透明資産経営|なぜ「うまくいっている会社」ほど、突然崩れるのか?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する空気感を意図的に設計し、運用する仕組みのことです。透明資産経営は、不調な会社を立て直すためだけのものではありません。むしろ本当の価値は、「うまくいっている会社」が崩れる瞬間を未然に防ぐ点にあります。
経営の現場で、私は何度も不思議な光景を見てきました。数字も悪くない。人も揃っている。ブランドもある。なのに、ある時を境に一気に崩れていく会社です。外から見ると「突然」に見えますが、内側をよく観察すると、崩壊はかなり前から始まっています。ただし、それは危機として認識されていません。なぜなら、その会社は「うまくいっていた」からです。
うまくいっている会社ほど、空気は安定します。会議は荒れない。社員も不満を言わない。業績も一定水準を保っている。社長としては、最も心地よい状態です。しかし、この心地よさこそが、最大の落とし穴になります。なぜなら、空気が安定しすぎた組織は、変化を察知する感度を失っていくからです。
成功体験は、経営にとって強力な武器です。同時に、強烈なフィルターでもあります。過去にうまくいったやり方、判断基準、人の見方が、無意識のうちに「正解」として固定されていく。その結果、新しい兆しは、すべて「一時的なノイズ」として処理され始めます。違和感は否定され、異論は過剰反応と受け取られ、変化の兆候は「気にするほどのものではない」と片づけられます。
特に危険なのは、成功体験が「人格」と結びついている社長です。このやり方でここまで来た。この判断で会社を伸ばした。この感覚が正しかった。こうした自負は当然です。しかし、この自負が強いほど、社長自身が空気の変化に鈍くなっていきます。現場の声を聞いているつもりでも、無意識に「自分の成功体験に合う情報」しか拾わなくなっていくのです。
うまくいっている会社で起きる変化は、非常に静かです。売上が急落するわけでもなく、社員が一斉に辞めるわけでもありません。ただ、挑戦の回数が減る。会議での違和感が減る。意見がきれいに揃い始める。ここを「成熟」と勘違いした瞬間、会社は下り坂に足を踏み入れます。
なぜなら、成熟と硬直は紙一重だからです。成熟とは、判断の質が高まっている状態です。一方、硬直とは、判断の前提が固定されている状態です。表面上はよく似ています。しかし、外部環境が少しでも動いた瞬間、その差は一気に露呈します。
崩れる会社に共通するのは、「問題が見えなかった」のではありません。見えていたが、重要ではないと判断したという点です。顧客の反応の変化、若手社員の違和感、現場の小さなズレ。それらは確かに存在していた。しかし、過去の成功が、その重要度を下げてしまったのです。
経営的に見ると、これは非常に高コストな判断です。なぜなら、成功期に拾える違和感は、最も安く、最も早い修正材料だからです。それを使わず、問題が数字として表面化してから動く。これは、最も遅く、最も高い経営判断です。
透明資産経営が警戒するのは、業績の悪化ではありません。業績が安定しているときの空気の変質です。違和感が出なくなっていないか。異論が減っていないか。現場が社長の顔色を読んでいないか。これらはすべて、成功体験が空気を支配し始めたサインです。
崩れない会社は、成功体験を「共有財産」にしません。成功体験は、あくまで過去の一事例として扱います。再現性を疑い、前提を問い直し、今の環境で通用するかを常に確認する。その姿勢が空気として共有されている会社だけが、成功の次に進めます。
社長にとって最も難しいのは、調子がいいときにブレーキを踏むことです。数字が出ているときに、空気の劣化を疑うことです。しかし、ここを避けて通った会社はありません。崩れなかった会社はすべて、うまくいっているときに、自ら問いを立て続けています。
「このやり方は、いつまで通用するのか」
「今、言いづらくなっていることは何か」
「違和感は、本当に消えたのか、それとも言われなくなっただけか」
こうした問いが空気として残っている限り、会社は簡単には崩れません。会社が突然崩れたように見えるとき、それは錯覚です。実際には、成功体験によって空気が鈍り、違和感が黙殺され、修正の機会を逃し続けた結果です。最後に崩れたのは、業績ではありません。空気です。
うまくいっている今だからこそ、空気を疑う。これができる社長だけが、成功を一時的なものに終わらせず、次の成長へとつなげていけます。
ー勝田耕司
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