、確実に未来の数字をつくります。安定して成長している会社では、こうした要素が空気として尊重されています。
数字の上に乗る空気とは何か。それは、「数字は確認するものだが、人を縛るものではない」という共通認識です。目標未達が起きたときに、問いが責任追及ではなく、構造理解に向く空気。数字が悪かったときほど、会話が増え、情報が開示される空気。こうした空気があるからこそ、数字は正しく機能します。
経営者の言葉は、この空気を決定づけます。「この数字は必達だ」という一言が、現場を奮い立たせることもあれば、萎縮させることもあります。その違いは、日頃からどんな空気を積み重ねてきたかにあります。数字の話をするとき、経営者は評価者なのか、それとも伴走者なのか。この立ち位置の違いが、空気を大きく分けます。
私が関わったある企業では、KPIの管理方法を変えずに、会議の問いだけを変えました。「なぜ未達なのか」ではなく、「この数字が意味していることは何か」。この問いに変えただけで、会議の雰囲気は驚くほど変わりました。現場から仮説や提案が出るようになり、数字の背景にある顧客行動が共有されるようになったのです。結果として、次の四半期から数字は自然に改善していきました。
透明資産経営の視点では、数字は空気の“成果物”です。空気が整っていれば、数字は後からついてくる。逆に、空気が硬直していれば、どれだけ管理を強化しても、数字はどこかで頭打ちになります。これは精神論ではなく、現場の行動量と質に直結する話です。
経営において本当に難しいのは、数字を見ながら、数字に縛られないことです。短期のKPIを否定せず、同時に長期の価値創造を犠牲にしない。そのためには、数字の上に「考えていい」「提案していい」「失敗から学んでいい」という空気を意図的に乗せる必要があります。
数字は経営の言語です。しかし、空気は経営の文脈です。言語だけでは意味は伝わらない。文脈があって初めて、言語は生きた情報になります。数字を武器にするか、足かせにするか。その分かれ道は、空気をどう設計しているかにかかっています。
ー勝田耕司
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