透明資産経営|空気を設計できる経営者だけが、事業承継をスムーズに終えられる理由とは?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
「事業承継は、もう制度もスキームも整えてあります」
そう語る経営者の会社が、承継のタイミングで大きく揺れる場面を、私は何度も見てきました。株式の移転も終わっている。役員構成も決めてある。後継者も形式上は決まっている。それでも、現場の空気がざわつき、意思決定が遅れ、人が離れ始める。数字や法務の準備が完璧でも、なぜかスムーズに進まない。その理由は、極めてシンプルです。
引き継がれていないものがあるからです。
それが「空気」です。
事業承継というと、多くの経営者は「何を渡すか」を考えます。株式、権限、肩書き、理念、事業計画。しかし、承継期に本当に問われるのは、「何が残るか」です。社長が現場にいなくなったとき、社員は何を基準に判断するのか。迷ったとき、どんな空気に立ち返るのか。この答えが曖昧なままでは、どんな承継も必ず不安定になります。
承継期に起こりがちな分断には、ある共通した構造があります。
先代と後継者の間の分断。
経営層と現場の分断。
古参と若手の分断。
これらは、意見の違いや能力差から生まれているように見えますが、実際には「空気の断絶」から生まれています。先代が長年かけてつくってきた空気と、後継者が自然にまとっている空気。その接続がうまくいっていないのです。
先代社長の強みは、判断の一貫性です。経験に裏打ちされた勘、独特のテンポ、言葉にしなくても伝わる空気感。この空気の中で育ってきた社員は、「社長ならこうする」という感覚を共有しています。しかし、この感覚は、言語化されないままのことがほとんどです。だからこそ、先代が一歩引いた瞬間に、現場は迷います。
一方、後継者は合理的で、説明も上手く、正論を語ります。しかし、空気が切り替わる準備ができていない組織では、その正論が「冷たさ」や「距離感」として受け取られてしまう。結果として、現場は無意識のうちに先代の空気を探し続け、後継者の判断を様子見するようになります。これが、承継期に起こる停滞の正体です。
ここで重要なのは、理念を引き継げば空気も引き継がれるわけではない、という点です。理念は文字です。しかし空気は、日常の反応、判断、沈黙、言葉の選び方の積み重ねです。理念を掲げても、日常の空気が変わらなければ、現場は混乱します。
透明資産経営の視点で見ると、事業承継とは「空気の設計変更」です。先代の空気を完全に残す必要はありません。しかし、完全に断ち切ってもいけない。必要なのは、何を残し、何を更新するのかを、意図的に設計することです。
空気を設計できる経営者は、承継の前から準備を始めています。自分の判断基準を言葉にし、なぜそう決めてきたのかを共有する。成功談だけでなく、失敗の扱い方、迷ったときの考え方も開示する。こうした積み重ねが、「社長がいなくても通じる空気」をつくります。
また、承継をスムーズに終える経営者ほど、後継者に“正解”を教えません。代わりに、“問い”を残します。「この会社は、どんなときに誇りを感じてきたのか」「何を守り、何を変えてきたのか」。この問いが空気として共有されていると、後継者の判断は「異質」ではなく「進化」として受け取られます。
承継期に社員が最も不安を感じるのは、「評価の基準が変わるのではないか」という点です。頑張り方が変わるのか、報われ方が変わるのか。この不安を放置すると、人は保身に走ります。空気が不安定な承継期ほど、挑戦は止まり、静かな離脱が始まります。
だからこそ、理念や株式よりも先に引き継ぐべきものが「行動がどう扱われるか」という空気なのです。挑戦は歓迎されるのか、失敗は学習として扱われるのか、異論は許されるのか。この空気が連続していれば、トップが変わっても組織は揺れにくくなります。
事業承継は、ゴールではありません。経営の次のフェーズへの入口です。その入口を安定させるのが、透明資産としての空気です。空気を設計できる経営者だけが、承継を「断絶」ではなく「連続性」として終わらせることができます。
制度やスキームは、承継を成立させます。しかし、空気だけが、承継を成功させます。
誰が社長になっても、この会社らしさが失われない。
判断の軸がぶれず、安心して前に進める。
その状態をつくることこそ、最後にして最大の経営責任です。
透明資産とは、社長個人に属するものではありません。次の時代へと手渡される、組織の“呼吸”そのものです。その呼吸が途切れないように設計できたとき、事業承継は初めて、本当の意味で完了するのです。
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