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脱炭素は様子見が一番高くつく

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

 「西田さん、社内の調整に時間がかかっていて、お仕事をお願いするのがもう少し先になりそうなのですが。」最近オンライン会議で商談を始めた大手メーカーの担当者が、言いにくそうに仕事が先送りになることを説明してくれました。クライアントさん側の事情で仕事が先送りになる、という話は珍しいことではありません。ただ、いつも私が申し上げるのは“様子見”が一番高くつく、脱炭素を先送りする本当のコストは「時間」、すなわち後から絶対に取り返せないものであることを認識しておかれよ、ということです。

 

 ここ数年、脱炭素を巡る環境は大きく変わりました。以前であれば「努力目標」や「理念」の範疇で語られていた話が、今では制度やルールとして具体化され、企業活動の前提条件に組み込まれつつあります。経営の現場にいると日々の業務に追われがちですが、外を見渡すと、確実に時計の針は進んでいるのです。

 

 特に注意すべきなのは、制度やルールの具体化が、想像以上のスピードで進んでいる点です。排出量の算定方法、情報開示の枠組み、取引先から求められる要件など、「いずれ決まるだろう」と思っていたことが、ある日突然「もう決まりました」という形で示される場面が増えてきました。しかもそれらは、十分な猶予期間を伴わないことも少なくありません。

 

 こうした状況で後出し対応を余儀なくされると、どうしても負担は大きくなります。短期間で体制を整え、データを集め、説明資料を作り、社内調整を行う。その過程で生じる時間的なハンディは、簡単には解消できません。脱炭素に限らず、制度対応全般に言えることですが、「後から追いつく」ことは、思っている以上に難しいのです。

 

 ここで誤解していただきたくないのは、「今すぐ大きな投資をしなければならない」という話ではない、という点です。最新設備を導入したり、多額の予算を投じたりすることだけが脱炭素ではありません。大切なのは、何も考えていない状態を放置しないことです。実はこの「無関心な状態」こそが、一番コスト高になるのです。

 

 なぜなら、何も考えていない会社には、判断材料が何一つ残らないからです。自社がどこでどれだけエネルギーを使っているのか、どの工程に無駄が多いのか、どこから手を付けるのが現実的なのか。これらは、いざ必要に迫られてから調べ始めても、すぐに答えが出るものではありません。

 

 一方で、たとえ小さくても早く始めている会社には、確実にデータが積み上がっていきます。最初は粗い数字でも構いません。前年との比較、月ごとの傾向、改善の余地がありそうなポイント。そうした情報が3年、5年と蓄積されていくと、やがて「自社なりの傾向」が見えてきます。そしてその気づきは、制度対応や取引先への説明の場面で、必ず力になります。

 

 これは、勉強の積み重ねとよく似ています。試験直前に一夜漬けをしても、応急処置にはなっても、基礎力は身につきません。日々少しずつ積み上げてきた人ほど、応用問題にも対応できる。脱炭素もまさに同じで、先に始めた分だけ、考える材料が手元に残るのです。

 

 だからこそ、「小さく始める」ことには大きな意味があります。完璧を目指さなくていい。まずは現状を知る、数字を取ってみる、社内で話題にする。その一歩があるかどうかで、「検討している会社」と「無関心な会社」の間には、埋めがたい差が生まれます。外から見たとき、その差は意外なほどはっきりと分かるものです。

 

 脱炭素を巡る議論は、これからさらに具体的になっていきます。そのとき問われるのは、「どれだけ立派なことを言っているか」ではなく、「どれだけ考えてきたか」です。時間は、誰にとっても平等に流れますが、使い方次第で価値は大きく変わります。

 

 様子見を続けるのか、それとも小さくでも動き出すのか。取り返しのつかないコストを支払う前に、ぜひ一度考えてみてください。あなたは、どちらを選びますか。

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